第120話 タワマン61階からの景色
「……いやはや、本当に凄いのう」
「はい、陛下専用のレストランですよ」
「地上で61階というのは、素晴らしい景色だな」
夜のハルクパークレジデンス2ロイヤル、
いやさっき陛下との会話でそう正式名が決まったんですよ、
ガーベラさんも居るから明日朝にはこの塔全てにその名称で統一して書かれていそう。
(その最上階、陛下だけが使えるレストランで夕食を頂いています!)
今日はコックベラさんカンダベラさんも来ているが、
専任のアイアン=シェフベラさんがメインでフルコースを振る舞っている、
自らワインを注いであげてるし! ちなみに料金についても今、詰めている最中で……
(一応は正式に決める前の事前交渉、ではあるものの対話の相手は陛下です)
アマーティンさんとして来ているとはいえ、
この場はきちんとした陛下としての言葉になるそうで、
食事しながらとはいえ物凄く真面目なお話ですからね、隣のテーブルで宰相一家も居るし。
「では陛下、こちらでの必要なお金は我が辺境伯領から国王陛下へお納めする税金から出すということで」
「うむ、計算してきちんと宰相の方へ、良いな宰相」「畏まりました、それを抜いた額を改めて我が城へ」
「それにしてもワシにも『入構証』を造って貰えて良かったわい」「アマーティンさんとしてですけれども」
いったい個人的に何を買うのに使うんだろうか、ひょっとして娼館とか?
それ用にセクサロイド機能付きの黒猫セクシー獣人アンドロイドが常駐してるのだが、
奥さんに内緒でウチのタワマン地下まで……とはいえロボット以外は確かエルフとドワーフの娼婦しか居ない。
(人間の募集もかけるべきか、あっ、僕はたまーーに抜け出して医療棟で、いやロボ相手だから浮気にならない! はず!!)
なんてことを考えているとは陛下にはわかるまい。
「良い夜景であるな」
「はい陛下、まだまだ建設途中ですが」
「祭壇の炎が綺麗ねえ」「はい王妃様、新しい名所が出来たのも陛下のおかげです」
大金を払えば中に泊まれるらしい、
生贄疑似体験とでも言うかそんな物好き居るのか、
夜中にミイラが出てくるドッキリとかされたら、僕は普通にちびる。
「してハルク辺境伯よ、お主はここで何をしたい」
「何をと申されましても、受け継がれた物を引き続き」
「これを王都に持ってくるつもりは」「私は王になるつもりはありません、辺境伯ですから」
下手に国王になったら、
公園造りゲームではなく国造りゲームになってしまう、
まあ今の状況は園長とはいえ似たようなものなんだけど、面倒くさいのはちょっと。
(ガーベラさんを国王にする訳にもいかないし)
あとやっぱり僕の立場を、
そのまま国王陛下に奪われるのは嫌だ、
いや国王がフィーナさんだったら話は変わるが。
(フィーナ女王まで行くと、それはそれでちょっと違うかな)
玉座を奪うならアイリスかな、
いやでもなあ、とかいう妄想もこれくらいにして。
「ではあの『地下鉄』もしくは『電車』を王都まで繋げるのは」
「私も何度か考えましたが、今のところはドラゴンで事足りていますし、
旧辺境伯領の廃墟、あの周辺を整備してそこに入口の街を造って、そことなら繋げようかなと」
あの廃墟は廃墟で、
僕に逆らったらああなるみたいに残したい、
いや僕が直接どうこうやった訳じゃないけどね。
(住民ファーストで考えれば、城塞都市のミニ版で昔の生活だけしたい用の街を)
守るゴーレムは黒猫獣人になっちゃったけど。
「しかしこの住居部分はワシにくれるのであろう」
「ええもちろん、お好きにお使い下さい、いつでも」
「永住したいと言ったら」「大歓迎ですがお城は」「息子に任せる」
あーつまり、ここに隠居か、
良いけどちょっと早くないかな、
僕がここに造った文明のせいで陛下の引退を早めてしまったか。
(でもまあ、エンシェントドラゴンに脅されるくらいなら、仲良く一緒に暮らしたいのかもね)
名ばかり隠居でここを事実上の王城にされ、
ここハルクパークを乗っ取られる、とかしなきゃ良いか、
あと心配なのは陛下の糖尿病くらい、まだ予備軍らしいけど。
「園長」「はいガーベラさん」「あちらを」「えっ?!」
やってきたのはベラドンナさんだ、珍しい。
「緊急事態です」「何があったんですか」
「第4便でいらっしゃった移民の方々なんですが、大変なことに」
「状況は」「動きません」「えっ」「とにかく見ていただければ、わかるかと」
一体何があったんだってばよ。
「よしワシも行こう」「えっ陛下もですか?!」
「丁度、食べ終わった所だしな」「なら私も」「奥様まで」
「「いくーーー」」「お子さんたちも、ベラドンナさん」「問題ないですよ、では行きましょう」
そして車で向かった先は、
思わぬ、意外過ぎる場所だった。
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