第89話 おにぎりの差し入れからのざまぁを待つ元婚約者
「おお、あったあった、本当に良く見ないと気づかないな」
王都への帰途上空、
ついでということで再び、
私は謎の公園に寄らせて貰うこととなった。
(いたいた、スージー嬢とメイドのケティ嬢だ)
今日は日差しが強いからか、
白と赤、例の◯☓帽子を被っている、
その前に降りると嬉しそうな表情でやってきた。
「ダンバムさん、でしたよね?」
「あの、またお会い出来て良かったです!」
「そうなのか」「ここへは、たまに来ても獣人や亜人なので」「人恋しくて」
私はふたりに、
沢山のおにぎりを渡す。
「こっ、これは!」
「新しい食料ですか?!」
「ああ、お茶も用意した、遠慮なく食べてくれ」
がっつくハルク殿の元婚約者ふたり、
新しい味によっぽど飢えていたのだろう、
そうこうしていると、ガイドベラ氏も降りてきた。
「ダンバムさん、おやさしいですね」
「経緯はどうあれ、これもひとつの縁だからな」
「美味しい美味しい」「これはなかなか、んぐぐぐぐ」
掻っ込むふたり、
結構な量なのに私の分まで食べ尽くしてしまった、
ペットボトルとかいう容器のお茶を飲み干すと、ようやく落ち着いたようだ。
(ちなみに私は『しぐれ』のおにぎりが好きだ)
シーチキンというのも捨てがたい、
海の鶏ということは魔物肉なのであろうか、
などと考えていたら、改めて私の前に立つスージーとケティ。
「あの、それでお願いがあります」
「私たちを、連れて行ってはいただけませんか?!」
「それは駄目だと言ったはずですよ」「ガイドベラ殿」「私はダンバムさんに」「ダンバムさん、お願いします!!」
……私に助けを求めてきたか、
いやはや困ったな、さすがにそこまでは、
もし私がハルクパークへ運んだとしても、すぐにここへ戻されそうだ。
(そもそも、彼女達がここで生かされている理由を考えると……)
あくまでもアイリスとフィーナが幸せな結婚をする、
そのための前座というかトッピングというかデザートとでも言うか、
ざまぁという名の余興のために生かされて居るだけなのだから……。
「すまない、君たちをハルクパークへ連れて行く事はできない、
そもそも我々はいま、王都へと戻る最中なんだ」「でしたら王都へ」「一旦、王都でも」
「王都で何をするつもりだ」「ハルクの奥さんに、ハルクパークで側室に入る準備を」「第三、第四夫人で構いませんからぁ!」
必死なふたり、
あのような裏切りをしておいて、
まだ許されると思っているのだろうか?
「残念だが君たちはもう、王都では罪人の部類になっている」
「そんな! 私たちは騙されただけです」「良いように利用されただけです!」
「ハルク殿は『喜んで寝取られて行った』と証言していたが」「誤解です!」「あの時は、そうするしか」
ここでようやく?
割って入ってきたガイドベラ氏。
「おふたりは、しかるべき時がきたら我々がハルクパークまで安全に送りますから、
そんなに待たせませんよ、直ぐではないですが、少なくとも1年待たせるようなことはしません」
「本当なのですね?!」「信じて良いのですね?!」「約束します、必ず」「「ありがとうございます!!」」
帽子の下から見える喜びの表情、
しかし私は知っている、その約束の日、
彼女達は『ざまぁ』という絶望を味わうことを……!!
(まさに、ざまぁを待つ元婚約者達だ)
ガイドベラ氏が私の方を見て頷く。
「さあ、早く他の皆さんに追いつきましょう」
「そうだな、スージー殿、ケティ殿、またハルクパークへ来たときは、ここへも寄らせて貰う」
「はい、お待ちしております」「本当にここ、人間が来ないので」
ドラゴンに乗る私を見送るふたり。
「あの、もしよれしければハルクに伝言を、
スージーは何があっても、どんなことがあっても、
一生、いえ、永遠にハルクを、愛し続けると、そう誓うと」
そしてケティも。
「もしハルク様に許されないのであれば、
その時はメイドとしてで構わないので、
生涯、お側に置いて欲しいと、どうか、どうか御慈悲を」
二人の言葉に私はあえて返事をせず、
謎の公園から飛び立ったのであった。
(うむ、これはハルク殿にとって、さぞかし爽快なざまぁになるであろうな!!)
こうして私は、
ハルクパークの視察を終え、
無事、王都へと戻ることができたのであった。
「ハルクパークへようこそ、か」




