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ある魔道家の跡取り息子  作者: みどりりゅう
巨人号の事件

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98/105

巨人号の事件69

「鬼利江さんを直接殺したのはツァーリだが、その後ろにいたのは崩子だ。あの女は早くから世話役だったツァーリをたぶらかして自分の意のままに動くようにしてたんだ。おとろしいこった。ツァーリが言ってた動機なんかすべて嘘っぱちよ。あの忠実な下僕は、崩子のためにすべての罪をかぶって死んだんだ。人形のように操られていたのは、あの従者自身だ」


 それはなんというか、あの従僕も気の毒と言ってよいのかもしれない。

 そんな強力な誑惑能力を崩子が持っているのならば

「よく、いっしょにいて奇多郎さんはたぶらされなかったですね」

 少年が感心すると

挿絵(By みてみん)

「斑玉家がやばい連中ってのはわかってたからな。こっそり護身用の呪詛よけを身につけといたんだ……へへっ、おら手製の自信作だど」

 職人としてのプライドをにじませて、複雑な模様が描いてあるお札を見せてくれた。


「これがなかったら、おらだって引っかかってたな。なにせ、あのおじょうさんはよっぽど箱の情報が欲しかったかして、芝居までしておらの気を引こうとしてたからな。死ぬ気もないくせに海に飛びこむふりなんかして」


 あれ、お芝居だったのか?


「映画のまねっこだべ。おら、洋モノ好きだからよ。知ってんぞ『ていたにっく』」


 ……独特の発音だな。


「へっへ。あのおじょうさんに『とぅるー・らゔ・すとぉーりぃ』はわかんねぇべさ」

 口の端を笑み曲げると

「崩子は、おらが思うように動かないからしびれを切らした。だから十鬼太郎を焚き付けて、腕ずくに箱の秘密を聞き出そうとしたんだ。十鬼太郎も『箱の力で蠏呪家の復興』とか言ってたが、そりゃみな方便ほうべんだ。自分でもわかっていないうちに崩子に誑かされてたんだ。崩子にべた惚れだったくせに、プライドからそれが言えなかったんだな。それなのに、最後はあっさり見捨てられたな。思えば、あの男もかわいそうなやつだッペ」


 ひどい目に会った十鬼太郎に同情してしまうところに、職人の気の良さがあった。

 崩子がなかなか、いやかなりひどい人間だというのはわかったが、それでも疑問は残る。


「なぜ崩子さんは異一郎翁を殺したんですか?たぶらかしていたんなら、財産も全て思うがままだったでしょうに?」

 少年の素朴な疑問に


「……邪魔くさくなったんでしょうね」

 答えたのは、叔母だった。

「あたしは彼女……崩子のことを学生時代から知っている。一見可憐でぼんやりさんに見えるあの女性は、万事に抜け目ない冷酷な魔道者よ。彼女は人を支配して動かすのが好き。そして、自分が一番上の立場でないと気に食わないわがままな気性よ。異一郎翁を動かすといっても、自分が実際の当主ではないしね。翁が自然死するまで辛抱できなかったのだと思うわ。なにせ彼女は生徒時代、自分より人気者のクラスメートが目障りだと、自分を慕う子をそそのかして闇討ちさせた子だもの」


 ……そんなことして、捕まらなかったの?


「バレないようにうまくやったからね。闇討ちした子は行方不明になったけど。魔道者が通う特殊な学校ということもあって大きな問題にならなかった。そういうやりくちも、まあ魔道者としての在り方のひとつだから、あたしたちも特になにも思わなかった」


 そこらへんがこわいんだよ。だからぼく、魔道者ってニガテなんだ。


「あたしも、鬼利江さんが亡くなった最初から、この事件のうらに崩子がいるだろうとは思っていた。ただ少なくともこの船を降りるまでは、はっきり彼女を敵に回したくなかった。なにせ手強い相手だからね。だからツァーリを糾弾するまでにしておいたの」


 真犯人を追求しなくてもいいってこと?


「あたしたちは探偵でも警察でもない。無事に船を降りることが一番の目的だったからね。崩子も見切りが早いから、ツァーリに罪をかぶせたまま、自分に害がおよばないようにしたのよ」


 なんだか、ひどいはなしだなぁ。


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