契約 中編 妖精の試験
「……試験をするのですか?」
「あったり前だろー?!?!」
「当たり前なのですか?」
「試験が必要な理由でも?」
召還して契約する場合に試験が必要だという事は初めて聞きました。
正直召還を成功させること自体が難しいと聞いておりましたからね。
情報が無かったのは使役されている方が少ないからなのでしょうか?
「……試験……とは?」
妖精様の試験。果たして何を課せられるのでしょうか。力試しですか?何かを探してくるのでしょうか?それとも知能テストでしょうか?!いったい何を求められると言うのでしょうか?
「まあまあ!そう身構えるな!試験は簡単だ。お主が我が主として相応しいか見させてもらうだけだ。」
そう言い、徐にノノアの肩に手を置いて微笑む翡翠色の方。
『ノノアの特色は……なるほど、だから--なのか。』
愉快そうに翡翠色の髪の下がそっと微笑んだ事には誰も気づかない。
瞬間、ノノアの身体が翡翠のような色の魔力に包まれました。
「……---ーっっ!!」
「これはノノアの試験である。他の者は手を出すな!口出しも不要である。……まあ、その身の安全は約束するからただ見守っていてくれ。」
気づくとノノアは意識を失っていた。
※※※※※
「……----っっ!!」
「……ん???----と、僕はどうしたんだ?」
そう訪ねた先にいるのは、目の前に居る恋人のミーシャ。
「ええ?!覚えてないの???」
「……うん。」
それからミーシャにお話を聞くと、どうやら今日はデートの約束をしていて待ち合わせしていたらしい。そして、急いで走ってきたノノアは立ち眩みしてふらついたところだったと言う。
「……そうだったのか?ごめん。」
何だか腑に落ちないような感覚がありますが、ミーシャがデートだと言っていますしからね。
「……じゃあ行こうか!」
「うん。」
町の中を手をつなぎながら、今日のカフェを決める。今日は公園の中に建っているカフェ。花畑のような大きな花壇をみながら紅茶を楽しめる事で有名なお店。当然外のテラス席へ腰を落ち着けます。
それからはいつものように今日の授業の事や家族のこと、最近出来たお店の事などを話ながらゆっくりと時間を楽しみます。
「ふふ。楽しいね。」
「……うん。」
「ノノアともっと一緒にいたいなぁー!」
「……///。僕もだよ。」
幸せな甘い雰囲気。同じクラスではないふたりですのでこうしてあえる時間は限られてしまいますからね。
「じゃあさ、ずっとふたりでいようよ!」
「……ふふ。良いね。」
ミーシャからそんな事を言ってもらえるなんて、なんて幸せな事なんだろう。と嬉しさが込み上げて聞いていると、いつもと変わらぬ笑顔で言われます。
「他の事なんてしなくてもいいじなゃない!ふたりで楽しくいよう!」
「……ふえ?」
『……ミーシャらしくない。』
そんな思いが頭の中に浮かびます。
普段からレーベル・ハットのお手伝いや、家事手伝いをすすんで行うようなミーシャです。皆の為になればと自分の時間よりも大切にしていることをノノアは知っています。
『……おかしいな?』
ですが、目の前にいるのはミーシャ。確かにミーシャ。活発でとても優しくて周りに頼られる、恋人。
「……どうしたの?何かあった?」
「ん?!何にもないよー!」
「……じゃあ、どうして?他は何もしなくて良いなんて。」
「うん?そのまんまの意味だよ?ノノアがいてくれればそれでいいんだー!」
「……………………。お家の事も大好きじゃないか。」
「そうね。でももう、ノノアとの時間だけでいいかな。」
「……。」
「ダメなの?もう!ノノアは私だけじゃあ足りないんだね?」
プンプン。
「……。」
少し拗ねたような様子を見せるミーシャですが、ノノアはいつもと違う彼女に戸惑いが隠せません。
ノノアの心が落ち着くことの無いまま、話は続いてしまいます。
「じゃあ、それが難しいなら----それが無理ならあなたの魔法や、Sクラス皆の魔法を教えて!私も強くなりたいの!すごい道具もあるんでしょう?」
ニッコリ。
「……へ?」
『……おかしいな。』
鍛錬の事や、言っても差し障りの無いことならばミーシャにも話したりはしてきました。
ですが、何か“道具”がある何て知りもしないはずなのです。
Sクラスの皆はそう言うところは抜かりないので、とても仲の良いアリィからでも内情が漏れると言うことはありません。
「……ミーシャ?どうしたの?」
「うん?どうもしてないよ?ノノア、教えて。私も強くなりたい!」
ニッコリ。
「……………………その話はダメ。」
「何で?私は強くなりたいし、ノノアの事何でも知りたい。」
ニコッ。
ノノアは心苦しそうですが、有無を言わさず静かに一言。
それに対してミーシャは可愛らしく笑います。
ですが----。
「……………………何も教えられないよ。」
ノノアは真剣な表情でミーシャを見つめたままダメだ、と伝えます。
「何で?私彼女だよね?」
「……うん。ダメだよ。それにね、周りの人を大切にして、努力を誠実にするミーシャがそんな事を言うとはどうしても思えないんだ。」
「どうしてもダメ?私強くなりたいの。」
「……ダメ。」
「…………じゃあ、私が勝ったら教えてもらうわ!!!」
ミーシャが片手をノノアへ向ける。その向けられた掌には膨大な魔力が集まっている事にノノアは気づきました。
『……何だ?!ミーシャが無詠唱?……いや、それとも違うような……。』
考えている内に大量の草木が襲いかかってきました。舞迫る葉、突き刺さろうとする木々。
「……これは!?」
『……どうする?結構強烈だな。』
元々攻撃魔法を不得意とするノノアです。しかもこう接近されると----。
『……ちょっと前ならやばかったな……ふふ。』
「……これは、切るしかないかな?」
‘’ピッ!
【縮小魔法解除】
解除と同時に手にしたのは----双曲剣。
‘’ピッ!
【身体強化】
ヒュン!ザンッ!!!
パシュ!
パシッ!パシッ!パシュ!
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
ザザザザザン!!!!
受けて、斬る!!!
去なす。
そして、また受けて、斬りまくる!!!
双曲剣の性質を生かし、交わしては斬る、一撃は他のの剣に比べて軽くても、【身体強化】を乗せた斬撃は通常の剣の倍以上の力を持っています。
ノノアの周囲は辺りの景色が遮られる程の葉や木のくずが舞っている----シュルルルルル!!
『……何か、来る。けど、辺りが見えない。コレは改善が必要ですね。……ならば!』
‘’ピッ!
【暴風】
「……吹き飛ばせ!!!」
周囲に舞い散っていた物が全て吹き飛ばすと----。
「……見えた!!!」
シュルルルルル!!!!!
「……蔓か!!!しかし、遅いよ。」
ザンッ!!!ザンッ!!!ザンッ!!!!!!!!
「……終わりかな?」
「終わりだよ!!お疲れ様。」
ニッコリ。
満面の笑みを向けてくれたミーシャの笑顔に見送られるようにノノアの意識はまた、遠のいた----。




