契約 後編
「………………ア!!!」
「…………ノア!!!」
「……ノノア!!!」
自分を呼ぶ声だと認識すると、遠のいていた意識が浮上してきました。
「……………………ん。」
「ノノア!終わったらしいのですが、大丈夫なの?!?!」
「……終わった?ミーシャは?」
「ミーシャですか?!?!何の話です???」
「ノノア、お前の彼女の記憶を使わせてもらった。今、この場に彼女はいない。試験をしていた事は覚えているか?」
「…………。」
「おーーーい!」
ノノアは試験が始まったと思われた時から眠っていました。
いえ、意識だけが別次元に飛ばされて試験を受けていると翡翠色の方から説明を受けました。
生きているし、試験が終われば元通りに戻って起き上がると言われました。
そして、ノノアは目を覚ましたのです----がどうやら様子がおかしいですね。
「……僕の彼女を悪用したのか?」
ノノアから聞いたことのない低い低い声が聞こえました。
「お、おう。すまないな。試験をする上で最も適切な人物だと思った……から…………ん???」
「……へえ?僕の彼女をね~~~。良いご身分だな?こんな勝手なことをするのか??僕の記憶でも勝手に探ったのか???妖精様もなかなかに人が悪いものなのですね????」
ふふふふふ。黒笑顔。
「……………………。『俺、コレ、やってはいけなかったやつか???』焦。」
ビクビク。
皆「「「ノノアが!!!ノノアがぁ~~~!!!!黒い!!!黒いよぉ~~~!!!!!」」」
今までこんなノノアは誰も見たことがありません。
普段大人しい方が怒ると怖いってやつですか?!?!
黒い笑顔。三日月のように口角が裂けるように上がる口元。何より、目が!完全にゴミを見るような目です!!!!
あの、ノノアが憧れ続けていた妖精様に向かってですよ?!?!
一体ノノアに何が?????
----というよりも、ノノアに何を?!?!
『…………ん?先程、ミーシャって!…………………………ん?』
アリィはソコに気がつきました。
「僕の彼女?????」
黒笑顔続行中のノノアにハッキリと届くように大きい声で発したアリィ。
「……ええ、アリィ。僕の彼女です。」
「ええ~~~!!!」
まあ、嬉しい!とアリィは嬉しさ溢れて花でも飛ばしそうな勢いです。
「おめでとうノノア!ミーシャにも会えてなかったから知らなかったわ~!!!」
アリィのお花畑テンションにすっかり怒りが急速鎮静化したノノア。
「……へへ、恥ずかしいな。ありがとうアリィ。なかなか言うタイミングがね。」
ニッコリ。
『ミーシャの事を大切に思っているのですね。ふふ。嬉しそうに微笑むいつものノノアです。そうですか、そうなのですね。これはこれは幸せ報告はほっこりします。』
「ノノア!良かったな!!」
「早く言ってくだされば良かったのに。」
「そうですわ!」
「水くさいわぁ~。」
「そ、そうだぞ!」
「お、おめでとう!」
マリーとカミーユは恐らく羨ましいという思いが強すぎるのか様子が少しおかしいですが、皆自分の事のように喜んでいます。
ミーシャを連れてきてお祝いを!……と言う体のおそらく冷やかしをしたいだの、どちらから告白したのか?など、質問責めです。そして、羨ましいふたりはこれまでのデートの情報を参考にしようと聞き出しにかかっています。
話題の中心のノノアは、恥ずかしそうですがとても幸せそうに真面目に答えています。
ちゃんと答えてくれるのがノノアらしいですね。
「ノノア頑張ったんですね。」
「ええ、きっと。本当に良かったです。」
「しかし、ノノアがとても男性らしくなりましたね。」
ニッコリ。
「ええ、とても格好いいですわ。」
ニッコリ。
ピアと、思いの通じたノノアを見て話していたのですが、……何やら横のおふたりが過敏に反応したのです。
ピクピク!!!×2。
「アリィには俺が!」
「ピア、私にはその様に言ってくれませんね?」
少し焦った感じのロイと、何故か不適な笑みを浮かべているルーイ様。
『これは、……私達の心が疑われていますか?』
『日頃の気持ちの伝え方が足りていないのでしょうね。』
「ふふふ。ロイ、私はロイ以外に夢中になりませんよ。ふふ。」
「ルーイ……様、安心してくださいませ。私は真っ直ぐにちゃんと見ていますから。ふふふ。」
真っ直ぐに思いを伝えたので安心していただけたようです。
そんないつものSクラスで賑やかにノノアを囲んでお話ししていたのですが、放置されていた方が我慢の限界だったらしく、参戦してきました。
「おーーーい俺を忘れてないかい?」
「……なんです?」
黒笑顔復活!!!
「いや、悪かっ……。いいや、申し訳なかった。ノノアという“人”を知りたかったのだが、大変失礼な事をした。すまん。」
翡翠色の方が全力で頭を下げ謝っている。
本来妖精様達は、人間より存在が上であり、いくら身勝手な事をしたりしても頭を下げるなどしないでしょう。
ましてや今回は試験だったのです。その中で記憶を読み不快な思いをさせたからと言ってもこの様に人に頭垂れる事はしないはずです。
それだけ本当に悪いことをしたと思っているからこそと、この翡翠色の方の人間性……いや、妖精性なのでしょう。
それはノノアも解りましたので、もう、怒るのはやめにしたようです。
「……いえ、こちらも取り乱してしまい申し訳ございませんでした。いくらあの様に偉大なる妖精様がされたと思えない所行とはいえ、失礼な物言いでした。」
「まだ軽く悪態をついてくるか……。それだけあの女性が大切なのだな。まあ、今の発言は聞かなかったことにしよう。」
「……ありがとうございます。」
--ひとまず平定したようです。
「さて、と。まあ、いろいろあったがノノアにとっては簡単だったはずだ。」
「……僕自信は何を見られていたのかよくわからないのですが。」
「ん?まあ、そうか。」
翡翠色の方が言うには、
まずは魔力の量。
少ないようなら使役する事がは無理だという。
それは、契約するとお互いのみ魔力が同調するからなのだそうです。
妖精様側が少ない分には問題ないが、使役する側が少ないと妖精様側から魔力を多く供給しすぎてしまいバランスがとれなくなるそうです。
そして、次に契約者の心を見なければならない。
それは単純に性格の事を指しているわけではなくて、自分の力を自分の意志の元他社に流される事なく正しく判断出来るのか?
と、言うことだったそうです。
「まあ、どちらもクリアしても俺が気に入らなかったら--って事もあるけどね。」
気に入らないから、やっぱり無しで!って言う事もあるのですね……。
「……それで?僕はどうなのですか?」
「ああ。合格だ!なので、改めて聞こう。お主は契約を望むか?」
「……契約を、望みます。」
ノノアがそう言うと満足そうに笑う翡翠色の方。
「よろしく頼む!ははは!楽しくなりそうだ。」
黒笑顔が出たときにはもう、この妖精様とは契約しないのではないのかとも思っていましたが、良かったです。
「では、契約に移ろう。」
召還の力が残っている、“契約者が大切にしている物《妖精の本》”を挟んで向かい合っています。
「名を……。」
「……ノノア・キースです。」
「森の力を持つ、カイル・サイラスの名において、召還の契約をノノア・キースと結ぶ。---ー
リーフォ!」
ふたりの魔力がお互いへ流れ込み混じり合う。
魔力が出会い、ぶつかり合い、混じる--人には性格があるように、魔力にも色があるのだなとふと見て思いました。
しかし--なんと言いますか不思議とふたりの魔力はそれが当然かのように綺麗な色へ変化して翡翠色に綺麗な空色が溶け込んだ。透明度の高いアクアマリンの色へ変わる様子は何とも神秘的でした!
「“リーフォ”?!」
「ああ、森の妖精が魔法発動する時に使う言葉だ。」
「そうなんですか?!」
初めて聞く言葉に心躍ります。
妖精様達についても、その魔法についても知らない事ばかりですのでこれから楽しくなりそうですね、
「契約は終わったぞ!これからよろしくな!ノノア!」
「……はい!よろしくお願いします。サイラスさん。」
「カイルでいいぞ!!!あと敬語も面倒だろ?いらんぞ!」
「……いや、そんないきなり妖精様をそんな風には…………畏れ多いです。」
幼少の時からの憧れの妖精様にそんな風に言われてもきっとまだまだ緊張が解けませんよね。
「ふふ。しかし、キースとサイラスか……森と森の支配者……俺の勝ちだな。笑」
ボソボソ。
「……ん?どうしましたか?」
物凄く素敵な笑顔で微笑むカイルさん。
『属性がピッタリな訳だな!くっくっく。笑。』
「いいや。何でもないさ!しっかし、あーーー良かったよ!本当に!!俺、ノノアを怒らせてやっちまったって思ってさ~。ははははは~!!!」
皆「「「……。」」」
この軽さ……似ています。今ならばわかります。この感じ----。
「だから詫びのしるしに、例の彼女に試験の記録映像をあの子脳内にに送っておいたから!!!!」
ニカッ!!!
「……………………はい?!?!」
ピキピキ!
「いや~!俺っていい仕事するわー!「もっと一緒にいたいな。」「……僕もだよ。」ってやり取りとか良かったよねぇ~!!
僕の彼女に何してくれてんのかな?みたいに怒ってた事も伝えておいたからね!」
ニカッ!!!
「「「……。」」」
……似てる。間違いないです。
……ダン先生だ……。
この軽さ、ワルノリ加減……。
ノノアがちょっと気の毒になるSクラスでした。
「……カイル!!!何してるんだよ!!!!!怒。」
ええ、ごもっともですよね。




