誰かに似てる方
「お主は、----を望む者か?」
※※※※※
必要な物は……。
魔物の牙。
魔物の羽。
妖精の酒。
素材はこの3つですね。
それが目の前に並んでいます。
妖精の酒は杯に入れられ、牙はピカピカに磨かれていて、羽はブラシを掛けてあるのでしょう。毛並みがとても綺麗に揃っております。
「牙や羽は何故コレを選んだのですか?」
そういえば何の牙が必要だとかはわからないままでしたね。
「……うん…………。直感!」
「直感なのですか?」
「……探しても文献には何もなかったから、全部を並べて直感と素材の魔力を見て選ぶことにしたんだ!」
「それでいいのか?」
「…………ダメかな?」
「いいんじゃないのぉ~?!」
「やってみれば良いじゃん!」
「まあ、やってみれば良いよね!」
素材はたんまりあります。……壁際に置かれた大袋いっぱいに素材が詰めてありますからね。
私達はただ、並んで眺めています。
ノノアが幸せそうに、綺麗に整えながら準備をしていますからね。
手を出してはいけない気がします。
長年の夢、挑戦したいことが叶う時ですからね。心行くまで楽しんでいただきましょう。
ですので、お茶と焼菓子を頂きながらのんびりとしています。
※※※※※
「……あと必要なのは、妖精世界とこちらの世界を繋ぐ扉をモチーフにした魔法陣。」
文献を片手に扉の紋様に魔法陣図を描いていくノノア。
魔法陣の一部の空欄に契約者の名前を書き込む。
扉魔法陣の上に、素材3つを指定位置へ並べる。
「……できた!!」
さすがに複雑な魔法陣ですね。普段は魔法陣を構築することはしませんが、教科書で見た魔法陣とは難易度が各段に上がっている事はわかります。
あれほど複雑ですと、起動した途端にかなりの魔力を持っていかれそうですね。
魔法陣、素材、あとは--。
「ノノア!ノノアの大切にしている物って何を用意したのですか?」
「眼鏡??」
「麦藁帽子??」
「……眼鏡はちょっと。失敗したら生活できなくなる。……麦藁帽子は、大切ですが本当に大切に扱っていますので。……本です。」
「本ねぇ~。」
「ノノアっぽいね!」
ノノアの手にあった物は掌より少し大きめの本。
余程大切にしてきたのでしょう。角がすれて丸くなっている……《妖精本》のようです。
「準備出来た?」
「……ええ。」
「楽しみですわね。」
「……。」
先程までの楽しそうなノノアとは打って変わって、今は少し不安そうな表情を浮かべています。
「……何かあったら--……。」
気持ちはお察しします。召還事例事態が少なくて詳細が不明なものですし、成功したとしても自分には相応しくないと思われた瞬間に襲われる可能性もあるわけですからね。
しかし、心配は無用なのです!!
「何でもするさ!」
「安心してやってみたら良いのです。」
「そうよぉ。楽しみねぇ。」
「早く早く~!」
Sクラスの皆は失敗したら、とか、何か不測の事態が起きたら、などと言うことは全く気にしません。と言うよりもそうなったとしても皆で協力すれば何が起きても何とでもしてみせるという心があるのです。
これまでの経験で己の強さ……ではなくて、皆の強さには自信があるのです。
「……皆、ありがとう。じゃあ、いくよ!」
※※※※※
大切にしている本を魔法陣に置き、その上に手を重ねるノノア。
少しずつ魔力を注ぐと魔法陣が光輝く。
「……我は結ぶ。この一時----両世界に道を開け。我に着眼する者あらば----姿を現せ。----【召還】!!!」
シュン。
シュンシュン。
素材が魔法陣に消えてゆく。
ふぁん!
ぱぁ~~~~~!!!
目が開けられない程の光。
何も見えない。視界を遮る程の不思議な光。その上、強い魔力がこの空間にいっぱいに広がっています。
「うわぁー!!!」
「おお~!!!!」
皆が歓喜の声をあげて見守っています。
光と魔力が渦巻く、ですが--何も嫌な感じはしません。
ぱぁ~~~~~~!!!
----…………ふぁぁぁん。
しばらくすると練習場いっぱいに溢れた魔力が徐々に収束していきます。
扉魔法陣に魔力が引き込まれて戻っていきました。
光纏う魔力全てが集まり、扉魔法陣がより一層光り輝く。
皆「「「……。」」」
カチャ……。
皆「「「!!!」」」
カチャカチャ……。
皆「「「?!?!?!?」」」
皆「「「……。」」」
バーーーーン!!!!
無理やり感ある破壊音と共に、すぅ~~~っとまばゆい何かが現れた。
「…………ふぁ~~~。」
皆「「「……。『欠伸?!?!』」」」
目の前の出来事に目が奪われる。
そして、目の前の方と、Sクラス皆で無言の対峙時間が産まれます。
皆「「「……。」」」
目の前の方はローブを被った小さいお方です。
全身ローブに覆われていますのでどんな方なのかはよく解りません。
ローブの方「----お主は、契約を望む者か?」
ノノア「……。」
ローブの方「?----お主は、契約を望む者か?」
ノノア「……。ふぇ~~~~!!!!!!!」
キラキラキラキラ……。
ローブの方「?!?!お主ー---が……………………。…………、すまぬ、この者が我を召還したものか?」
何かを諦めたこのローブの方は、目を輝かせてキラキラし続ける無反応のノノアに問い掛ける事を止めて、Sクラスの皆に言葉をかけてきました。
まあ、この状態ですし賢明な判断ですね。
「そうですわ。」
「ノノアと言います!」
「うむ。」
短く返答すると、ローブの方はノノアの顔面に飛んでいきます。
ノノア「……飛んで……!!!!!!!」
キラキラキラキラ……。
ローブの方「……お主----いや、ノノアよ。」
ノノア「……ほ~~~~。」
ジロジロ。キラキラ。ジロジロ。キラキラ……。
ローブの方「~~~~~~~~~ノノア!!!」
バシーーーーン!!!
皆「「「!!!」」」
ローブの方からその身の丈の2倍はあるだろうビラビラの物を取り出してノノアの頭を目一杯----ひっぱたいていました。
そして、そのビラビラを肩に担いで続けるようです……。
皆『『『怖!!!』』』
「どうじゃ?俺のハリセンは効いたろう?はっはっはー!!!」
バサッ!
と、ローブを脱ぎ捨てるこの方。
現れたのは、なんとも綺麗な方でした。整ったお顔に金色の眼。翡翠色の長髪を左に流して纏めています。
「ノノアひっぱたかれて呆けていますね。」
「それよりも、あの方喋り方急に変わりましたわ。」
「何かあの感じの人どこかで……。」
「ええ、とても身近な気かするわぁ~。」
「え~と…………。」
ガラリと変わったこのお話の仕方。この感じ……誰かに似ている?ちょっと目の前の方を無視しながら思案していると、待ちきれなかったようですよ?
「俺の容姿はガン無視か?!?!俺結構イケると思うんだけどなぁ~。……どうよ?!」
サラ~ふわぁ~キラーン☆
ポージング……し慣れてる感あるのが何となく暑苦しいです……。
しかし、せっかくいらしてくださったのに不快にさせるのは失礼ですね。
「ええ、とても綺麗な御髪ですわね。」
ニッコリ。
「翡翠の色って良いわねぇ~。」
ニッコリ。
「ツヤツヤだな!」
ニッコリ。
「髪長いですね。」
ニッコリ。
「シンプルな髪ゴムは良いと思うぞ。」
ニッコリ。
「片側に纏めるのは男性でも素敵ですね。」
ニッコリ。
「俺も縛ってるよ~!」
ニッコリ。
全員参加の、満面の笑みでのウェルカム!きっと失礼には当たらないでしょう。
「……お前達……髪しか褒めんとはな……。」
ブルブルブル。
皆「「「バレたか!!!」」」
何となく内面を褒めづらいですし、自慢であろうお顔を賞賛しても面倒な事になりそうでしたからね。少し怒らせてしまいましたでしょうか?
--という心配は杞憂に終わったようです。
「まあ、良い。てか、ノノア!お前どうするんだ?!契約するんのか?しないんか?!?!」
ちょいとプンプンしながら、この翡翠色の方はノノアの顔面に指を突き出しています。
ノノア「……へ?!僕はただ、お目に掛かりたかったのですが……………………契約?」
翡翠色の方「お……う……契約。」
ノノア「…………契約って?」
翡翠色の方「…………いやいやいや。お前契約の召還しただろう?」
ノノア「…………ん?」
翡翠色の方「………………ん?!」
契約とはどういうことでしょう?ひとまず召還しただけだと思っていましたのに。どうゆう事でしょう。
翡翠色の方「何ぃ~?!?!?!召還してみたかっただけだとーーーー?!?!」
バシバシバシバシ!!!!
ノノア「……いえ!」
バシバシバシバシ!!!!
ノノア「……だって!」
バシバシバシバシ!!!!
ノノア「……夢だったんだ!あぁ!!」
バシバシバシバシ!!!!
ノノア「……ありがとう。」
バシバ……。
翡翠色の方「ああ?!?!なんだってー?!?……----ありがとう?」
皆「「「あ~……。」」」
ハリセンたこ殴りでノノアバタンキューですね。




