お酒
天井から落ちてくる雫…………その落ちた先----この空間の中心に大きく窪んでいる岩があった。
それは、高さは背丈を少し超えるくらいの岩で、上部の窪み具合を見るにもはや役割は甕です。
一体どれほどの年月が経ってこうなったのか。
岩甕に溜めきれなかった液体が時々こぼれ落ちていく様子が遠目でも見えます。
見えます----が、正直その周りに蠢いている、数え切れない程の魔物達の方が目に付きます。
私達は通路を抜けたようです。
そして広い空間に出ました。
左側を見ると、階段がありこの部屋のフロアへ足を進めることが出来そうです。
皆「「「……。」」」
「ノノア、アレっぽい?」
「……ぽいね。」
「魔物だらけだね~。」
皆「「「……。」」」
眼下を見ると、「グォォォォ!」「キョェェェ!」「ウヌウヌウヌ。」とよく解らない鳴き声のオンパレードです。
一体何の魔物なのですか?
「じゃぁ~、私の新兵器試してみても良いかなぁ~?」
「“兵器”?」
「うん。そぉなのぉ~、まだ魔法だと難しくてぇ。……や・く・そ・う、なんだけどぉ。うふふ。」
皆「「「…………。」」」
『『『一体どんな劇薬ですか?』』』
と心の中でちょっと恐怖する皆。
「あ!でもぉ、コレ魔法じゃないから、人にも効果あるのよねぇ~。うふふ。私は慣れているから大丈夫だけどぉ。」
ミーサのこの言葉で危機感の芽生えた皆は、自然とミーサから大きく距離をとっていました。
「…………じゃあ、皆で少し下がってるよ~……。」
「うん。そぉしてぇ~。」
目の前には蠢く何十体といる魔物達。下手すると百体いるかもという数がいますが、……。
「ミーサ何するのでしょうね?」
いつの間にかミーサの手には瓶が握られています。
「水色の……粉?」
「アリィ、もう少し下がれ!」
『瓶の中身が気になって近づいてしまっていたのですね。』
「うん。ありがとう。」
‘’ピッ!
【風】
魔法発動と同時に瓶をひっくり返して、中身を風に乗せていきます。
この空間全体に薄青い粉の風が舞い落ちる----。
「グォォォォ!グォ…………。」
「キョェェェ!キョ……キョ…………。」
「ウヌウヌウヌ、ウ……………………。」
魔物達「「「ぐぅーーーーーーー……。」」」
皆「「「……………………はぁ?!?!?!」」」
「う~ん、上出来ぃ~!み~んな寝たわよぉ~!うふふ。」
現状を見ても、ミーサの言葉を聞いても目の前の有り様に驚愕してしまいます。
「寝たの?」
「全部ですか?」
「……強力。」
「大丈夫よぉ~!もしもの時は私達には回復薬があるからぁ~!うふふ。」
『まあ、そうなのですがね。しかし、凄い効果ですね。……これならば、早そうです!』
「では、行きますか!」
「一応飴舐めていくかな。」
「そうですね。」
階下へ降りてみると見事に魔物達は寝ていました。
魔物のこんな寝姿を見るのは初めてですね。
スヤスヤとしていますが、オーラは真っ黒ですからね。無抵抗の所申し訳ないのですが、倒させていただきましょう。
‘’ピッ!
【氷柱】
ザシュ!ザシュ!ザシュ!
‘’ピッ!
【水の弾丸】
‘’ピッ!
『竜巻は……ここが崩れそうですね。ならば----。』
【魔法剣】
ザンッ!ザンッ!ザンッ!ザンッ!
魔物が次々と切り倒されていきます。
「あれ?いつの間に……ふっ。」
『ルーイ……さすがですわ。ふふ。』
「いつの間に修得したのぉ~?」
ザンッ!ザンッ!ザンッ!……。
「ふふふ。最近ですよ。」
にっこり。
【魔法剣】を使っているのはなんとルーイ様です。手に持っていた物は……枝?……いえ、握りやすそうな石……のようです。
あのデカガニとの戦いで思う所のあったルーイ様。魔法攻撃しか効かなかったあのデカガニの魔物の事です。マリーの魔法剣が硬いはずのカニをあっさりと切っていくのを目の当たりにして、前々から気になっていたこの魔法を密かに練習していたのです。
「ふふ!さすがです!じゃあ、私も御披露目しようかな!ここは丁度良く石だらけですし!」
そう言うとその辺に落ちていた拳大の石を何個も手に取ります。
‘’ピッ!
【身体強化】
「いくわ!!!」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
石が次から次へと魔物に向かって飛んで--脳天にヒットしていきます。
脳天にクリーンヒットしては反転してひっくり返る魔物達……。
「考えたな!マリー!」
「面白い攻撃ですね。」
そう、マリーは手を【身体強化】して石を指で弾き飛ばしていたのです。
良い勢いです!確実に数を減らしていけています。
--十数分後……。
ドゴォーーーン!
ドンドンドン!
ザシュ!ドシャーーー!ザシュ!……。
しかしここまで騒がしく戦闘をしていればさすがに……起きますよね。
はい。生存していてお眠りになられていた奥のほうの魔物達も、起きました!
「うぅ~ん。案外効果が弱かったわぁ~。……純粋に睡眠効果だとこの程度なのねぇ?けどぉ、睡眠導入時間は早かったからぁ、持続力または深い睡眠効果を高めた方がぁ……とするとぉ、濃度かしらぁ???」
うむむむむ???
ミーサが考察し始めてしまいました。
「って、おーい!ミーサ?!?!」
‘’ピッ!
【土壁】
ズ……ズズズ。
つい思考が回りすぎて周囲の警戒を怠っていたようです。
「ごめんねぇ、カミーユありがとぉ~!!」
「おー!考えるのはとりあえず片づけてからなー!」
ですが、ついに目を覚ました魔物達が次々と向かってくる状況になり、急な事で気づくのが間に合っていない----。
『ここからでは遠すぎます!!』
「マリー!!!」
背後で眠っていた魔物達が押し寄せている!!
「皆さん!一瞬目をつむってーーー!!!!!」
大声でアリィが叫んだ瞬間--。
‘’ピッ!
【発光】
パァァァァァァ!
一瞬----まばゆい光がこの空間全体に光る。
皆目をつむり、魔物と対峙していた者は魔力遮断で外へ意識を向けた。
皆「「「アリィまで……。」」」
「目くらまし!!!です。良かったですよ~マリー。」
ニッコリ。
「ははは!ごめん!アリィ、助かった!」
「ギョェェェェェ!」
この暗がりで急に発光体を目に照らされた方はたまったもんじゃないようです。
そんな好機を見逃すはずもなく……一気に畳みかけます。
カキン!
「グエェェェ!!!」
シュン!
「アァァァァァ!!」
ドン!ドン!ドン!
「オウ!」
「ヴゥ。」
「ウペー!!!」
「----ドシャ……。」
終わりましたね。
「しっかし、対面の道はどこへつながってるだ?あの道から次々と魔物が来たが……。」
「あちら側は、魔物の巣窟なのでしょうか?居連れにせよ、しばらくするとまた来るかも知れませんから早く用事をすませてしまいましょうか。」
「……うん。そうだね。」
戦っている途中から魔物を倒しても減らない事に気づくと、降りてきた道の丁度対面に、小さめ穴が見えたのです。そこから魔物が増えていました。
しばらく這い出てくる魔物も倒し続けていましたがそれも終わり、一段落ついたようです。
中央の岩甕に近づいて中身を観察しているノノア。
鍾乳洞のような天井部分から、一滴ずつ落ちてくる液体。
「文献の言葉っぽいけどぉ~、あってるのかしらぁ?」
「……………………合ってるみたいだよ。」
岩甕の一部に手を当て目をキラキラとさせているノノア。
--何でしょうあの感じのノノア……ミーシャといる時と同じくらい気持ちが表情に出ていますが、嬉しさの種類は、違うようですね。
目はキラキラ、口元は少し緩み、……もはや心躍ると言った感じでしょうか。
よく見てみると、ノノアの手元には、また文字が…………。
----《妖精の酒》。




