行方不明者
対応できなかった……。
ダン先生の迅速な対応と、アリィとロイの魔法がなければ自分達はやられていただろう……。
そう思うと3人以外の皆は冷や汗が流れ、顔色がやや青ざめていた。
お互いに余計な心配をさせまいと直ぐに気持ちを持ち直したが、その心中は穏やかではない。
ロイとアリィは対応できていた。
--それもとても強力な魔法で。
“早さ”、“同時起動”、“魔力量”、どれをとってもふたりとの差は明確だった。
だが、それぞれのこの思いはしっかりと胸の奥にしまう。
--それが出来るだけでも随分心の強い者なのだと当人達以外は評価するだろう。だがそれでは本人達が納得出来ないのです。
皆はあのふたりを前にしては自分達とはレベルが違う事を思い知らされました。
以前“ズレてる”と何度も思ったが、冗談を言っている場合ではない!と焦らずにはいられない程の差が産まれていると知る。
『何故。』
『どうして。』
『元々魔力量が多いからか?』
6人は気丈に振る舞いつつそれぞれの頭は忙しく思いを巡らしています。
皆『『『…………。』』』
そこで、……今更ながら当然だ、と皆は気付く----自分達と同じ時間分……………………いや、おそらく自分達以上に鍛錬や魔法訓練をしているのではないか、と。
……実際魔法訓練は、ほぼ、していない。ふたりとも皆とする以外は相変わらず家庭魔法くらいでしか使っていなかった。ただひとつ、最近は便利だと言う理由で【身体強化】はよく使っている。……速く動けますからね。
そして、鍛錬に関しては皆とする時間以外にも朝の日課はずっと続けているのです。
単純にその時間分今まで皆よりも鍛錬していたことになります。
「行方不明者は結局の所どこへ消えてしまったのでしょうか?」
「そうなんだよな。もうどこかへ逃げたのか?」
その声で他の皆はそれぞれの思考を止める。
ギルドの依頼で来ているのだ、と気持ちも現実に向きなおります。
「…………どこかに行ったのだろうか?」
「うぅ~ん。」
「……でも、人の気配ある?」
「~~~とりあえずノノアに探索してもらう?」
「それがいいかもな!」
「ノノア、お願い出来ますか?」
‘’ピッ!
【広範囲探索】
「…………ん???」
「何か感知しました?!」
「……何か、いっぱい魔力ある。」
皆「「「へ?!」」」
「……この辺りに沢山いるよ!!!」
皆「「「はあぁ!?!?!?」」」
どう言うことでしょうか?
見渡しても全然人が見つからないのですが………………………。
ピシ!
「何でしょう?今の音。」
ピシ!ピシ!ビシ!!
皆「「「!!!?」」」
「何?何?!割れる音?」
バリーーン!!!
「「「え?!えぇぇーーー!!!」」」
そこら辺に沢山あった、岩みたいなもの。
そして、芸術作品かと思っていた石像が次々と割れて…………。
人が出てきました………………。
コレには皆驚きすぎて皆、固まってしまいました。
石化していたようです。ですが--。
「大丈夫なのですか!?生きているのでしょうか?」
割れて出てきた人達はぐったりとしているようで、動きません。
「大丈夫ですか?」
「わかりますか?」
「おい!大丈夫か?」
「……目を開けてください!」
ひとりひとりに近寄りしゃがんで状態を見ます。
「うぅ。」
「う。」
どうやらぐったりとしていますが生きているようですね。
ですが、……どうしましょう。ぱっと見ても20人程の人がいます。
「こんなに大人数、運べないよな?」
「回復薬、飲んでもらう?」
「でもひとりひとり飲ませていたら時間がかかりそうたけど……それしかない……かな。」
「私に任せてください。」
すっと、立ち上がって言ったのはルーイ様でした。
「少しなら回復ができます。」
ブロンクス公爵家は医学に精通しているのだそうです。
--そういえばレイルム遺跡でも怪我をしたピアの状態を瞬時に診て確認してくれていましたね。
『レイルム遺跡……………………まあ、今はやめておこう。』
なにやら別方向へ思考が飛びそうになったロイの意識でしたが、ひとまず後回しにして、目の前のルーイ様を見ます。
ルーイ様が何を始めるのか……皆も注目しています。
「-ーですが、場所が広いですね。……ノノア、広範囲魔法を頼めますか?」
「……うん。」
‘’ピッ!‘’ピッ!
【広範囲魔法】【活力を!】
パァーーー!!!
柔らかな光が包み込む。
----魔法は広がって行き、来た道の方角へも届いたようです。
どんな魔法だろうと見ていると、ルーイ様が微笑んで教えてくださいました。
「コレは消耗した体力面を補う魔法です。完全に回復するとかではありませんが、怪我が酷くなければ自力で動ける様になるとおもいますよ。」
何だか凄かったです!医学系や癒やしの魔法はコツがいるらしく、また属性魔法の外に在るため、適性というものがあるらしく、使える人が限られる部類の魔法なのです。
また、【思い】を構築するのも難しく、無詠唱魔法でも発動する事は遺伝的なものがある人でないとなかなか難しいらしいのです。
「凄い!何だかとても暖かくて綺麗な魔法ですね。」
「ありがとう。たぶん、アリィも資質があると思いますよ。ふふふ。」
そうでしょうか?と返しているときに、倒れてた人達が次々と目を開けていきました。
「なんだ?」
「どうしたんだ?」
「何があったんだっけ?」
「確か……。」
「カニ!」
「そうだ!あの見た事もない大きさのカニだ!!」
「!!!逃げなきゃ!」
辺りを見回す復活人達。
状況を把握するのには少し時間がいるようでした。
目の前の若い男性4人と女性4人、そして頭をボリボリしているもう少し年齢が上の男性を見て----沢山の自分と同じ様な復活人を見て----「!!!」赤色のバラバラになったカニを見つけた。
「え?あのカニ!」
「倒されてる?」
「倒したのか?!」
「君達が?!?!」
復活人「「「…………。」」」
目の前の若い人々が討伐したらしいと一応状況は理解したのだが、到底信じられないというお顔をされていますね。
……だが、ルーイ様の魔法で動けているとは言え復活人は憔悴しています。
ひとまずギルドへ戻ることにしました。
※※※※※
--ギルドネーロ、キタト支部。
「おおー!戻ったか!」
ぞろぞろと大勢が押し寄せたのでギルドは少し騒ぎになっていました。
しかも、行方不明になっていた者ばかり……この支部をよく使う人達は事態を把握していたので直ぐにギルド長を呼ぶように、職員に伝えたため、すでにギルド長もこの場に来ています。
「良かった。皆、いるようじゃな。」
ギルド職員の方が確認すると、どうやら行方不明の方は全員いたようです。
泉の魔物を討伐した事と、魔物の正体、行方不明者の石化についてお話し、ひとまず怪我人等で混乱中のギルドを後にして、また明日詳しくお話しすることとしました。
--翌日。
キタト支部へ行く前に現地調査してから行く事に。
と、言うのも皆魔物を討伐した後の泉の状況がまず気になった事と、その他にも懸念があったからなのです。
結果から言うと、泉は何も異常がありませんでした。
昨日のうちにキタト支部のギルド職員の方が討伐した魔物の処理をしてくださったようで、戦闘で荒れた事を除けば何も気になるものはありませんでした。
「ですが、本当に何もないのですね。」
「…………ああ。」
「何かあると思ったのですが。」
「……重たいオーラはもうこの周辺にも、泉の深いところまで探っても見つからないね。」
「じゃあ解らないわねぇ~。」
「残念だ。」
「一体どこから?」
「本当に……あの魔物はどこで発生したのでしょうか?」
そう。あの様に強力な魔物でしたから、どこかに黒いオーラがあり出現したのかと考えたのです……が、それらしき場所は見つかりませんでした。
むしろ綺麗だったのです。魔物がいないただの安全な観光名所に戻っていました。
それは、良いことなのですがね。
……となると、どこからかこの土地へ来たと考えるのが自然です。一体どこからあの魔物はやって来たのでしょうか?
ここには手がかりがありませんので、ギルドでも聞いて見ることにしましょう。
※※※※※
--ギルドネーロ、キタト支部。
「いや、そもそもカニはこの辺りにはいないのです。」
「やはり、そうですか。」
報告すると、この辺りにはカニが生息していない事を教えていただいた。
だとするとやはり一番可能性があるのは、違う土地から来たと考えられる。
「……一体どこかから来たのか?」
「まあ、普通に考えると海の方面でしょう。海まではそう遠くないですから。」
予測としては、他にも一時的にあの黒いオーラがたまたま出現していた可能性や、自然発生でなかった可能性が考えられたが、何も根拠はなく、……疑問は晴れなかった。
だが、ギルドからの依頼としては完了で良いそうです。
行方不明者も見つかり、魔物も討伐しましたからね。
この依頼は、確かに武器主体では難しい依頼でした。硬質化した身体、魔法を使うことを考えると魔法を使う物がいないとやはり難しい案件だったと言えるでしょう。
疑問が残った懸念材料は、ギルドネーロの方でキタト支部と協力して引き続き調査を進てくださる事に落ち着きましたので、これで完了となったのです。
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ロイの気づき。
レイルム遺跡での出来事について--ロイは気づいたことがあった。
『何故あんなに?』
と、正直思っていた。
聞き出そうとしたが、あの時は確か「今はまだ明かせない」と言われたはずだ。
「日頃お互いに隠し事のない間柄なので珍しいから気になってはいたが……。」
「ん?なんだ?ロイ。」
「ああ、ルーイ。レイルム遺跡でのあの暴走……ピアの事が大切だったからなのか?……友達以上に。」
「ふふ。ああ、あれか。……まあ、そういうことだな。」
そんな思いがあったとは……意中の人の為に……。
そんなルーイはロイにとって新鮮だった。
「まあ、公爵家だからな……。」
『お家柄で寄ってくる御令嬢ばかりな社会で生きてきたルーイがピアを意識して……。更には傷つけられて怒るルーイなど……はは。』
「なんだ?」
微笑んだロイを不思議そうに見返すルーイ様。
「いや、貴重だと思ってな。…………良かったな!」
「ああ。」
嬉しそうなおふたりでした。




