キタトの町
「到着ですね。」
「いや~。時間かかったぁ~。」
「今日泉へは行く時間は無さそうですね。」
--時刻は午後のティータイムの少し前といったところでしょうか。
ここに来るまでにかかった時間ではなくて、移動中は動くことの出来ない辛さというものが疲労となっておりました。
「ふぁ~。ひとまず、依頼主に挨拶して、宿取って、時間有れば調査だな~!」
満足気に寝れたようなダン先生と、皆でキャビンを降ります。
いっそのこと全員分のハンモックを付けてしまおうかと声にしよう……というところで言葉が詰まりました。
「挨拶したら……って--。」
王都より北東の位置にある、キタトの町----町には泉からの水が流れ込む潤いのある町……。
「……と聞いていたんだが……。」
「予想以上に閑散としていますね。」
町中の建物の窓や入口は締まり、人々の気配は息を潜めています。
建ち並ぶ建物の中にはどうやら、人はいるようで、鍛錬の要領で魔力が見えたので解りました。ですが、とても静かに隠れているようです。
元々町並みはとても綺麗で町の規模も割と大きく、おそらく本来は活気のある良い町なのでしょう。
「何故このように?」
「何かが起きているのは泉のはずだろう?」
誰がどう見てもこの町の様子はおかしいのです。
誰も歩いている方を見かけません。
警戒しながら皆さんと町の中をよく見渡します。
--すると、何かを見つけました。それはとても見覚えのある……。
「……あの場所、空気が揺らいでいます?」
「あれは!」
「アレでしたか。」
「かなりの数がいますね。」
更に目を凝らして見渡すと、いろんな箇所が揺らいでいます。
良く耳をすますと覚えのある羽音も聞こえてきました。
「まずは、……全員で羽蟻軍団退治をした方が良さそうだな。」
「……それにしても数が多そう。」
「分散されると面倒だな。」
「逃してしまっては後々被害が出そうですわね。」
そうですね。アレを一匹も逃してはなりません。さて--……。
「じゃあ、おびき寄せる???」
「羽蟻って何が好きかしらぁ~?」
「甘いものではないのか?」
「そんな気がするな!」
『甘いもの。……甘いものですか。…………だとしたら----アレが良いかも知れませんね!』
‘’ピッ!
【呼び出し魔法】
アリィの手の中には沢山の飴が出現していました。
「飴?……ただの飴?!」
「そうですよー。ただの私のおやつです。ふふふ。」
皆「「「……。」」」
皆さんのお顔は「何故飴?」と語っていますね。
「まあまあ、誘い出すのは私にお任せくださいませ。やってきた魔物は皆さんにお任せしても良いでしょうか?」
何をするのか全く予想出来ませんが、アリィならきっと何か上手いことしてくれるでしょう。
…………と、言う事で町のド真ん中でアリィを中心に置いて皆で囲んでおります。
「では、皆さんよろしいですか?」
いつの間にか片手に大量の飴を持ちつつ、もう一方にも長い棒を手にしているアリィです。
‘’ピッ!‘’ピッ!
【竜巻(優しめ)】【炎(低温)】
巻き起こる熱をもった風----その熱風の中心に飴を入れる----すると--。
「糸?!」
「いいえ、飴ですよ。」
にっこり。
「コレが飴なのぉ~?!」
熱で溶けた飴が風に乗り、糸のようになりながら渦を作り出す。
漂う甘い香り。
風に乗ってふわぁ~~~と町全体に行き渡ります。
……。
…………!
ブォン……。
ブォンブォンブォン……!
「来たぞ!」
「皆さん、町は破壊しないようにしてくださいね~!」
中心にいるアリィが呼びかける。
--討伐……開始です!
皆「「「オッケーです!」」」
「……いや、お前達。半分で良いぞ?」
「半分……ですか?」
「ああ。全員では、……やり過ぎだ。」
皆「「「……そうですか?」」」
キョトーン。
ダン先生の困った顔を皆で疑問符を浮かべながら見ています。
これだけ空を覆い隠す程の数が目の前にいるというのに--。
「ああ。是非止めてくれ。」
『解りました。止めましょう。』
なんだか物凄く懇願されてしまいましたので止めておきます。
皆「「「……わかりました。」」」
ブォン!
ブォンブォン!
ブォンブォン……。
‘’ピッ!
【冷気】
カチンカチンカチン!!!
ブォン……。
【水の弾丸】
ひゅん!ひゅん!ひゅん!
ドドドドド!
ブォンブォンブォンブォン……。
‘’ピッ!‘’ピッ!
【毒】【風】
ふぁ~。
ボトボトボト……。
・
・
・
。
「ふぅ。終わりましたかね?」
「ほら~!数分で終わっただろう?全員でやったらいくら力を押さえていてもやりすぎだからな~。」
ダン先生の言うとおり、危なげなくあっさりと討伐出来てしまいました。
「終わりましたね。皆さんお疲れ様でした。」
「……ってアリィ、それ何?」
アリィの手には、棒に刺さった巨大な…………。
「うわ~!お姉ちゃん!それなぁに?雲?雲?なの?」
ばふん。
「曇って刺さるの~?」
ぽふん。
アリィに見知らぬ子供達かくっついてきました。
「???」
「こら!ごめんなさい。うちの子達が……。」
「いいえ、構いませんよ。こんにちは。ふふふ。」
「ねえ、お姉ちゃんソレ!ソレ!なぁ~に?すご~~く、甘~~い匂いするぅ!」
ふたりの頭を優しくなでて、腰を落とすアリィ。
目を合わせると優しく微笑みかけます。
目の前には目を爛々と輝かせた子供達。
「これはですね、綿飴と言うのですよ。」
「「ワタアメ?!」」
「そうです。食べてみますか?……皆さんもどうぞ。」
気づいたら周りにいたSクラスの方々も興味深々で見ていました。
「これ、どうやって食べるんだ?」
「あら?ロイも食べたこと無かったのですか?ふふふ。好きに摘まんで引っ張ってくださいな。千切って食べるんですよ。」
皆さんちょっとおっかなビックリ触ると感触に戸惑いながらもそれぞれ手に取りました。
「……いただきま--。」
「「いただきます!!!」」
「これ!」
「ふふふ。宜しければ御母様もいかがですか?」
「え、ええ。いただきます。」
パクっと皆さんそれぞれ口に入れてみると……。
「うわぁ~!何コレ?!ふわふわ~!美味しぃ~~~~!!!」
「甘いの!溶けるの~~~~!!!」
「あらあらまあ。本当に美味しいわ。」
ふたりの子達はもうおかわりに飛びついていますね。
「確かに、これは美味いな。」
「私も初めてです。」
「何で優しい味ですの。」
皆さんも気に入ったようですね。
「あの、ありがとうございます。正直言うと、いきなり甘い香りが漂ってきてすぐにあの謎な羽音と衝撃音がしてきて……訳が解らないまま閉じこもっていたのですが…………あの、あなた方は?それにあの恐い羽音は?」
「あの羽音の魔物は全て倒したと思いますよ。御安心くださいませ。私達は王都のギルドからの依頼で来たのです。」
「まあ!ではもう引きこもって居なくても良いのですか?」
余程不安な日々をお過ごしだったのでしょう、目にはうっすらと涙が浮かんでおります。
「……それは、本当かい?」
「君達があの羽音を退治してくれたのですか?」
気付いたら町に人が出てきていました。
ワイワイワイ……。
ガヤガヤ……。
先程までとは打って変わって人の気配で溢れてきます。
あっと言う間に人が増えて囲まれてしまいました。
「あの!すみません!!ちょっと、失礼!?!」
まだまだある巨大綿飴の影の下、こちらへ急いでやって来る人がいます。
「すみません。これは何の騒ぎですか?あの羽音と戦闘音は……。」
人垣の中柄現れたひとりの男の人。
「……。」
Sクラスを見回して、駆けつけた人は固まってしまいました。
何かに気づいたダン先生がその男の方へ話しかけます。
「町中ですみませんでした。私達は王都ギルドの依頼で来たものなのですが。」
騒ぎを起こしてしまいましたからね。まずは急いで依頼主の元へ行かなければなりませんね。
「あなた方が?……失礼しました!
ネーロのキタト支部職員のラド・ケルンと申します。」
先程ダン先生はギルド職員の方だと気付いたのですね。
『何と!丁度良いところに!』
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そういえば冷気、という疑問。
「気付いたら【冷気】ってアリィもロイも使っていましたが……。」
「そうですわね。」
「いつから使えるようになっていたのぉ~?」
「……え?」
「……だって、氷って凍らせるでしょう?」
皆「「「……ん?」」」
「その凍らせる温度が冷気の魔法ですよー。」
「おおーなる程。」
「気づけなかった!」
「……そうだね。」
【冷気】の使い勝手の良さに気付いた皆でありました。
『私も出来るかもしれないな。』
『私も出来るかもですわ。』
『『『『氷、覚えたい(わぁ~)!』』』』




