旅立ちの前の休日
旅立ち前の休日----。
「ねえ、ロイくんしばらく居ないってどこへ行くの?」
「アリィからは聞いてないですか?」
「それがな、アリミアからは今朝「しばらく出掛ける」としかまだ聞いていなくてな。」
「そのままずっと何か薬草混ぜてクッキー焼いていてね~。」
「あれ?もう焼き始めていますか?」
ロイは朝食を済ませてからシアード伯爵家に来ております。
アリィのお手伝いで、旅用のSクラスクッキーを作る為です。
「ねぇロイ、色々な所を回るって、どこまで行くのですか?」
「私達も聞いていないぞ!」
「そうでしたね。」
ちなみに、シアード伯爵家へ行ってくる旨を朝食時にお話したら、ちょうど今日はお暇だという御父様と御母様も着いて来てしまい、シアード伯爵夫妻とのんびりティータイムをしようという思惑のようです。
「それで?」
「ええ、ギルドネーロからの魔物討伐依頼でキタトの町へ行くのです。」
「キタトの町……。」
御父様達は顔を見合わせています。
『キタトの町はもしかして……。』
『ああ、報告があった所のひとつだな。』
『まだ王宮内の上層部しか知らないのでは無かったですか?』
『いや、あそこはギルドに任せていたからな。』
「「……。」」
「不安か?」
コソコソ。
「いいえ、全く。」
コソコソ。
御父様達は視察の時にSクラスの実力を見ていますからね。
そして、自分達の子に関してだけ言うと視察先以降もぐんぐんと魔力量が増えていたので、何も心配ないようでした。
「あ!ひとつだけ不安がありました。」
コソコソ。
「む?なんだ?」
コソコソ。
「魔物以外を破壊してしまうんじゃないかと……。」
コソコソ。
「それは、……そうだな。」
コソコソ。
「ロイヤード!」
「はい!何でしょうか。」
「ダン先ぱ……ダン先生は同行されるか?」
「はい。来ていただけるそうです。」
「わかった。」
「ならば、ダン先輩にお願いしておこう。」
コソコソ。
「そうですね。念入りに!」
コソコソ。
「おふたりとも、お仕事のお話はそこまでにしてくださいね。」
「お座りになってくださいな。」
さすがは御母様達、気づいておりましたね。
しかし、お仕事についてのお話は内情を話せないことも理解しておいでですので不確定を追求する事はしませんね。
皆様はそのままテラスでゆっくりするそうですので、ロイだけアリィのいる中へ入ります。
ここはアリィやサンが朝食を作る日に使用するお部屋ですので、キッチンが備え付けです。
アリィが何かを作る時は普段からこちらを使っているのです。
テラスはエントランスのすぐ側からこのお部屋までのいくつもの部屋と繋がっていますので、一行はそちらから来たようです。ロイはテラスから入ってきました。
「ロイ!」
クッキーの生地を混ぜ合わせているアリィがいました。どうやら次のクッキー生地のようです。今朝
早くから張り切って準備したようです。
「おはようアリィ。遅過ぎたかな。」
「いいえ。私が早く始めてしまっただけですよ。」
「そう?」
「ええ。」
にっこり。
「そっか。」
にっこり。
「「……。」」
「俺、何からしようか。」
「では、薬草をお願いします。」
「ああ。わかった。」
休日までロイと過ごせるなんて幸せですね。
しかも私が旅用の飴やクッキーを沢山作っておきたいと言ったら、手伝いに来てくださるなんて……やはり優しいです。
折角なら準備し終わった後にロイとゆっくり過ごしたい……と思いまして----。
「あの、ロイ?後で一緒にお茶しませんか?これ、ロイと食べようとケーキを焼いておいたのです。」
そう言ってロイに見せたのは茶色い生地に粉砂糖がのっているケーキでした。
「……フォンダンショコラといいます。」
「俺の為に?ありがとう!楽しみだな~!」
にっこり。
「ふふ。良かったです
。」
にっこり。
『俺の為に焼いて待っていてくれたなんて……。アリィ、可愛い……。』
『やった!やりました!ロイとのティータイム時間をいただけそうです。///。』
ふたりともお互いに口に出さないで喜んでいるのがまたお付き合いして間もないという感じですね。遠慮がちなのが初々しいです。
「「…………じぃぃーーーー。」」
「「???……はっ!!」」
視線を感じて見てみると、いつの間にか見られていました!
「おぉ!御母様方もよろしければ……。」
「あなた達やっぱり!喜。」
「やっぱり。ってなんですか?焦。」
顔を見合わせて焦り始めるロイとアリィ。
「なんだか最近、ロイに余裕があると思ったのよねぇ~。」
にやにやにや。
ロイ「……。」
「アリィは朝から身だしなみをキチンと整えるようになったと思っていたのよねぇ~。」
にやにやにや。
アリィ「……。」
「「あなた達!お付き合いしているわね?!?!」」
『……何故でしょう。目を合わせてはイケない気がします。』
『俺もそう感じるぞ。ついでに今肯定するのも危ない気がする。』
こういう時って不思議と心で会話出来てしまうのは何故なのでしょう??
危機察知能力が限界突破するからでしょうか?
「ふ・ふ・ふ・ふ・ふ。私達には解りますよ!良かったわね~!ロイ。」
ニタニタ。
ロイは背筋に汗が流れます。今すぐ逃げた方が良いような、嫌な予感しかしません。
『逃げ……。』
「あら~?ロイくん恥ずかしいのかしらぁ~?」
シアード伯爵夫人に逃げ道を塞がれてしまいました。
「当たりのようですね!リリー。」
「ええ、エリー!」
なんだか御母様方が気付いたら手を取り合って不適な笑みを浮かべています。
「アリィちゃんが、お嫁について来てくれるって事は……エリー!私達家族ね!」
「そうね!!アレは、どうしますか?もうしちゃいますか?」
「そうしましょう!良いわよね?ふたりとも!」
「「……へ?!?!」」
御母様方の圧でもう訳が解らないロイとアリィです。
「エリーどうしたんだい?なんだか賑やかだね?」
「リリー?座らないのかい?!」
騒ぎが聞こえたのか、テラスで待っていた御父様達も入ってきました。
待っていました!と言わんばかりに御母様達はここ一番の笑みを浮かべます。
「「結婚式をしましょう!!!」」
「「「「へ?!?!?!」」」」
ロイ、バルバド、アリィ、ルイーズの4人が石化しました。
もちろんこの場にいた、ヘレンとティナでさえ石化しています。
リトはギリギリ半石化で済んだようです。
前面だけ石化…………。
御母様方のこの暴走気味の思い付きはどうなってしまうのか?
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水やりを頼まれた校長。
私は立ち尽くしている。
『この水はなんなのだ?』
『どんだけ用意したのだ?』
Sクラスが旅立つ前の週末に急にコレが出現した。
『「Sクラス庭園のサンシェードにこの水を入れる所が有りますのでよろしくお願いします。」って!「3日に一回で大丈夫ですから~。」って!』
「……まあ、それはいいとしてもな。……私の依頼もあるしな。」
しかし----。
「周りにもバレちゃいけないからって……校長室一杯に置いていかんでも!!!」
校長室には瓶一杯の魔力供給水が隙間無く置かれていたのでした。
「仕事が出来ん!!!」
--ちなみにここに置いたのはやはりダン先生です。
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「あの、今更なのですが……。」
「ん?どうしたのですか、ピア?」
「ええ、校長先生に御願いしてきた水やり……校長先生に無詠唱魔法を御願いすれば良かったのではないでしょうか?」
皆「「「…………あ!」」」




