大将
「本日は、このような盛大なパーティーを開いていただきましてありがとうございます。皆さんを順に見させていただいてこの国の未来がより楽しくなるように感じました。これからも、ひとりひとりが魔法というものに向き合い、勉学に励んでくれる事を願っています。」
軍総司令様であるブロンクス公爵様がご挨拶されました。
その間は皆様動きを止めて来賓席に注目していました。曲も優しい音楽に切り替わっておりましたのでお声がよく聞こえました。
「また今宵は、学年、生徒、教師、我々と、立場や年齢関係無く交流出来るすばらしい日となっています。どうか、心より楽しい時間を共に過ごしましょう!」
パチパチパチパチ……。
割れんばかりの歓迎の拍手が鳴り止むと、また賑やかな音楽に変わります。
どうやらこの流れで視察団の方々がダンスをされるようですね。
「御父様達のダンス……あまり見てなくても良いでしょうか?」
「良いんじゃないか?特に珍しくも無いしな。」
「ふふ。ではロイと一緒にのんびりしたいです。ダンスは後でも良いですか?」
「ああ……///。そうしようか。」
それからロイとお話しながら、御料理やお菓子を楽しみました。
見れば他の生徒皆も思い思いにそれぞれ過ごしています。
ロイに肩を抱かれて、ペアになっているドレスを着ている……そして今日はそれだけではなくて……指輪まであるのです。アリィは思わず口元が緩みます。
今のふたりは並んで居るだけでとても幸せでした。
ロイから贈っていただいた指輪とロイを何度も見てしまいます。
嬉しくて……つい、です。
「ロイ?」
ちょっと呼んでみます。
「何だ?」
優しく微笑んで目を合わせてくれます。
「……大好きです。」
ふふふ。
「……俺も、アリィが大好きだ。」
はは。
こういう時というのは恥じらう顔でもなく、ただただ自然と柔らかい顔で身体から真っ直ぐに言葉というのは出てくるものです。
しばらく、お互いに恋人同士になった事実を確かめ合うように見つめ合っていたふたりでしたが…………やはりアリィが持ちませんでした。
「……///。」
照れてしまいました。急に恥ずかしくなってきてしまったのです。
「……ケ……ーキ食べませんか?!?!」
「ロイ。あちらのケーキも気になります!」
「こっちも!」
そして照れ隠しでケーキを沢山食べてしまいます。
ん?……純粋にお菓子が好きなだけかも知れませんけどね。照れてなくても恐らく沢山食べていたでしょう。
『社交の場ではこんなに食べていられないですからね!!』
「はは!アリィ。焦らなくても今日はいつでもゆっくり食べれるぞ!」
『本当に可愛いな。照れてる。照れてる。ははは。』
ロイはロイでついに……長年片思いしていたアリィと晴れて恋人になれて、顔が緩みっぱなしです。
Sクラス以外の方々は、普段のロイからは想像がつかないからでしょう、ロイの笑顔を初めて見た女性生徒は頬を染めている方もおりましたが、驚きで誰も近寄っては来ませんでした。
まあそれだけでなくふたりからは、あまあま甘過ぎ~な空気が漂ってきていますので見ている側が恥ずかしくなり誰も近づいて来ないとは思いますが。
ですので、誰にも邪魔されることなくふたりでケーキを食べながら人物観察をして楽しんでいました。
ダン先生はミーサとお酒を楽しんでいますね。どうやら来賓席へ行かなくて良いので御満悦のようです。
「ダン先生ただの飲みに来た人になってませんか?」
「ああ、ミーサが飲み屋のママみたいだな。」
カミーユとソアラちゃん、マリーとギールくんはダンスフロアにいます。
「しかし……カミーユとマリー顔が緩みっぱなしだな。はは。」
「そうね。でも良いではないですか!ずーーーっと楽しみにしてきたのですから。それに--。」
どうやら今はいつも嫌と言うほどダンスをしている貴族達は簡単な曲と言うこともあり、ほどんど踊っていません。
視察団の方々も今は皆さんで団欒されていて一般の生徒ばかりですのでダンスのペアは変わらないで良いみたいです。
ですのでパートナーの方とずっと踊っていられるようですね!
ルーイ様とピアは…………窓際ですか。
「なんだかいつもより仲が良さそうですね。」
「そうか?……というか、あのふたりいつもの堅苦しいパーティーじゃないからか物凄いゆったりしていないか?」
「ええ。のんびりと、お料理やお菓子並べて……お酒をいただいていますね。」
あの様に公の場で人目を気にせず自分達の時間を楽しめているおふたりは初めて見ます。
「ふふ。楽しそうです。」
「そうだな!」
「ノノアは~??」
「ああ、……あれ?どこ行った?先程までミーシャに振り回されんばかりの勢いで踊っていたと思ったんだが?」
ふたりで探して見ると……………………。
「あ!いたぞ!」
「ドコですか?!」
居ました。おふたり一緒です……あら?ノノア?どうしたのでしょうか?
ミーシャの前に立ちふさがるように立っている……様に見えるのですが…………。
「ロイ!」
「ああ!行こう!!」
私達は全力でノノア達の元へ向かいます。
「やはり----。」
「アリィ!急ごう。もうすぐだ!」
ロイが手を引いてくれているので人混みにもかかわらずスルスルと抜けていけます。
『急がなきゃ!』
※※※※※
「何よその新しいデザインのドレス!」
「……何なんですか貴女方は?!」
「キースさんには聞いていませんわ!私はそこのBクラスの女に用事があるのですよ!」
「……だから、退きませんよ。僕のパートナーに何の用事です?」
穏やかなノノアが眼鏡の奥から鋭い目を向けています。
「うぅ。」
ノノアの威圧に一度は押された女性やその周りにいる取り巻きらしき人達。やたらと高価そうな豪華なドレスを着ています。
ですが、すぐに持ち直してまた声を上げて詰め寄ります。
「出て来なさいよ、そこの女!」
「ノノアくん、私話す……。」
「……ミーシャ、出てくる必要はないよ。僕の後ろにいて!」
ノノアは必死にミーシャを隠します。
「く……。貴女が着ているそのドレス。どう考えても一般の方が買えるようなドレスには見えませんわ!」
「そうです!その上質な生地に、素敵な新しいデザイン。そんなドレス見た事ないんですけど!」
取り巻きも参加してきます。
「Sクラスにいらっしゃるシアード伯爵家のお嬢様と大変仲が良いそうですわね?」
「ああ~!上手く言い寄って買っていただいたんじゃないんですの~?!?!」
何だか非常に嫌な物言いのお嬢様達のようです。
「このドレスは!買ってもらってなんか!な……。」
「上手くやったわね~!一体どこで仕立ててもらったドレスなのかしらね~。」
「本当騙すなんて性格悪いわ~!ほほほほほ~。」
ミーシャもノノアもいろんな言葉を浴びせられてもう、我慢の限界なお顔をされていますね。
--しかし、本当に限界なのはこの猛スピードでやってきたアリィです。
「----失礼致しますわ!」
ミーシャの前のノノアの前の更に前にズズいと飛び出てきたのは手を繋いだままの……言うなれば半分肩を抱かれたままのアリィとロイです。
「いよ!ノノア。随分格好いいな!」
「……そうかな?……ってそう言う場合じゃなくて。」
「大丈夫。俺らが喋らんでもアリィの怒りが大爆発するさ!」
はは。
ロイの言う通りです。
顔面は笑顔をむりくり作って、炎と大量の怒りマークを背負ったアリィが向き合っています。
「初めまして、アリミア・ディ・シアードですわ。こんなに賑やかにしてらしていかがしましたか?……明るくて気さくでとてもお優しい、私の友人になんの御用ですの?」
凄い勢いでやってきたふたりに一瞬驚いていた女性達ですが、さすがなかなかに図太い神経をしています。
「初めまして。クローネ・ディ・ライコスと申します。Aクラスですわ。」
ボスです!って雰囲気を醸し出してくるツンケンした女性です。
「それは、御丁寧にありがとうございます。それで--?」
だからどうしました?と先を促すアリィです。
『ボスって言うよりお山の大将気取りですね。』
「貴女があのBクラス生徒に買って差し上げたドレスですが、……上質すぎてあんな一般の子に似合いませんわ!」
「そうです!あんながめつい女は放っておいて私達とお話しましょうよ~!」
「ええ、その新鮮なドレスデザインのお話を聞かせてくださいませんか?」
「貴族でないと意味のないお話ですからね。ほほほ。私にもその仕立て屋をご紹介していただきたいですわ~!」
『大将…………。ピキ。』
次から次ぎへとポンポンポンポンよく言葉が出てきますね。
『あ。アリィ悪い顔になったな。はは。』
「ふふふ。そんなにドレスをお褒めいただきありがとうございます。…………ええ。教えて差し上げますわ!」
ふふ。
「仕立て屋は----私達ですわよ!」
「へ?」
「ちなみにデザインはマリーですわ!」
「そうよ~!」
手を振りながらマリーが現れました。一緒にギールくん、ソアラちゃん、カミーユもいます。
大将達「「「…………。」」」
「ふふふふ。ミーシャはですね、純粋にとても良い方なのですよ?…………ふふふふふ。貴女方の声が無駄に大きかったですので、先程の会話もここに向かいながら聞こえていましたが、…………随分な物言いでしたわね?」
ニヤリ。
大将達「「「…………。焦。」」」
「よくもまあ、私の大切な友人に酷い事を言ってくれましたね?ミーシャは貴族だとか何だとか、全くそういう事無しに私と仲良くしてくださるのですよ?貴女方みたいに邪な思いや計算などで私と居てくださるわけではないのですよ?」
にっこり。
「おわかりですか?」
ピキピキ。
「ああ。アリィがキレてますわ。」
「まあ、あんな事言われればそれはそうでしょう。」
「はははは!」
「ロイ~笑ってないでそろそろアリィを止めたらぁ~?」
「止めなくても良いんじゃないか?向こうから突っかかってたんだしな!」
ぐびー!
ピアとルーイ様。
ミーサとお酒飲みながらのダン先生。
「いや、先生は一応先生らしく止めたら?」
カミーユが言いますが。
「いや、アリィだから大丈夫だろ?」
ケラケラケラ。
と楽しそうに見守っています。
随分と楽しんでいたロイですが、そろそろ笑いもおさまったようです。
「はは!さすがだな!アリィ。」
「ええロイ。駄目でしたか?」
「いや、良かったぞ!」
ニヤリ。
ロイとアリィはこんな中でもずっと仲むつまじくいたのです。
肩はずっとロイが抱いたままでしたが、いつの間にかもう一方の手まで繋いでいました。
いつの間にかアリィ達の元に集まってたSクラス達は一塊になってこそこそしてます。
「なあ、あのふたりの雰囲気いつも以上にに甘くない?」
「なんか甘ったるいな~。」
「ハート飛んでなぁ~い~?」
「本当ですね!」
「本当にです~。」
「どうなってるの~?」
「……実はだな。」
「あのふたり--。」
ルーイ様とピアが皆に告げます。
「はー?!付き合ってる?」
「今かよ!」
「やっと?」
「やっとですか。」
それが聞こえたらしく、ミーシャとノノアも加わって本当なのかと皆さんに確かめます。
「アリィ~良かったね~!」
「……ロイずるい!」
「ミーシャ!ありがとう!」
「ずるいって何だよノノア。」
…………完全に取り残されている大将達……。
「さて、……まだ何か用事がございますか?お嬢様方?」
黒い笑い。
ぴゅ~。
「「「ほほほほほ。」」」
去って行きました。
「アリィ!よかったね~!」
「ええ、ミーシャありがとう!」
「それと、助けてくれてありがとう!」
ぎゅーっと抱き合うふたり。いつも通りの仲良しっぷりです。
「そして、ノノア!ありがとう!格好良かったよ~!」
「いえ、僕は----!!!」
アリィとのテンションそのままに、ぎゅーっとノノアに抱き付くミーシャ。
すぐに皆の話の輪に戻るミーシャですが、ミーシャの後ろには顔を真っ赤に染めて動けなくなったノノアが残されていました。
「……幸せそう……。」
「……ですね。」
「……ノノア頑張ったからな。」
「……ああ。」
「……でもぉ~。」
「……どうしますか?」
「……どうするー?」
「……見世物だな。」
「放っておけ!」
あんなにとろけそうなノノアは見た事無いです。ニヤニヤが止まらない眼鏡のズレたノノアはミーシャにお任せしましょう。
「皆を(ミサンガで)呼んだのは良い判断だったな!ノノア。はは。」
「そうですね。」
「……では、そろそろ踊っていただけますか?お嬢様?」
「はい!喜んで!」
ロイとアリィ。
そして、皆がそれぞれダンスフロアへ向かっていきます。
カミーユ、ノノア、ミーサもガーデンパーティーで何度も踊らされ、手ほどきを受けていましたのでこのくらいの曲ならばリードして踊れそうです。
「皆で踊るか!」
「ミーシャ!ノノア連れてきてね!」
「はーい!」
「しゃーねーなー。俺も少しはやらんとな~。」
ダン先生ものんびりし過ぎると校長に連れて行かれますからね。
※※※※※
来賓席からそんなSクラス達を見ていた視察団達。
「あ!あの子。」
「あのふたりも!」
「Sクラスと仲がいいのか?」
「って事は…………。」
「…………はっ!!!」
どうやら校長先生も思い出したようです。あの3人がここ最近Sクラスと鍛錬し始めたと言うことを……。
「なる程。」
「鍛錬でも一緒にしてたのかな?」
「まあ、そんなところでしょう。」
お父様ズは理解したようでした。
「今回の視察では、1年生はSクラスとあの3人ですね。」
「そうだな。」
「正直他が目に止まらないくらいの差があったからな。」
魔法をあまり得意としない騎士団長から見てもそう思ったようです。
これにて視察&パーティーは終了ですね!
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ルーイ様の指摘。
「ロイ、あんなにさらっとした告白で良かったのか?」
「いいんだよ!何かの流れで言わないと!……~~~~勢いって大事だろ?ちょうど指輪も出来上がったからな。」
ちょっとムスーッとしているロイです。
『なかなか勇気がでなかったんだな。まあ、ずっと秘めてた思いだものな。』
ふふふ。
「何だよー!」
「いや。それより今回もペアのドレスとタキシードだったのだな。」
「ああ。こっそりマリーに頼んでおいたんだ。…………綺麗だったなー。///。」
「ああ、手作りとは信じられない出来だったな。」
「俺さ、……本当はもっと言おうと思ったことあったんだけど、アリィが綺麗過ぎて……。」
『ああ、あのさらっと告白はアリィに魅入ってしまっていたからだったのか。…………ん?』
「ロイお前、今度からは真っ先にアリィにそう言う事は伝えた方がいいぞ!先にプレゼントを渡していただろう?」
「……………………あ!」
「まあ、プレゼントを渡したくて緊張していた上に、アリィに目を奪われていたようだから仕方ないとは思うが、アリィ達一生懸命作ってたみたいだぞ?」
『自分でいっぱいいっぱいだったー!!』
「あ~あ、女性は真っ先に着飾っているのを思い人に褒めてもらいたいものだぞ!」
「…………。」
しばらく落ち込んだロイだった。




