視察団
「なんだ~?あの校庭でのんびりしてる奴ら。」
「ああ。彼等が今年出来た特例のSクラスですよ。」
視察団一行が魔法学園へやってきました。すでにHRも終わっている時間でしたので、Sクラスはいつも通りに校庭へ出てきていました。
庭園でないのは、視察団全てにSクラスの内情を明かせるわけでは無いからなのです。
「ルルシア校長、良いのですか?いくらなんでも野放し過ぎませんか?」
「ですが、彼等は通常の2年分の教育内容は教科書を読破して理解しておりますし、普段の研究も熱心です。校庭でのあれも----。」
「まあ、後で実際に見た方が早いですな!」
がっはっは!
この方は少し気が短いようです。--しかし、豪快な笑い方ですね。
「……まあ、騎士団長の仰る通りですな。」ははは。
「……。」『エルメイ……。』
「……。」『ロイヤード……。』
「……。」『アリミア……。』
当然ながら国の視察団ですので、軍部の筆頭は軍総司令のワイマール・ディ・ブロンクスこと、ルーイ様の御父様です。
そして、騎士団長、騎士団副長、魔法師団長、魔法師団副長が軍部視察団としていらっしゃいます。
魔法に精通している3名の御父様ズは、それが魔力を鍛えているのだと遠目でも解りましたが……詠唱魔法を、しかもあまり魔法が得意でない方からすると……校庭でのんびりとティータイムの用意までしている……日向ぼっこ集団にしか見えません。
しかも……ダン先生はいつも通り転がっていますし。
「「「ダン先輩……。」」」
ボソボソ。
『ダン~~~~!!!怒。何かさせておけば良かった!今はまだ我々が来ないと油断しているな~!!!』
そして軍部以外の、行政長官、事務総長、その他には国立図書館司書長や、王都でも有名な商家、有名店のオーナー、発明家なども来ています。
将来の有望株を見つけるという意図もありますので、優秀な人材を王宮や王都の各店で雇用後に更に成長させてくれる場所のトップが視察団としてきているそうです。
※※※※※
「視察団の方々がいらっしゃいましたね。」
「早速、1年生のCクラスかな?」
「私達の所へは午後らしいですわ。」
「では、午前中はのんびりしましょうか。」
「そうだな。」
ドゴン!
ドドン!
「ん?何か壊れたか?」
「……そんな音ですね。」
「実習室の方ねぇ~。」
※※※※※
視察団「「「……。」」」
視察団は少し違和感を覚えながら次のクラスへ来ていました。
「……次は1年生Bクラスだな。」
「また、一斉に火の魔法をお願いするよ。」
軍総司令からの指示を校長先生が担任へ伝えます。
「先生。」
「はい、校長。」
「では、一斉に詠唱開始して
向こうの的へ向けて放つように。……始め!」
1年生Bクラス皆「「「灯せこの手に。燃えよ強く。イケ!」」」
ボン!
ぽん!
ぼふん!
ボン!
ぽん!
ボン!
ドッゴーーン!
ボン!
ボボ!
ボン!
視察団「「「……。」」」
視察団「「「……何だあの子は?」」」
「……………………へ?」
あの子と呼ばれた本人も自分の詠唱魔法の威力に驚いていました。
「……先程もCクラスに威力が他の子と違う子がいましたな。」
「ええ、……確かふたり。」
「校長、後程その生徒達の名前を教えてくれませんか。」
「……ええ、解りました。」
校長先生も担任の先生も内心は困惑していました。このような生徒がいる報告は有りませんでしたし、実際合同演習ではつい最近まで他の生徒と同様だったのですから。
……最近は視察とパーティーの準備で忙しく、またそれにより授業も課題用紙の提出ばかりで実技がなかったですからね。
1年生Bクラス皆「「「???」」」
ひとり他より強力な魔法を放った生徒も、Bクラスの皆さんも何が起きたのかすぐには理解できませんでした。
「もしやAクラスにも…………。」
1年生Aクラス--。
皆「「「灯せこの手に。燃えよ強く。イケ!」」」
ボス!ポス!ポス!ボフン!……。
視察団「「「…………ん?」」」
1A皆「「「ん?!」」」
疑問符が飛びまくっている視察団に、それを見た1年生Aクラスも「どうしましたか?」と疑問符を飛ばし返す形になっております。
妙な空気が数秒間----。
「……いや、ありがとう。失礼するよ。」
視察団は不思議に思っていました。Aクラスには特に目立つ様な生徒が居なかったからです。
「…………すんごい普通だったな。」
「いや、むしろさっきの子の魔法の方が強かったんではないか?」
「……どうなっているんだ校長?」
『私を見られても!!私だって驚いているんだー!』
「何故あの子だけ?」
「いえ、その前のふたりだってAクラスより魔法が強くなかったか?」
「……どうなっているんだ?」
クラス分けはつまり実力で分けているものです。
視察団の方々は、今年の試験で何か問題でもあったのかと考え始める方も出てきました。
「校長先生。各担任から報告が来ました!」
「ありがとう。報告を頼む。」
「はい!先程の生徒達の名前ですが、ミーシャ・レーベル、ギール・シャルケ、ソアラ・ルーの3人です。…………しかし、……。」
「なんだ?」
「あ、……いえ。やはり、……合同演習までは他の生徒と特に変わりはかったそうなのです……。」
皆「「「……へ?なんだって?!?」」」
ダン先生はいつも通りさらっと報告していたのですが、校長先生は多忙で忘れていたのです……ここ最近、Sクラスと一緒に鍛錬をしている生徒達がいることを。
※※※※※
「この後は2年生を回ってSクラスへ来るそうです。」
そう他の先生から連絡が来ましたので移動する事にしました。
「お前達は……練習場だな。」
合同演習前に、魔法練習を行えるように安全設備を整えましたからね。あの場所でしたら安心です。
今回の視察について、ダン先生から言われた事がございます。
練習場へ行ってから魔法を見せること。(これは他の場所では耐えられないからだそうです。)
「視察団の軍関係者は国の武力機関だから、一応今日いらっしゃる方のみにお前達の報告がいっている。まあ、だから思いっきりやっていいぞ!」
との事です。
その後にいらっしゃる軍部以外の方々の前では……どの程度でやっていいか、軍総司令様の判断を仰ごう……とダン先生は言いました。
「正直どの程度お前等の力を見せていいのか解らんからな!困ってるんだ!はっはっは!」
皆『『『……人任せだ……。』』』
※※※※※
視察団が来ましたね。
『げ……御父様。』
『あ!御父様です。』
こっそり手をフリフリ。
『御父様……やはり来られましたか。お忙しい人ですね。』
一方御父様ズサイド----。
『息子を視察に来る日が来るとはな……。』
『ロイヤード……やり過ぎるなよ。』
『アリィ~!!』
やはりシアード親子はいつでも自由なお人達のようです。
それぞれの心中はさておき、視察とは何をしたらよいのでしょう。
「では、火の魔法--……。」
「待ってくれ!軍総司令様。」
「ん?何だ?騎士団長?!」
「こ奴らだろう?!朝来た時にのん気に御茶会していたのは。」
「いや、あれは鍛……。」
「だからな、お前等の全力を見たい!」
御父様ズ「「「へ?!?!」」」
「ん?どうしました?軍総司令様?魔法師団長?魔法師団副長?--ああ!お子さん達でしたかな?」
「いや、子供かどうかの話でなくてですな……全力と言うのはちょっと……。」
「何か問題ありますかな?ないですな?--私も報告は聞いているが、本当か怪しいと思っててな!がっはっは!」
御父様ズ『『『…………ピキ。怒。』』』
怒りが沸き上がってきた御父様ズは、ササっと練習場を見渡します。
地面……壁……空……。
御父様ズ『『『まあ、ここは良くできている様だから大丈夫だろう。ははははは。』』』
一瞬でこの空間の完全設備--もとい、防御魔法等--を確認できる実力はさすがですね。
「よーーーーし。では、それぞれ扱える魔法で一番難易度が高いものを全力で放ってもらおう!」
「それで良いですかな?騎士団長?軍総司令?」
ニヤリ。
「魔法師団長!--まあ、私も見てみたいような。」
ニコ。
「ふふふ。良いですよ。」
ニヤリ。
「ああ!良いぜ!」
カカッ!
騎士団副長だけが心配そうにオロオロしておりますが……上司達には意見できないようです。
「では、参りましょう!」
順番に行きます!席次順と言うことですので、ロイが最後ですね。
‘’ピッ!
【水柱】
バシャーーーーン!
大量の水柱が奥の壁に当たり……波になって返ってくる!
‘’ピッ!
【爆炎】
ゴォーーーー!
練習場のド真ん中いっぱいに炎が広がり迫ってきた水がみるみる蒸発する。
‘’ピッ!
【暴風】
ビュオーーーーー!
蒸発した水蒸気を一気に吹き飛ばす。
‘’ピッ!
【白炎】
ボウン!!!!
練習場のド真ん中に白い炎が燃え上がり、端にいるはずの視察団が思わず手で暑さを防ごうとする。
‘’ピッ!‘
【岩山】
ガゴン!!!
白炎のすぐ後ろに超巨大な岩山を作り上げる。
‘’ピッ!
【水の弾丸】
ド!ド!ド!ド!ド!
白炎を残して岩山を小さくしていく。
‘’ピッ!‘’ピッ!
【炎の弾丸】【氷柱】
ド!ド!ド!ド!ド!
白炎を残して更に赤い玉と氷柱が岩山を小さくする。
‘’ピッ!‘’ピッ!
【収束】【レーザー】
「イケ!」
白炎のド真ん中を貫き、全てが消滅した。
Sクラス皆「「「……あれ?威力増してない?!?!」」」
「でも、最近は身体を使ってばかり……。」
「……でしたわね。」
「体力?!」
「関係あるのですね?!」
「……知らなかった。」
魔法の威力が増していました!どうやら体力面が増えた事でより多くの魔力を扱える身体になったようです。
ロイは光魔法がほぼ収束の過程がいらない程になっていましたし、アリィは起動の速さが増して炎の弾丸と氷柱をほとんど同時に起動できました。
--全力でやって良いと言われると、本当にこのふたりの好奇心が収まりませんね。やっていいなら試しにやってみましょ~!とさり気なくまた凄いことを……。
「なんだこの災害みたいな魔法は?!?!」
「本当だったというのか?!?!」
御父様ズ「「「おおーーーー!!!」」」
「「……………………。」」
騎士団長と騎士団副長は石化がヒドいので後で御父様達に連れて行ってもらいましょう。
「さすがだな!」
「ありがとうございます。」
『ひえ~!前より威力増してないか?!』校長の内心は冷や汗だらけです。
「あの、軍総司令様。」
「何でしょうか?ダン先生。」
「いえ、……次の視察団の方々にはどこまでの魔法を見せれば良いでしょうか?」
「……!ああ。そうですね。………………で、良いでしょう。」
「畏まりました。」
※※※※※
「ああ~。うちの娘が……エラいことに……。」
「大丈夫かー?レーベルさん。」
「あ……ああ。」
視察団2陣で参加しているドランク・レーベルは驚愕していました。少し前に見てきた1年生Bクラス……つまり娘の魔法の威力を目の当たりにして、その後もずっと困惑していたのです。
「あ!おじ様~!!!」
「あ!アリィちゃん!」
「久しぶり~!」
アリィを見つけてドランクも少し落ち着いたようです。
なんと!視察団2陣には、国の中枢機関と王都の有名店オーナーなどの中に、図書館司書長=ノノア父、シルク・デザイン=マリー祖母、ルモンド商会=カミーユ父、薬屋フレイン=ミーサ父、レーベル・ハット=ミーシャ父……がおりました。
「……身内……。」
「……視察団1陣を含めると、全員じゃないですか。……今日は授業参観ですか?」
「おい!アリィ、終わってからにしろー!お待たせしちまうだろー?」
気付いたら視察団2陣の方々もお揃いでした。ダン先生の言うとおり、お待たせする訳にはいきませんね。
「はーい!」
「じゃあ、軍総司令様の仰ってたように頼むぞ!」
Sクラス皆「「「はい。」」」
‘’ピッ!×8
【竜巻】×8
ゴォーーーー!ドゴーーーーン!!!
練習場いっぱいに吹き荒れる暴風。
軍総司令に相談した結果、
「竜巻くらいにしておきましょう。」
……と言われましたので、全員で一斉に魔法を発動しました。
視察団2陣「「「……。」」」
「アリィ~ちゃ~ん……。」
ドランクさんはまたの規格外の魔法に力を無くして座り込んでしまいました。
他の親族も驚いていました。
「マリーや……。」
「ノノア……。」
「カミーユ……。」
「ミーサ……。」
「「「「強くなったなぁー。」」」」
--違いましたね。--喜んでおりました!
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気づいてしまった2年生。
「1年生の後、2年生だよな?」
「ああ。」
「1年Sクラスの後、2年生だよな?」
「ああ。」
「俺ら目をかけてもらえないよな?」
「ああ。」
「順番入れ替えて貰おうぜ!!!」
「ああ!」
2年Aクラス皆「「「今すぐ職員室行こう!」」」
合同演習から帰って来てから、アージ達に詳しく聞かされていたクラスメイトは、Sクラスの実力を正しく理解していました。
この結果、Sクラスの視察は最後に回されていたのでした。




