クラスメイト
せっかく昔一緒に魔法練習していたロイとの事を思い出したというのに、ロイはまだ悲しんでいるように見えます。
まだ何か忘れているのでしょうか?
何だかまだお話するべきだったとは思うのですが、そんな所でパタンと入り口の扉が開き先生らしき人が入ってきました。
自然と生徒は適当な近くの席につきました。
「おー。Sクラス担任のダン・ボルトンだ。」
健康的なハキハキとした男の方ですね。
「「「よろしくお願い致します。」」」
「今日のHRはこのクラスについてと、それぞれ自己紹介だな。」
そう言えばまだ他の方とはご挨拶もしていません。まだきちんとお礼も言えていません。
「先程校長からも説明があったと思うが。まず、このSクラスは今年設立した。特例のクラスだ。皆無詠唱で魔法を使う者を集めた。これには理由があるのだが――――。」
※※※※※
今まで学園では詠唱魔法をベースにして魔法の様々な種類や使い方などを教えてきた。
どのような魔法があるのか、調べ、知り、試す。と言った感じだ。
だが、そもそもベースが無詠唱魔法だと大前提から変わってくる。
なぜなら魔法の発動が詠唱ではなく思いを魔法へ変換しているからだ。
なので言葉が決まっている詠唱魔法に比べ、無詠唱魔法は無限大の可能性があるということ。
そして、ベースが違いすぎて学園の教材の意味があまりない。
という。
※※※※※
「なので、一週間事にテーマを変え研究をする。というのがこのクラスの学園での勉強ということになった。」
「あ!ちなみに最初の一週間だけはテーマを決めてある。」
【この学園の教材と授業を見る】ことだそうだ。
「先生。それはあまり意味はないとお聞きしたばかりですが。」とルーイ様が発言します。
「ああ。そうは言ったがおまえ達の事を少し調べると、割と幼少から無詠唱魔法を使ってきた者がほとんどだ。なので、詠唱魔法というものと、魔法の種類なんかを見ておくのもいいかと思ったんだ。」
なるほど。と皆さん納得されていますね。
私もその方がいいです。魔法というものを全然知らない私ですから、普通に使われている魔法を知りたいです。
先生が生徒を見回して、どうやら良さそうだな。と確認すると、さっさと話を次に切り替えました。
「じゃあ次自己紹介。」
「どうせならこれ、魔力順にしてもらうかな。」
と言っています。
「魔力順?」
と私が疑問系で聞くと、
「ああ。魔力量の順位だな。人には使える魔力の量に違いがある。適性試験の時水晶を持たされただろう。アレ。それで魔力量測定してたんだな~。」
へぇ~さり気なく視ていたんですね。
「それの多い順番に自己紹介してもらうぞー!何か一言くらい言えよー!」
ということになりました。
「じゃあ、一番手。ロイヤード・ディ・オルビン。」
「はい。皆さんよろしくお願い致します。ロイと呼んでください。」
へぇ、ロイが一番魔力が多いのですね。
「意外です。」
と私がボソッとつぶやくと、隣でルーイ様が、
「ふふ。普段の口調は軽いですからね。さすがと言うべきか。あいつの父親は優秀な魔法師団長ですから。」
と教えてくれました。
そうでした!オルビン侯爵様は魔法師団長でしたね!
「私は自分の魔法の使い方や創造性を広げられるように学んでいきたいと思っています。」
何やら目が合いました。なんでしょう。
「そして----この学園生活で、大切な人と過ごせることを大変楽しみに来ました!」
なんだか中身は熱血なのですね。きっと俺みたいに一生懸命学べと言うことですね。そして大切な人と過ごしたいとかちょっと恥ずかしいことを人前で言えるのは、真似はしたくないですが尊敬します。
ルーイ様とは反対の私の隣の席に戻ってきました。
何やらこっちをまた見てきたので
、『わかったか?』って事ですね。
私は『オッケーです!』と目配せして、
「ロイの大切な人との時間は邪魔しないように気をつけますね。」
としっかり伝えておきました。
バッチリです!キラン!
――――。
――――?
「ロイ?」
ロイが固まってしまいました。
どうしたのでしょうか?
と、同時にまたもやルーイ様が笑っておられます。
もはや大爆笑です。
訳が分からず周りを見渡すと、
先生以下全員が私を見ています。
そして、その目線はロイへいって。
「私達にはわかったわよ。」
「ロイ君は頑張ったと思う。」
「普段が無愛想。おっと、クールに見えるだけに驚きましたけどね。」
「……応援します。」
「わかってもらえるように願っています。」
「ん~ああ~。ロイ?悪い。先生でも突っ込めん。」
「はははははは。まあ、お前の本気は伝わったさ!」
?
まあ、何やらよくわかりませんが終わったようですね。
次はどなたの番でしょうね~。
と先生を見ます。
どうやら伝わったようです。
「あ~。次な!」
先生は手元の手帳を見ます。
「次は~。」
「あ!」
「アリミア・ディ・シアードな!」
先生大爆笑です。
ロイ以外の全員も。
何の笑いですかね~。
またもや、ついていけてないような。
『……って、え?!』
私でした!
「私が二番手ですか?」
「ああ。そうだ!」
う――?
とりあえず前に出ます。
「先程は皆さんありがとうございました。」
ぺこり。
「アリミア・ディ・シアードと申します。アリィと呼んでいただきたいです。」
「私は魔法をよく知りません。とても平凡な私ですが、足手まといにならないように頑張りますので一緒に研究させてください。」
ぺこり。
「よろしく~。」
「でもきっと平凡じゃないわよ!」
「そんな事ないですよ~。」
と、言うと
「「そんなことはあります!」」
と何人かに一斉に言われてしまいました。
ビックリです!今日はよくわからないことばかりですね~。
「ああ、魔法実習をすればわかるさ!」
と先生も。
う~ん。
まあ、とりあえず自分の番は終わりましたしね。
「次、ピアース・ディ・ハノア!」
「はいはーい。ピアって呼んでくださいね。私は作ることが好きなの。新しい物をみんなで創りたいですわ。」
あの時ルーイ様の後にすぐ出てきてくださった金髪桃眼の明るい女の方ですね。小柄で可愛らしい方ですが、ちょっと悪戯な感じが魅力的ですね。
「次、エルメイ・ディ・ブロンクス!」
「只今、ご紹介に預かりました。ルーイとお呼びください。実は魔法より剣の方が得意ではあるのですが、いろいろと楽しそうなのでこちらに来ました!よろしく。」
えーーーー。楽しそうだからですか。変わっていますが、ここに居ると言うことは多才なのでしょう。
「次、ミーサ・フレイン!」
「はぁ~い。ミーサです。実家が薬屋なのもあり、薬に興味がありま~す。よろしくね~。」
!!すごいです!!
ボンっ!キュっ!ポンっ!ってやつです!
ナイスバディーです!
是非とも教わりたい!(←何が!)
「次、ノノア・キース!」
「……はい。ノノアでお願いします。本を静かに読み続けたくて、気づいたら無詠唱魔法になっていました。……よろしく。」
余程本が好きなのでしょう。だから少し長い髪を後ろで纏めた、メガネスタイルなのでしょうか?きっと目は読み過ぎて視力が落ちたのですね。凄く知識がありそうです。
「次、マリアナ・ディ・シルク!」
「はい!マリーとお呼びくださいませ。」
すらっとしていてかっこいいなと思った女の方ですね。
「えーっと、趣味は洋服作りです。よろしくね。」
えー!!!意外でした!
外見は高めのポニーテールが似合うお顔もきりっとしていらしてかっこいい方でしたが、
中身が女子~☆です。後半は話し方まで違いました!
ギャップ萌ですね。
「次、カミーユ・ルモンド!」
「はーい。女の子が凄く寄ってきてくれるけど、一途だよ~。魔法はかなり真面目にやるからねー!」
『『……。』』
「なんたって凄く努力して、モテるために無詠唱覚えたのだから!」
……。――――うん。
『コイツ実は凄く真面目だ!チャラくない。』
『ですね。』
『ですわ。』
声に出さずとも全員一致です。
やっと皆さんの御名前をお聞きできました。この8名で2年間過ごしていくのですね。
とても楽しみです!
「――――次!」
全員「ふえ?次?」
いや。もう全員終わったはず……。
「俺!」
全員「俺――――!??」
全員『普通先生は最初の挨拶くらいでしょーが――!』
「ダン・ボルトンだ!ダン先生でいいぞ!ちなみに俺は生徒側のつもりで参加する!面白そうだからな。良かったー!このクラスで。授業で教えるとか向かないんだな俺!ああ。ただ必要な許可とかはとるからなー!」
全員『……。先生が一番やばそうだ(ね。)。』
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ふぅ。何だか濃い初日が無事に終わりました。
もう内容が濃すぎたのでもうお腹いっぱいという感じですね。
皆さんも帰るようです。
すると近づいてきたロイが弱々しく
「一緒に帰ってもいいか?」と聞いてくる。
私は先程の話の続きも気になりましたので
「はい。そうしましょう。」
とお答え致しました。
予想外だった?のか目を大きく開きパチパチと瞬きしていますが、
『ものすご~~~く嬉しそうですね。ロイから声をかけてきたのですよ?そして……。』
「何故みなさんは微笑んでらっしゃるのですか?」
なんだか全員に見られています。しかも『微笑んで』とは言いましたが、ニマニマしています。
「また明日!」
と凄いスピードで誰もいなくなりました。
「私もロイについて行こうかな~。と今さっきまでロイとじゃれていたはずの、ルーイ様までがじゃあ私も!」
と言ってもういません。
あっという間にロイと二人です。
「帰ろうか。」
と言われましたので、
「はい。帰りましょう。」
とロイと学園を後にします。
試験の日こそギリギリまで集中していたかったので馬車で来ましたが、今日みたいな日は普通に徒歩です。
この国の貴族は家と領地では貴族だなという生活をしていますが基本相当な有力者でない限り近辺の外出は一般の方と変わらない生活をしています。
この国の貴族は階級とか平民とかで人を判断したりはしない方ばかりなのです。
ロイと帰るのは楽しいです。
昔の話をして懐かしんだり、お互いに忘れかけていた記憶を呼び戻して楽しみました。
そうしているうちになぜこんなにも忘れていたのか。とも思いました。
「ロイ。ごめんなさい。」
急に言われたロイは少し驚いています。
「アリィ。どうした?」
「私ったら、ロイの事を長く忘れてしまっていました。こうして話すと昔はとても楽しく会っていたのに。」
沢山記憶を思い出す度に、しょぼーーんです。
「いや、いいさ。ここ数年、会ってもいなかったのたから。」
「でもー。」
「もう、いいよ。その代わりさ、これから沢山話たい。一緒の時間を沢山過ごしたい。」
「ありがとう。そういってくださるととても嬉しいです。」
「だからこれからは一緒に帰ってもいいかな?他に用事がある日もあるだろうけど。できれば朝も///(←テレテレ。)。」
それは……!
通学中も楽しそうです!
「はい。是非ともお願いします。」
とても有り難いので嬉しいです。にっこり。
――――なぜでしょう。ロイが真っ赤です。
「ロイ……。」
『熱?(←違います。)と思い。』ロイにの頬に触れようとしたのですが、
「アリミア!」
と別方向から呼ばれてしまいました。
誰でしょう?声がデカすぎます。
うー?と大きすぎる声の主をちょっぴり不機嫌なまま確認します。
「あ。」
「誰だ?」
とロイ。
「いや~……――。」
と会いたくないひとがきてしまった~と思っていると、むこうからペラペラと話し始めました。
「ニコラルド・ディ・マデラだ。」
アイツです。今日も嫌みったらしいThe☆貴族スタイルです。
「私は用事はございませんが。」
そのまま通り過ぎようとしたのですが、
パシ!と腕を捕まれてしまいました。
「さあ、俺とお茶しにいこう!」
「はい?」
驚きました!凄い勝手です!
「私は行きませんよ!」
「何故だ?俺とお茶したいだろ。」
「興味ありません!」
いったいなんなのですか!確かあの時はささ~っとこの人が呆けているうちに逃げただけのはず。
「あの時は照れていたのだろう?」
えー!!!
「すごくポジティブな間違えです!」
逃げたい!!!
ジタバタしていると、
「おい!手を離せ。」
もんのすんごい低いロイの声です。
あ!怒ってくれています?自分勝手なこの人どうにかしてほしいです~!
「彼女に触れていいのは俺だけなのだが。」
ええー!この人も何言ってるんですか!この人もなかなか勝手な事言ってます~!
「とにかく。アリィには近づくな!」
あわわわわ。なんか魔法を練ってます~すごい迫力です~!
ペタンと。The☆貴族殿はもうロイの魔力と圧力に限界のようです。
静か~に少し下がると。
「今日~は帰るが今度はお茶の誘いにのってもらうからな!」
すさささささ~。
うん。とりあえず終わったようです。
『あ!今日これ2回目ですね。』
「えー。あのー。ロイ?」
は!元に戻りましたね。
――――落ち着いたようです。
「アリィ。送るよ!帰ろう。」
「はい!」
ロイに送ってもらって帰りました。
明日からいよいよ本格始動ですね!