ドキドキ昼休み
演習明けの今日は妙に1日の過ぎてゆく時間が長く感じます。
視察の件に関しては誰も気にも留めていませんが……ほほほ。……朝からパーティーの話や接近戦と魔法防御の話、それにまだ合同演習の時の話もこれから皆さんとお話しようと思っていますからなかなかに濃い日なのです。
「--あのハリネズミ……強かったですね。」
コーヒーと焼き栗を楽しみながら皆で合同演習の時の振り返りを始めました。
「ああ。強かった。」
「魔物自体が大きかったよな。」
「……大きすぎです。」
「もう、針じゃなかったよな。」
「一本一本が武器の様でしたわ。怖。」
攻撃を受けた時の事を思い出したのでしょう。ピアの顔が青ざめています。
「大丈夫ですか?」
いつの間にかルーイ様が隣でピアを支えています。
さらっと現れる辺りさすが紳士です。どんな能力なのですか?
「ありがとうございます。」
しかしピアを気づかうルーイ様を見ても、ルーイ様は普段から紳士っぷりを存分に発揮している方ですので、皆さんからするといつもの事なようです。誰も特に反応は無いですからね。……当のおふたり以外は。
「あんなに攻撃が強いとねぇ~。」
「……広範囲探索をずっとしていたのに気付けない隠蔽術……。」
「それに毒もあったようだな!」
「あんなのがいるとは思わないよな。」
「それに、遺跡の中の魔物達……様々な種類の魔物……それにあの数……。」
「途中あのハリネズミが纏っていた黒いオーラみたいなものから魔物が出てきましたよね。」
「ああ、間違いない。」
「……呼び寄せていたのでしょうか?」
「可能性はありますわね。」
「そうかも。あんなに濃いオーラを纏ってる魔物は見たこと無かったもんね。」
「そうねぇ。初めて見たわぁ~。」
「力のある魔物はあんな感じなのでしょうか。」
「俺が現役の時でも自然な魔物はあんなのいなかったぞ。」
謎は謎を呼んでしまいました。あのハリネズミは異常発生した魔物だったようですし、強い力を持っていました。
そしてその力で様々な種類の魔物を呼び寄せて数を増やしたのではないか?という皆さんの見解ですね。
しかしながら、そもそも何故あんなに強い魔物がいたかは全く解りませんね。
「……壁画の事については私達では解りかねますから、研究者のみ方々の見解を待ちましょう。」
「そうですね。あの絵の感じは気になりますが、仕方ありませんね。」
「あの絵……お城と、動物なのか魔物なのかわからない生物はどういう関わりがあるのでしょう?」
「恐いような、頼もしいような……そんな生き物でしたね。害が有るのか無いのか不明ですが、強そうでした。」
やはり皆さん受けた印象は概ね同じ様ですね。
学者様達にお任せしましょうとは言っても気になってしまうのが、アリィです。全ては解らなくとも何か似たものが無いか探してみても良いかもしれませんね。
過去に何かあれば文献に残っていそうです……今度少し調べてみましょう。
「……僕の探し物もあちらの方角のようです。位置も大方あの辺りらしいと解りました。」
「そうなのか?ならレイルム遺跡の近くかも知れないな。」
「……ええ。ですので今度またあちらへ行く時が来たら、あの湖森を拠点にして探索するのが良いのかと思います。」
「それは良いわねぇ~。あの場所ならひとまず食事の心配が無いですものねぇ~。」
いつまたニシール平原方面へ行けるかはまだわかりませんが、ひとまず合同演習の振り返りや今後の事は話し終えましたかね。
時刻を見るとお昼休みには早すぎますが……。
何かをするには半端な時間です。少し早いですが、ランチをしに行きましょう。
食堂には私達のクラスしかいません。
--早すぎたようです。
まあ、食べ終えた頃には他の生徒もお昼の時間でしょう。
……丁度良いかも知れませんね、このお三方には……。
ソワソワしたままも何とかランチを食べていました。
食べ始めは皆で、ノノア、マリー、カミーユが何と言って思い人に声をかけたのか?
相手がどんな反応をしていたのかなどを、興味津々で質問攻めにして無理くり聞き出していたのですが、…………3人共、食事が進むにつれて、段々と口数が減っていきました。
ノノアに至ってはもう無口ですね。
「「「……。」」」
『さて、どうなるんでしょうか。』
※※※※※
ランチを食べ終えても他の生徒は誰も来ませんでした。
--お昼休みは本来今の時間からですしね。
ですので、私達はお昼休みを校庭で過ごす事にしました。
鍛錬しながら少し魔法で遊んだり、雑談をして過ごしています。
しばらくそんな風に過ごしていたのですが、ついに----待ってた人物がやってきました。
「ノノア!遅くなってゴメンね~お返事しに来たよー!」
「!!!」
「……ミーシャさん!」
「朝はゴメン。移動教室でね、間に合うかギリギリだったから、慌てていて。」
「…………いえ。大丈夫ですよ。」
「しかもノノアが物凄い勢いで走って来たから驚いたよ~!」
『ノノア……正に全力疾走して頑張ったのですね。』
「……申し訳なかったですね。凹。」
「驚いたけどね。嬉しかったよ!だから、一緒に行こうね!」
にっこり。
「……へ?!」
「あれ?もう誰かと行く事にしちゃった?!?!」
「……それは絶対にありません!ミーシャさんと一緒に行きたいです!!!」
ノノア以外皆『『『おおー!』』』
密かに鍛錬してるふりをしながら見ていた皆さんや、雑談してるようで何を話しているか解らないほどふたりの会話に耳を傾けて聞いていた皆さんも、ノノアの声の大きさに驚いています!
「ふふ!ありがとうノノア!」
にっこり。
「……こちらこそ、ありがとうございます。」
微笑。
ノノア以外皆『『『おお~!ノノアが満面の笑みー!!』』』
「あ!でもひとつ約束してほしい事があるの!」
「……何でしょうか?」
約束と言う言葉に不思議な顔をするノノア。
「敬語禁止ー!あと、私の事はミーシャって呼び捨てでね!」
「……へ?」
「何かね、ノノアとは時々会って話したりしてるのにいつまでもそれはイヤなのよね。……約束してくれる?--ってひとつじゃなかったね!」
キョトンとしていたノノアでしたが、より一層ふわっとした柔らかい笑みを見せます。
「……ふふ。わかったよ。」
微笑み。
「うん!そうしてね!!」
良かったです。
ノノアとミーシャは一緒にパーティーですね!
平静を装ってますが、きっとノノアの脳内は今お誕生日と新年のお祝いが同時に来たかのように騒がしい事でしょう。
「あ!そうだ。ノノア、今クラスの皆いる?アリィ達にも用事があるんだ!」
「……うん、いるよ。」
「アリィ~!!!」
「ミーシャ~!!!」
ギュー!ギュー!
「演習で顔は合わせていましたが、こうやってゆっくりお話出来るのは本当に久しぶりですね。」
「そうね!また放課後デートもしたいわね~!演習行ってて…………って!ソレよソレ。危ない危ない!アリィとギューして忘れるところだった!」
「どうされました?」
「あのね、私も私なりに演習頑張ったの。でもね、やっぱり何とか皆で、どうにかこうにかって感じで……。」
ミーシャも問題なくBクラスの皆さんと演習を過ごしていたように思ったのですが、ミーシャ本人には何か思うところがあったようですね。
「……ですので!今日は皆さんにお願いがあります!----私に皆さんのような魔法を教えてくださいませんでしょうか!!!」
ぺこり。
皆「「「…………ん?」」」
これには全員予想外でした。
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ルモンド商会へお返ししたキャビン。
何だかやたらと強化されて返ってきたキャビン。
魔法を掛けるところを見ていたので、他にも機能が追加されているのは解るが、それはあの子達の様に無詠唱魔法を使うものにしか使用できない。
だが、有りがたいことにテーブルとベンチまでもが増えている!!
丈夫で快適な車内。
『まあ、使い道はいつも通りまた馬に引かせるから変わらないだろう。』
と、思っていた…………のに……。
--この数日後、Sクラスの家族から徐々にこのキャビンの存在が広まり、Sクラスの家族を中心に、いろんな無詠唱魔法使いからレンタル依頼が来るようになったのであった。
まさかの人気キャビンに!
こうしてルモンド商会の新しい商品が出来た。




