ルーイ様の異変
‘’ピッ!
【氷山】
‘’ピッ!
【岩石】
‘’ピッ!
【竜巻】
「イケーーッ!」
ルーイ様が一気に魔法を放つ。最後に放った竜巻がハリネズミを包みながら、先に産み出した氷や岩の塊を砕きながら破壊力のある竜巻を作り出す。
「もっと!」
‘’ピッ!
【竜巻】
さらに回転力を上げて、破壊力が増す。
「ちょっと待て!ルーイ!!」
どうやらこの暴風でロイの声は届いていないようです。
「ルーイはどうしたんだ?」
ロイは困惑していました。
こんなに取り乱して強い覇気を放っているルーイ様を見たことはなかったのです。
ふたりでハリネズミに向かって全力で走ってきました。
マリーの援護射撃も効果覿面で、ふたりが相手する数は少なくて済みました。
道中でてきた数匹の魔物は風魔法で左右へ飛ばしながら道を作ってきたのです。
そして、ハリネズミと対峙してその大きさと強暴そうな様子から、どこから攻めようかとロイは一瞬考えた。
その一瞬に、ルーイ様は迷うことなく魔法を放ち始めました。
連発して魔法を放った。
しかも、最近習得したばかりの上級魔法の連発----。
『魔力消費量が多すぎる!!!』
「ちょっとまて!ルーイ!!!」
ハリネズミを巻き込んだ暴風が巻き上がり--------数秒後……消えた。
「どうだ?」
一緒に巻き上げられた岩によって砂塵が上がっていた。視界が開けるまでに数秒……。
バシュ!
ドーーーン!!!
「何だ?」
ロイの周辺の視界はまだ悪い。だけど、嫌な感じがしたのです。
大きな音がしたのは……。
「ルーイの方向か!!?」
‘’ピッ!
【風】
砂塵を凪払うように手を動かす。
一瞬で視界が晴れてくる。
最初に見えてきたのは……。
「槍?……いや、針か。」
壁に投げ槍のような針が刺さっていた。----そして、針の下で倒れている人影をロイは見つけた。
「ルーイ!!!」
‘’ピッ!‘’ピッ!‘’ピッ!
風で瓦礫を飛ばしながら、最短で辿り着いた。
「おい!ルーイ大丈夫か?」
ルーイ様の意識はしっかりとあった。一安心--かと思ったが、様子がおかしい。
魔力の使いすぎでぐったりとしているのかと思ったが、よく観察力してみると頬に傷があり少し紫掛かっている。
「ロ……イ……。」
喋り方が重たい。
「毒物か何か--……。」
「ロイ!!!!!」
呼ばれた声にハッ!としたその時、眼前に巨大な岩が出現した。
ドゴーーーーーン!
そして、岩に何かが突き刺さるのはほぼ同時だった。
急に出現した眼前の岩から針の先が少し飛び出てきていた。
針の先から一滴の紫の雫が垂れている。
「ごめんなさい、ロイ。私の土魔法ですと、この大きさが限界でした。」
「いや、アリィ助かった。」
‘’ピッ!
ロイは縮小魔法をかけていた、異常回復軟膏を取り出してロイの傷口に塗る。
パァ----ッ!と光が傷に染み込むと、頬の傷口は癒えた。
「うう。あ……りがと……う。」
しかし、まだ少し動きずらそうなルーイ様。
「体内へも入っていますわね。」
‘’ピッ!
今度はアリィが赤茶色の絞りクッキーをルーイ様へ渡します。
「今一気に体内へは入れれないでしょうから、少しずつかじっていてください。」
縦に首を振るルーイ様。
さて、とりあえず無事なルーイ様を後ろ手に隠して、ロイとアリィはハリネズミを見上げてています。
さすがにルーイ様の攻撃に疲弊している様子ですが、敵意はまだ強くこちらへ向けられています。
「あの針、麻痺毒のようですね。」
「てか、ハリネズミって確か針飛ばせないよな?」
「毒も無いはずですよ。」
「魔物って何でもありだな~。」
ルーイ様の魔法のダメージからしばらく様子をうかがっていたハリネズミも、どうやら動くようです。
身体を丸めて前方向トゲだらけです。
「あれは魔物になってもやるんだな。」
「あちらも動いてきましたね。」
「…………?「も。」??」
「ルーイ?!こんな時くらい突っ込まないで休んでいろよ!」
「そうです!今動くのは禁止です!!!」
怒られたルーイ様は、自分を怒ったふたりの足元を見て微笑んだ。
「ルーイ!無事だな?」
「ああ、もう平気だ。…………さっさとやってしまえ!」
ふふ。
「ああ、存分にな!」
「任せてください。」
ニヤリ。ニコッ。
そう言うと、ふたりは足元に作り込んだ氷の槍のような氷柱に次々と魔法を掛けます。
「トゲにはトゲだ!!!」
「ですね!!!」
‘’ピッ!
【浮遊】
‘’ピッ!
【疾風】
「「いっけー!!!!」」
一瞬浮いた氷柱……そして、瞬間でスピードに乗って飛んでいく。
シュン!
シュン!シュン!
ドス!
バシ!
ドス!ドス!
バシ!
ドス!ドス!ドス!
向かってくる全面トゲボールに、着実に刺さっていき----。
…………勢いが、…………止まる!
それでもアリィは手を止めません!
「ロイ!今です!」
「ああ。」
‘’ピッ!
【収束】
イケッ!
ズドッ----!!
ロイのレーザーがハリネズミの脳天を通り抜けました。
ドスーーーン!
そのまま白目を向いて倒れた。
もう動かないようです。どうやら討伐できたようですね。
「ロイ!」
「アリィ!」
パンッ!
ハイタッチです!!
それから、ぐるりと向きを変え、ルーイ様の元へ戻ります。
「ルーイ!」
「ルーイ様!」
「お加減いかがですか?」
「もう、大丈夫ですよ!」
「まさか、もう薬を使う事になるとは思いませんでした。」
「俺、ルーイがあんなになるの始めてみたよ。」
「私もですよ。今更ですが、自分でも驚きです。ご迷惑おかけしましたね。」
「迷惑なんて何もありませんでしたよ。ふふふ。しかし、ルーイ様も感情的に突っ走る事があるのですね。」
「お恥ずかしい限りです。」
「いったい何がそうさせたんだ?」
「それは…………まだ秘密にさせてください。ふふ。」
「「???」」
意味深な微笑みのルーイ様にまだ質問しようかと口を開きかけたとことろで、……カミーユ達も討伐完了したらしく、合流してきました。
ピアも無事に回復したようですね。良かったです。
「ピア~!無事で良かった~!」
「アリィ!」
お互いにギューッとしました。
「良かった……です……。涙。」
「いや~、でも良くかすり傷で済んだな。良かったよ。」
「……傷は、ミサンガの力で消えましたしね。」
「そうですわね。……これは、ルーイ様の【願い】ですか?」
「そうですね。私は【皆さんが健康で、元気でいられるように。】と思いを込めました。上手くいっていたか解りませんでしたが、回復効果が働いてくれたようですね。」
ニッコリ。
「ありがとうございました。」
ペコリ。
「いいえ。私ではなくて、ピアを救ったのはアリィですよ。」
ふふふ。
「え?私ですか?!」
急に言われて驚きました。何故私なのでしょうか?
「やはり、無自覚でしたか。」
「何のことですか?」
「ピア、あの時飴舐めてませんでした?アリィの配ってた飴なのですが。」
「ええ。食べていましたわ。ずっと魔力を使い続けていたのでいただいていましたが、それがどうかしたのですか?」
「アリィがひとりひとりに祈るように配っていたのを覚えていますか?」
「ええ。覚えているわ。確か、飴を配るときに手を取ってくださって…………って……。え?!アレですの?」
「恐らくは。私は魔力が込められたような気がしていたのです。」
「…………。アリィ!ありがとう!」
知らずのうちにそんな事をしていたようでした。
「アリィ、飴を魔法道具化してたんだな?」
ははは。
「知らなかったですよ!まさかそんな風になっていたなんて!焦。」
ギャーギャーいつも通り騒いでいるSクラスとダン先生。その輪を少し外れて話しているピアとルーイ様。
「ですが、やはりルーイ様にはきちんとお礼を言いたいですわ。」
「え?」
「ありがとうございました。色々と気づいてくださったのはルーイ様ですから。」
ニッコリ。
「そうですか?では、どういたしまして。」
ふふふ。
それから何もいなくなった遺跡の中をしばらく探索してみたのですが、下へ降りる道は見つからなかった。
最終的に解った事をまとめますと、
どうやらこの地上部分の豪奢な遺跡はただの飾りのようでした。だって特に何かあるわけでもなく、只広いだけなのですもの!
しかし、際奥には少し広い部屋がありまして、その場所にだけは壁画があったのです。
「壁画?」
「所々見えづらい箇所もありますが……。」
「ここは、何なのでしょう。」
壁面には意味がありそうだが、他は特に目立つ物は見つからなかった。
「……とりあえず、壁画をよく見てみることにしましょうか。」
「そうね。」
壁画の絵は、だいぶ古い物のようです。かなり劣化が目立ちますが、解る範囲で読み取ってみると、…………。
お城?怖い目の魚?火を踏みつける獣みたいな絵に、黒いギザギザとした鳥、丸いものを持っている?蜘蛛、そして、爪の鋭い大きな……猫?
「お城を中心に、いろんな生き物が囲んでいますわね。」
「凶暴そうで怖いですわ。」
「しかし、これは何を現しているのでしょうか。」
一番目を引く壁画ばかりを見ていましたが、そのまま左右に目を向けると、木や水、花や動物など豊かな自然が描かれているようでした。
その中で……三角帽をかぶり、両手を組み空を見上げている人物が描かれている場所がありました。
「これは?」
「……魔法使いなのぉ~?」
「それっぽいよな。」
「魔法使いに何か関係があるのか?」
「…………ここはいったい何を遺した場所なのでしょうか?」
ここには文字などは見当たりません。他を調べてもこれ以上の壁画などは見つかりませんでした。
「……他にはないですね。」
「ええ。しかも、これだけ立派な作りなのに、地上だけ……。」
「いや、そんなはずあるか?この部屋の為だけの遺跡なわけがない気がするが。」
「地下があっても良さそうねぇ~。」
「……物は試し……てみましょうか?」
「どうするんだ?」
「……地下へ向けて【広範囲探索】してみましょう。」
皆「「「なるほど~。」」」
ノノアが地下に広範囲魔法を使う--すると、地下に魔力反応があったようです。
「……地下に魔力の反応が階層になっているようです。」
「どうやら、地下空間が存在しそうですね。」
「そう言う事になりますわね。」
「今の所、地下へ行く道は見つかってないですから--。」
「入り口は別にあるのかもしれないな!」
「隠蔽されていて私達が見つれられないのか?--それとも、別の場所に入り口があるのか?」
皆「「「…………。」」」
「何にせよ、今回はここまで--だな。思った以上に魔物の数が多かったが、お前達のおかげで一掃できた。直ぐに元通りとかにはならないだろう。」
一呼吸置くダン先生。見ると、今まで見た中で一番キリッとした表情をしている事に気づきました。
「皆、無事で何よりだ。本当によくやった!これ以上は、一度調査内容を持ち帰って依頼主に今後を決めてもらう方が良いだろう。----お前達、今後も気をつけろよ!特に、権力者にはな。」
皆「「「……………………。はい!」」」
美術館のような壁画の遺されていた遺跡。何かの歴史だったのでしょうか?
全然良く解りませんでしたが、これにて遺跡探索は終了ですね。
「ふぅぃ~~~!帰って美味しいご飯を食べたいです!」
皆「「「賛成!!!」」」
「俺は酒だーーー!」
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遺跡探索中のダン先生。
『いや、多くないか?魔物!』
『俺しばらく戦闘してなかったから辛いわ~。』
『しっかし、普段転がりながらアリィとロイ式の鍛錬をこっそりやっといて良かった~。』
‘’ピッ!
ドッゴーーン!
炎の爆弾。
「前はこんなに威力無かったからな。」
ボソボソ。
「ダン先生何かいいましたか?」
「いや。何でもない。」
ただ転がってただけでは無かったようです。




