ロイの思い
「アリィ!アリィ!」
ロイに両肩をつかまれて、何度も名前を呼ばれます。
どうやら、ボーッとして地面に座り込んでしまっていたようです。
皆さんは訳がわからずただただ見ています。
私が光につつまれ、その後ロイも光に包まれたので、私が何かまた魔法を使ったものだと思ったようなのです。
ロイを見上げて顔を覗き込みます。
「あなたがなぜ、ここへ来たいと言っていたのか。…………思い出しましたよ、ロイ。」
涙は止まりませんが私の顔は不自然さはあっても、笑顔を向けられているはずです。
ロイは、今までに見たことが無いほど驚いています。
「これを探していたのね。」
足元に一枚だけ残っていた花びらを拾い上げて見つめる。
「その花びら!」
やはり。ロイの探していた花だったようですね。
「ごめんなさい、ロイ。」
どうしたら良いのでしょう。どう謝ったらいいのか。頭を下げていてもこんなんじゃ全く足りないのに、これ以上の謝り方を知りません。
慌ててロイが私の頭を起こします。動揺しているのでしょう。起こしてくれている手は少し震えています。
「アリィ、まさか。……本当に?」
信じられないという顔をしていますね。それはそうでしょうね、もう何年も忘れていたのですから。
「私が忘れていたのね。」
「自分であなたとの大切な記憶を忘れてしまっていたのね。」
ロイはただ静かに、少し困ったような優しい眼差しで、黙って目の前で聞いてくれています。
「だから、私の記憶がなくなっていることを言わなかったのですね。」
ロイは反応に困っているようでした。私が泣いているからか微笑んでくれていますがまだ何も言いません。
皆さんは急な出来事で混乱していましたが少しずつ落ち着いてきたようです。
「え?アリィ、記憶がなかったって……?」
「私はここへ、来たことがあります。幼い頃に。」
「幼い頃?」
「はい。ロイと一緒に遊びにきていました。それで----見つけたのです。」
「もしかして、アリィ。あの花?」
「……見つけて、香りを嗅いでしまったのだったかな?」
「ルーイ様はご存知だったのですね。」
「ああ。ロイから少しな。」
そう言うルーイ様もロイと同じ様な何とも言えない困ったような優しい笑顔を向けてくれます。
「仰るとおりです。花の香りを嗅いでしまいました。そして……先程私はロイへ食べて貰う前に自分で味見をしていました。」
「それで、記憶が戻ったと?」
「そのようです。」
皆さんにも後で詳しくご説明させていただかないとですね。
ですが、それよりもロイです。
「ごめんなさい……ごめんなさい。それなのに……私は……忘れたままあなたと一緒に居てしまった。」
何も憶えていないままロイと過ごしてしまった。なんて酷い事をしていたのでしょうか。
「それは!!!俺が一緒に居たくてアリィと居たんだから良いんだよ!」
ロイはどこまでも優しいですね。本当になんなのでしょう、この人は。良い人過ぎます。
「本当にごめんなさい。ありがとう。」
「良いんだ。昔の事は俺が悪かったんだから。」
「それは、違う!私は昔も今も同じ事を!」
泣き続ける私の手をロイはそっと握ってくれます。
「ごめんな、アリィ。俺にもっと知識があれば、気づいてさえいれば、あんな事にはならなかったんだ。すまなかった。」
※※※※※
バンガローへ戻り、ロイとアリィは少しふたりだけでお話をする事にしました。
皆さんは夕食の支度をしていてくださるそうです。
「最近忙しそうにずっとしていたのはあのお花の件ですよね?」
やはりアリィがとても大切だ。
そう思ったロイ。密かにアリィの記憶を取り戻したいと動くいていたそうです。
「思い出さない方がよかったと思う記憶もあることも知っていた。」
ロイは優しい。そして強い。
小さい頃も今と同じ様にに守ってくれていたロイを見る。
----知らない。知らなかったこんな記憶。----
5、6歳くらいだったと思います。
いつも一緒に魔法を習い。
それ以外でも遊ぶようになった。
私の記憶になかったあの日、オルビン侯爵家の方と、シアード伯爵家皆で、オルビン家がたまに来るというフィランの森近くの別荘へ来ていました。
そしてふたりで森へ遊びに行ったのです。
私はロイのことが大好きでいつもロイにくっついていた。
そして、ずっと一緒にいることを願っていたのです。
だからあの日、
「大好きよ!ロイ!」
「ずっと大事にしてね。」
そう言いました。
「ああ。ずっと大事にする。」
ロイはそう言ってくれた。
子供ながらに交わした大切な約束。
私が忘れていたのね。私が好きといったのに。
その後、たまたまあのお花を見つけてしまったのです。
「見て~ロイ!綺麗な花です~!香りもとっても良い香り~!…………あれ?」
「アリィ!!!」
そのまま倒れて起きた時にはロイとの記憶がかなり消えていたようです。
※※※※※
「俺は、アリィの記憶を奪ったあの花の知識がなかった。もし俺が知っていれば止められたのに!ごめん!」
「ロイのせいではないですよ。むしろ私が自分で何度も。すみません。」
ですが、何故ロイはそこまで私の記憶を取り戻そうとしてくれていたのでしょう?
昔の事ですし、大きくなって、そしてしかも私は忘れていてもロイには支障がないというのに……。
「なぜ、私なんかのためにそこまで?」
すると、少し頬を赤らめたロイ。
「好きだと言っていなかったから。」
「自分でちゃんと伝えていなかったから!///。」
「へ?」
もう、真っ赤っかですね。本当にかわいい人ですね。
「今も昔も好きなんだ。」
もう、私は大いに泣きました!泣いて、泣いて、そして、すごくロイと笑いました。
「……無知とは罪ですね。私の軽率な行動で二度もあなたに大きな迷惑をかけました。そして、私はあなたに長年苦しい思いをさせてしまいました。」
「ごめんね。」
「もう、いいんだよ。」
ふふふ。
「あ~あ!俺のミサンガの思いも効果いまいちだったみたいだしな~。ずっとこの仲間といたいと願ったんだが、弱かったんだな。」
「ミサンガ?ですか。」
「ああ。あの花の名前を知らなかったから、対象を絞れなくてな。」
はぁ~と深くため息をついてます。
確か、ロイに勢いで魔力を送ってしまった時と金平糖が出来た時にミサンガが反応していましたよね。
「あ!やっぱりあの時のミサンガの効果!」
「そ!俺。もう忘れられるのも、忘れるのも嫌だったんだ。」
どうやらあの金平糖は、ロイの願いも混ざって出来た奇跡の産物だったようですね。
ロイの願い。
『最高の仲間とずっと共に。忘れないで欲しい。』
ふふふ。どこまでも本当に素敵な方です。
「お話終わった?」
「んもぉ~アリィがいなかったから、メインはバーベキューだからねぇ!」
「……僕らだけでは素敵な料理出来ません!」
「ふふふ。」
そして、皆さんが居てくださって本当に幸せです。
キャンプ最後の夕食も、Sクラスは楽しく食べています。
「しかし……金平糖って、ズレてたよな~。」
「しかも味見とか!」
「おかしいにも程がありますわ。」
「ふふぅ!」
「その前もですよ!泣いていたというのに急に怒り出していましたからね。ははは。」
「え?何それ!聞きたい!」
「そう言えばロイだけ知らないですわね。」
ニヤリ。
「え~後でねぇ~。」
ははははは!
すると、そこにもう一人乱入していました。
「いや、俺も知らんぞ。てかおまえ達今日は何をやらかしてきたんだ?」
ダン先生……今日は1日中寝ていたようですしね。
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ダンは焦る。
ん~?!
朝食食べて横になっていたら寝ちゃってたんだよな~。
気づいたらあいつ等皆いなくなっていたし。
「まあ、食材探しに行っただけだろうからすぐ帰って来るさ!」
そう思ってまた寝た。
だけども、夕方に帰ってきた生徒達の話を聞くと何かあったらしい。
「やばい……校長への報告がいる案件だったかもしれない。」
やべーなー。どうしよっかな~。
…………しらばっくれておいて、今度ノノアにでも聞いとこうか。
うん、そうしよ~。
「ひとまず飯優先。」
皆がいなかったので昼飯を食べ損なっていたダン先生は、ものすごくお腹が空いていたのでした。
ダン先生の焦りは一瞬だけでした。
「諦め大事!」
いいのかそれで?
まあ、ダン先生ですからね。




