フィランの森
お願いがある。確かにロイはそう言いましたね。
「探し物があるんだ。」
「探し物……ですか?」
「ああ。フィランの森へ行きたい。」
「それはいいのですが、めずらしいですわね。ロイが頼みごとなんて。」
「ずっと探してきたものなんだ。」
本当にロイがこんなに何かを皆にお願いするなんてありませんでした。ロイの顔は必死さを見せるほどに堅くなっています。
「ただ、森には魔物も出るし、危険はあると思うから無理にとは言わないが……。」
「なぁにぃ~?私達に気を使ってるのぉ~?」
「今更魔物なんてなぁ!」
「……僕がいた方が広い森では有効かと。」
「行こう!」
「行くわよ!」
「行きますよ。」
「もちろん私も。」
皆で探した方が早いですしね!
Sクラスの瞬発力と団結力は凄いです!
「では明日、朝から行きましょうか!」
そうと決まれば明日に備えて早く休んだ方が良いですわね。
私はピア達と女子部屋に向けて足を進めていたのでこの後の意味深なおふたりの会話は聞こえていませんでした。
「ロイ。もしかして、この森なのか?」
「……ああ。」
「……そうか。」
※※※※※
朝です!昨日のお話の通りにフィランの森へ来ました。バンガローからは一時間程歩きましたね。
キャンプ場周りの森とは異なって、少しじめっとした湿地帯という感じです。人が歩きやすい森というよりも、人の手があまり入っておらず神秘的な感じがします。お伽話の妖精さんとかがいそうな雰囲気です。
「それで、何を探しにきたのですか?」
「花だ。」
「花?」
「でも、直接みないとコレだと言えない!」
どう言うことなのでしょう?花なら普通に図鑑などで探せそうですが。
「過去に一度だけ見たことがある花なんだが、その時にしか見たことがないのといろいろあって記憶している花の特徴が鮮明でないんだ。ごめん。」
ロイはすごく申し訳なさそうにしています。
「見ればコレだ!ってわかる自信はあるんだ。だから、よろしく頼む。」
「大丈夫ですよ。とりあえずは、見たことの無いような珍しい花があればロイに声を掛ければいいですか?」
「ありがとう。フワッとしたとても美しい花だったんだ。」
皆さん、「わかったよ!」と言う顔で頷いていました。
流石に私達以外の人には出会いませんが魔物は時々いますね。
皆さんお話ししながら、お花を探しながら、魔物を倒しています。持ち帰れるような素材がありましたら、回収しておいきます。そのうちにギルドへ持って行きましょう。
どんどんと奥深くへ入ってくると木々が鬱蒼と生い茂っていて真夏の昼間であるにも関わらず、木陰の中から出ることもなく涼しいと感じる程です。
道というものが無いので、お互いがはぐれないように気を配りながら進んできました。
「ロイ、次はどちらへ行ってみようか?」
「そうだな。少し北へ移動してまた周囲を探してみようか。」
移動して、その周囲を探してみる。地道ですが探す対象が花ですので目を凝らして探す必要がありますからね。
「ロイー?この花はいかがですか?」
「これはどうだ?」
「……これは?」
道中魔物を倒しながら、花を見つけてはロイに確認していますが、今の所お目当ての花は見つかっていません。
私は摘んだお花が可哀想でしたので小さいブーケにしながら進んでおりました。色とりどりで形もそれぞれ可愛らしくてなかなか素敵だと思いますよ!自画自賛!
途中でお昼休憩を取り、もう少し捜索する事にしました。
やはり自然のままの森ですので、休憩中でも魔物が出てきました。普段あまり人間と出くわすことがないせいか用心する事無く襲ってきますね。
しかしながら相手が悪いです。もはや私達は昼食を取りながら襲われても食べるてを止めたりしません。
「今日も美味しいね~。」
‘’ピッ!
ドッカーン!
「ピクニックって感じでいいね!」
‘’ピッ!
ドーン!
魔物さんがちょっと可哀想になるくらい片手間です。
「ふぅ。充電完了です~!」
お昼も食べて探索再開ですね!
私の手元のブーケはまた大きくなっています。色とりどりです。
ピンクに、黄色、水色に淡い紫。どれもこれも、私は見たことの無いお花だったのですがね。
「珍しいお花~。」
「あ!また違うお花があったわ!」
少し離れたところにまた見慣れない素敵なお花を見つけました。
手の中のブーケと一旦一緒にしてロイに聞きに行くことにします。
「ロイ~!これはどうですか~?!」
パタパタパタ。
ロイに駆け寄って見せに行きました。前しか見ていなくて躓いて--そのままロイに突っ込んでしまったのはご愛嬌です。
ぱふん!
ロイの顔に花のブーケを激突せなが突っ込むと、片手で抱き止められました。
私ったら注意力が足りなくて申し訳ないです。
「ロイ、すみませんでした。お怪我はないですか?」
「ああ。…………。」
「……あれ?」
この日はいつもとロイの反応が違いました。
いつもの通り何故か真っ赤になったと思ったら、ボーッと目が虚ろです。
そして----。
「誰だ?」
と。
「へ?!」
驚いて瞬間的にお花を離して、ロイの両手を握ります。
訳がわかりません。ロイは私を見ているのに、
『誰?って言った?!?!』
「私ですよ?」
「だから……誰だ?」
『本当に私に言ってる……。』
つ----。
頬に熱いモノが流れます…………涙。
『何が起きた?』
と、皆が寄って来ます。
ロイの状態を見て、私が涙を流しているのを見て、皆が周囲を観察します。
すると、ノノアが何かに気づいたようです。
「……これ!!!」
とひとつの花をみる。
----氷のように透き通っていてとても綺麗な花----
「……!皆さん!鼻をふさいでください。」
ノノアが拾って見せたのは、先程見つけた素敵なお花です。
「これは、忘れて草と呼ばれています。」
「元は精神の治療で使う貴重な薬草です。」
「それ、聞いたことあるわぁ~。確か、効果はぁ……。」
「……忘れさせます。その時見た人との記憶を一方的に。」
皆「「「え?!?!」」」
忘れるって言いましたか?そんな……。
「そして----。」
神妙な面もちでノノアは続けます。
『そして、何?』
「……戻せない。」




