第三十二話 鎮魂(上)
剣を手に庭中へ降り立った姿を紫紺の瞳がすばやく捉えたのを、京姫は感じた。折しも黒煙のごとき雲の間から赤い月が顔をのぞかせ、周囲を照らし出した――天満月媛命もまた宿敵の姿を認めたのだろうか。ああ、呪われた月の女神よ。世に満ちる恥じらいと悲しみのなかで、最も古く、かつ最も貴き感情を湛えた麗しき女神よ。凍れる静謐を愛する女神、桜の儚さにさえ胸を痛める女神、死者の安寧を祈る優しき女神よ、汝の脆き心はいずこへ去にしや。その清い肌は痛々しくも赤くかぶれて。
かすかに音を立てて震える剣の刃に、京姫は指先で触れた。まるで怖じる剣を勇気づけるかのように。京姫は剣を構え、みずみずしい翡翠の瞳で漆をじっと見つめた。漆は桜陵殿を囲う石垣の上に立って、姫を見下ろしていた。
「古妻の 旧りにし袖ぞ 振りしかば 古家の妹に 触る吾かも……」
鉄扇で口元を覆いつつ、漆は低く歌った。そして、身を固くする京姫を嘲るように笑った。
「水底国はすでに干上がりかけている。どう足掻く?水底の国の姫君よ」
「あなたを倒す」
京姫は静かに言った。
「この剣は天一本菊剣――稲城乙女が黄櫨一族を鎮める時に使った剣です。この剣であなたを倒す」
「鎮めるとは誠によい言葉よ。貴様らは黄櫨一族を鏖殺したのだ。白菊帝が生まれるはるか以前からこの地に暮らしていた者どもを。彼らを先祖の地から追い払い、彼らの神を殺し、彼らを辱めた……黄櫨一族に限らぬ。この国の在り方は抗う民草に対して常に同じであった。姫よ、その剣は正義の剣などではない。まして、貴様は正義の姫君ではない。貴様は血溜まりの底で血塗られた剣を握っているのだ」
「……私が正義の姫君ではないことはわかっています」
京姫は瞬きを一つしてから、さびしげに瞳を揺らした。だが、その瞳は再び強くもたげられた。
「でも、それでも……私はこの国の人々が殺されるのを、黙って見てはいられない」
「崇められずして君主は君臨できぬからな」
「えぇ、その通り。私が今まであったのはこの国の人々のおかげだもの」
「お前を幽閉していたのもまたこの国だ、姫よ」
「……それでも守るの」
私は京姫だから。答えはそれだけでも足りるのだけれど。
京姫はもっとも大切なことだけは言わなかった。この国は大切な仲間たちが守り続けてきた国だから、何があっても守るのだと。青龍、玄武、白虎、朱雀――大好きな、大好きな……大好きな友達が命がけで守ってきたのだ。いいえ、これからだって彼女たちはこの国を守り続けるだろう。四神の魂はまたこの国に蘇るのだから。また会える……たとえ覚えていなくとも、また会える。その時にちゃんとみんなに顔向けができるように。
京姫は掌のなかに剣を据えなおし、駆けだした。剣の降り方も、跳躍の仕方もわからない。ならば、舞うように戦うしかない。鬨の声のあげかたなどわからないから、歌うように叫ぶしかない。
剣は石垣にあたって高らかな音をあげた。漆の影が飛び立ったのを、京姫は前髪をそよがせた風に感じた。京姫はその時、一本菊剣をびりびりと痺れるような感覚が伝うのに気がついた。はっと顔を上げた京姫は額にもその痺れを受けた。
石垣に阻まれて、漆の姿は消えた。京姫は急ぎもたつく足で剣を引きずりつつ後退して石垣との距離を取ったが、もつれあった見えない糸のようなものが頬のかたわらを過ぎゆきざまに切りつけていったのに驚いて足を止めた。触れた指が血で濡れた。
降り注いできた影を咄嗟に睫毛の上で支えて、京姫は重たい剣を支点に身を翻した。何か冷たい飛沫を足元に浴びたように思って見てみると、つい今しがた姫が立っていたところにまるで、巨大な斧が振り下ろされたかのように、深い溝が現れていた。地の断面は初めて世の光というものの横暴に身を晒して、傷ついたように赤黒く光った。
続く風の刃の第二波を京姫は辛うじてかわした。なびいた髪の先が切られても、姫は振り返らずに走った。樹々の差し交わされる枝の下に逃げ込んだ京姫は、初めて戦いの何たるかを身を以って知り、息をつきつつ慄いた。四神たちはいつもこんなことをしていたの?京を守るために……?
すぐ近くの枝先が切り落とされぱらぱらと地に散らばったのに、京姫はびくっとして思わず桜の幹に縋りついて、息をひそめた。
「隠れても無駄だ、姫君よ。無理して引き伸ばしても命の緒はいずれ立ち切れてしまう。ならばいっそ潔く首を斬られよ」
漆の声は頭上から降ってくる。投げつけられる風の刃と同じように。また近くの枝が落ちる。見つかるのも仕留められるのも時間の問題であることは姫とてよくわかっていた。だが、宙を浮遊する者を相手にどのようにこの剣を届ければよいというのだ?
妙案は浮かばなかった。しかし、紅の月光が遮られているおかげだろうか。紫蘭を思って庭をさまよっていた日々に馴染んだ薄暗がりのなかで、指先の白さが閃き出し、瞳が冴えだすのを待ちながら、姫はとあることに気がついた。一度気がついてみると、何としても確かめたくなった。
「姫よ、愛する庭を更地にしてしまうつもりか?」
「……朱雀は死んだの?」
「言うまでもないと思っていたが、無論」
「朱雀は最後に何か言っていなかった?」
「なにかぼやいたとして、どうだというのだ。虻の羽音を耳障りだと思っても、その調べをいちいち覚えているとでも?」
漆の目に、その時、木の間の暗闇のなかに白く光ったものが映り込んだ。漆の唇が白い精緻な顎に歪んだ影をこさえた。なるほど、そこに潜んでいたのかとでも言いたげに。
嬲るように宙高くかかげられた鉄扇が振り下ろされると同時に、風の斧は大地目掛けて空を駆け降りる。漆の風は月をめがけて許しを乞うように差し伸べられた枝々を無情に薙ぎ、桜の大木の幹を斜めに通り過ぎていった。大木は一瞬凍り付いたように黙していたが、やがてぎいっという悲鳴とも唸りともつかぬ声をあげてゆっくりと傾いだ。その頭がちょうど漆にひれ伏すかのように下げられた。今に姫はその下敷きになって押しつぶされてしまうだろう。
嘲りと嫌悪とが入り混じった表情が漆の口元をかすめた。と、斜めに渡された桜の幹をすばやく駆けのぼってくるものがあって、紫紺の瞳に再び白く光ったものが映り込んだ。驚いた漆がいっそう高く浮上しようとするのに、桜の階を昇ってき姫の剣は間に合わなかった。そう、間に合わなかったのだ。もし、漆の胸を貫くことが姫の目論見であったのならば――姫の剣の先は、漆の手から武器を弾き飛ばした。さらに、姫は落下が始まるやいなや、細い腕を目いっぱい伸ばして、漆の指貫の裾を指先で捉えた。この意外な姫の動作から漆も逃れきれずに、姫が重力のままに落ちゆくのに引きずられていった。
姫の指は空中のとあるところで指貫を離れた。京姫はその感覚《濁点》をしかと左手のなかにおさめると小さくうなずいて、あとは無事に着地することを心がけた。足が地を踏むより先に剣を地面に突き刺し、片膝をついて姫は地に舞い降りる。桜の大木はそれより少し遅れて、姫の目の前に横たわった。開けた夜空に、佇む漆の影があった。
「やっぱり思った通り」
京姫はまるで独りごとのように何気なくつぶやいた。
「漆、あなたは桜陵殿に入れないのね。この桜陵殿に張られた結界があなたの侵入を許さない」
漆はなぜ庭ではなく石垣の上で京姫を待っていたのか。飛び上がったその時、なぜ背後に飛びのいたのか。前方へ、すなわち姫の背後にまわり、重たい剣を扱いかねている姫に切りかかればよかったものを。額に覚えた、痺れるような感覚。なぜ漆は間合いをとって姫を嬲りはじめたのか。そして、漆を引きずり降ろそうとした時、空中のとあるところで、漆の体が何かに引っ掛かるように止まってしまったのだ。また痺れを覚えるとともに、姫は漆の身が降下できないのだと知った。気づきは確信へと変わった。
漆は不敵な笑みをくずそうとはしなかった。
「それを知ったところでどうだと言うのだ」
「あなたは私を殺せない。武器も奪ってしまったもの。あとは簡単よ――私があなたを倒せばいいだけ」
「……小賢しい鼠のように逃げ回っておいて、今更何を」
京姫が再び剣を持ち上げようとしたその時であった。背後から激しい爆音が上がり、京姫は思わず漆から目を離して振り返った。頬に熱風を浴びるとともに、大きく瞠られた姫の翡翠の瞳は朱色の波を受けた。
「なっ……!」
桜陵殿の向こう、蘭城殿より南に延々と続く瓦屋根の波がことごとく炎に呑まれていた。その炎の勢いたるや、さながら燃え立つ峰々が突如として生い立ったかと見える。南風とともに押し寄せる熱波は、衝撃のあまり開きかけた姫の唇を端から乾かし、鼻孔を覆って干からびさせた。
「ああっ……!」
息苦しさと眩暈とが姫を同時に襲いきた。涙は滲んだ先から消え失せた。さらなる神の咆哮を聞いた京姫は、向き直った先に新たな山並みを見た。
「今この瞬間、何千というこの京の者が身を焼かれている。そして同時に何万という我が軍がこの京に攻め入った。この京で、炎に巻かれぬ場所はただこの桜陵殿だけだ」
漆の黒い直衣と白い皮膚は、京を焼き尽くす炎を背にしてもなお、そのすさまじい光と熱に輪郭ばかりは歪められつつも、冷ややかに浮かんでいた。潰えた日輪を背に浴びて、陰りの中で暗く輝く紫紺の瞳と、姫の翡翠の瞳がぶつかったとき、京姫の胸には鋭い痛みとともに激しい怒りが沸き起こった。それは無私の怒りでもあれば他ならぬ姫自身の怒りでもあった――許せない。絶対に許せない……!――乾かぬ涙がひとすじ頬を伝った。
「よい顔をするではないか、まことに……この世ならざる美しさだ、姫よ」
陶酔を模したと見えて、漆は目を細めた。しかし、陶酔はたちまち冷笑に変わった。
「留まりたければここに留まるがよい。この国の全てが焦土と化しても、たった一人で生き残りたいというのなら」
「漆……!この国に害なす者は身を以ってそのつぐないをすることになると、教えてあげます!」
自分の体が震えていることに、京姫は気がついた。まさか今更恐怖のためだということはあるまい。憤りのためであろうか。衝撃のためであろうか。いずれにしても、震えているこの小さな身で戦わねばならないのだ。
(考えて……私には何がある?私が戦うのは私が京姫だから。戦う力があるから。京姫の戦う力はどこにあるの……?)
涙の雫が、月のような銀色の光を反射して膨らませなかったならば、京姫の身はその場で切り裂かれていたかもしれなかった。京姫は本能的にさっと飛びのいて、漆の新たな一手から逃れることができた。
銀色の軌跡を描きながら、鋼鉄の翼を持った燕のような、何か硬いものが飛んできて、姫の剣に触れて甲高い音を立てた。京姫は掌がじんじんと痺れるのを感じたが、見てみるとその掌が空っぽである。はっとして見やった中空では、漆が右手に剣を握り、左の袖に三日月型の鎌の刃を下げた銀の鎖を巻きつけて、闇を履の下に踏んでいた。漆の眼は今、天一本菊剣にひたむきに寄せられていたが、その瞳は一向に剣の冴え切った色を映さなかった。
「これがかの一本菊剣というか。ほう……」
「離しなさい!」
京姫は故しらぬ激しい昂奮に駆られて叫んだ。
「剣を離しなさい!その剣は神聖なるもの。天つ乙女より下されたものであれば、お前の触れてよいものではありません!」
天つ乙女より下されたもの――京姫の力とは、天つ乙女の力……
京姫の頭のなかでなにかが渦を巻き始めていた。何かが掴めかけている。でも……
漆は姫を憐れむように見下ろした。
「そうだ。こは天つ乙女のもの。月の女神にとってこれほど忌々しいものはあるまいな。かつて恥を与えた女の剣であるからには」
「何するつもりなの……やめなさい!」
京姫は駆けだした。漆の手から剣が離れるより前に。しかし、剣は冷たい夜を滑り落ちていく。果てのないような夜に戸惑い、剣は初めて暗黒のなかに白く閃く己の姿を見出して、縋りつこうとした。黒い、ささやかな波間に、そっくりに描かれた己の絵姿に。そうして、剣はその絵姿さえもかき乱して、さらなる重たい闇のなかに、水のなかに消えていった。
京姫に迷いはなかった。姫は駆けだした勢いもそのままに、剣を追って、池の水面の上へと飛び上がった。
水面に二つの月を見た――赤く染まって満ちた月と、銀色の三日月と。
「あっ……」
三日月の端が姫の背を強く押した。呼吸さえをも奪うような鮮烈な痛みとともに。三日月は紅に染まった。水面に映った夜空には幾つもの赤い星々が散った。星々は、彼ら自身が蹴立てた波の影に身をひそめて、たちまちのうちに見えなくなってしまったが。
見開かれた翡翠の瞳に暗い水の色が迫って、姫の身はその色の底へと沈んだ。
……水のなかに墜落した瞬間に、上も下も前も後ろもなくなってしまった。京姫の体はその内部まで黒い水に隈取られ、冷たい水に浸った。髪の端までもがじっとりと重くなった。それから、背中の深い痛みさえもが。
見開いたままの瞳にまで水の冷たさは沁みた。それでも暗闇は一向に見通せそうもない。懸命に手を伸ばして闇を探っても、指先に覚えるのは生まれたばかりの小さな泡の新しい冷たさばかりである。姫は指先から凍え、怖じた。開いた唇からこぼれた真珠のような泡の色だけが、姫の瞳に映る唯一の色彩であった。それはまさしく毀たれた姫の生命のかけらであったのだが。
ふいに遠く、小さく白く閃いたのは一体何であったのか。その時の京姫は剣の刃だと信じた。だが、それは緋鯉の鰭のはためきであったかもしれないのだ。一体、この池の底何匹もの緋鯉が憩っているはずなのだ。皆どこへ行ってしまったのだろう。姫の乱入に眠りを覚まされはしなかったのだろうか……その鱗の一片すらも姫の脳裏を過らなかった。姫は閃いたものに縋ろうとして、必死に手を伸ばした。
(もっと、深く……!)
姫の手が水を掻く。
(もっと深く…潜ら、なきゃ……っ!)
背の傷は、そこから樹氷が枝々を差し入れて、葉を広げるように痛んだ。水は掴むまで重たく、掴んだと思った瞬間にむなしくなった。閃いたものは消えた。
終わった――京姫は全ての感覚を少しずつ手放しながら、否、手放すというよりも失いながら、小さな身を闇にゆだねた。京姫がすべきこと、できることの全てが、たった今終わったのだ。剣なくして戦えるはずがない。傷つき、疲れ、悶え、今宵ここまで駆けてきた。もう限界だ。もう休みたい。目覚めることなく、夢見ることもなく、静かに眠りたい。永久に……ああ、もしこれが罰だというのなら、なんと穏やかな、だがなんと残酷な。
絶望のなかで、ふと、姫はもはや少しの痛みも苦しさを感じていない自分自身に気がついた。浮かび上がることも泳ぐこともならず、ひたすらに沈みゆきながらも、静かに水のなかで呼吸をしている自分に。
再び閃いたものは、水面より差し入り、暗い水を透かして姫の顔を照らし出した。それは白い月の光であったのである。京姫はいつのまにか月を仰いでいたのだ。
池に満ち満ちる天満月媛のお姿のまばゆさは、天つ乙女が「なんと眩しいのだろう」と呟かれた、創世の代のまばゆさに他ならなかった。しかし、月の女神をいたく傷つけ恥じらわせた言葉をつぶやいたとして、この水のなかでは小さな泡となって消えるだけだ。姫はただ目を瞑ることによって、そのまばゆさと向き合った。月光は瞼の色と溶け合って、やさしく姫を包み込んだ……
「何泣いてんだよ」
泣いてないよ、私。
「だ、だって……おうち、わがんない……」
あれ、やっぱり泣いてるんだ私。でもなんで?おうちがわからないだなんて……ああ、なんて真っ赤な夕焼けだろう。怖くなるぐらい、気が変になるぐらい赤い。私を見下ろしているのは誰?
「お前が猫さん追いかけようっていうから、ついてきてやったんだぜ」
「も、もう……かえれな……おがあさんと、おどうさんに……あえな……いっ……」
ばかな私。母親も父親もいないじゃない。私には、初めから……
「……そんな訳ないだろうが」
見下ろしている顔をようやく見定められた気がした。知らない少年だ。でも、知らないはずなのになぜだか見覚えがある。黒いつややかな髪も、汗と泥にまみれた整った顔立ちも、いたずらっぽく光りながらも優しい瞳も。宵闇の色をした瞳――私はこの少年を全部知らないはずなのに、悲しいほどにいとおしくてたまらない。
少年の優しい言葉に顔を上げた時、泣いている私は初めて私の感情に気づいたみたいだった。多分、その感情のすべてを理解することはできなかっただろうけれど。でも、私は彼の少年の顔をいつまでも眺めていられそうなそんな気がしたのだ。
少年に手を引かれて私は歩きだす。同時に夕焼けは遠のき、世界はまた月光の色に包まれる……
今の光景は一体なんだったのだろう。どうして死の世界の果てで私はこのような光景と出会ったのだろうか。
死の世界…………
はっと京姫の瞳がひらいた――いけない。このままでは。私は漆を倒さなきゃ。倒さなきゃ。この世界を守らなくちゃいけないのだから。私は京姫だから……!
呼吸を思い出した唇をかすめて白い泡が、力強く立ちのぼった。その泡に紛れて、桜色の鈴が浮かび上がるのを京姫は確かに見た。姫は鈴に向かって手を伸ばし、暗い水を蹴って水面へ駆けた。
(紫蘭さん……!)
京姫は知らぬ間に紫蘭の名を呼んでいた。なぜだろうか。紫蘭の髪飾りが鈴へと変化したことを思い出してだろうか。それとも、先ほどの少年にどことなく紫蘭のおもかげが……
(紫蘭さん、四神お願い……力を貸して……!)
ようやく、京姫の指が鈴に触れた。その瞬間、鈴から放たれた桜色の光が水の世界を輝かせた。水面より出でた京姫の手が掴んでいたのは鈴ではなく仗であった。その先端に据えられた水晶のうちに、桜の花を模した宝石がきらめいていた。




