表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と紡いだ宝物。  作者: 朝凪 紡


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/41

つなぎの、たいさく。

「それで、どうだったんだ?」

ひとしきり再会を喜び合い、ようやく場が落ち着いた頃。

時雨が、改めて本題を切り出した。


「うん、間違いなく、澄だね」


即座に、それでいて穏やかな口調で言い切る。

曖昧な返答をすることの多い彼が、ここまではっきりと言葉にするのは珍しい。

だからこそ、その言葉の重みが胸に深く落ちてきた。


「!!」

声にならない歓喜が胸いっぱいに広がる。


時雨は何も言わず、そっと瞼を閉じた。

穏やかに綻んだその表情が、何よりも彼の喜びを物語っている。


「ほんとですか?!やったぁ…!」

美音は嬉しさを隠しきれないまま、隣に座っていた凩へ飛びついた。

(すごい…!凩さん、一切取り乱してない……!)

そんな美音を受け止めながら、凩は優しく目尻を下げる。

「よかったね、万」

その穏やかな笑みには、確かな安堵が滲んでいた。


一方で、恒は静かに息を吐き、張り詰めていたものがほどけるように肩の力を抜く。

「……よかった。」

恒は静かに息を吐く。

張り詰めていた空気が、その吐息とともにほどけていくようだった。


「ぐすっ…」

焔は堪えきれないように涙を流し、燎華もまた、静かに頬を濡らしている。

「えぇ?!大丈夫ですか…」

(焔さんまで…)

慌ててハンカチを燎華へ差し出す。

「翠ぢゃん…俺の分はないのね」

「すみません、一枚しか持ってなくて」

(確かに、どう見ても、焔さんのほうが、ハンカチを必要としているような…?)

「泣きすぎだよ」

想羅は、どこか嬉しそうにしながら、焔にティッシュを渡す。


「逆探知は、まだ続いているのか?」

今回も、彼が話題を戻す。

「うん。まだ境界を越えてないみたいだね」

「そうか…神気はどのくらい残ってる?」

見透かしたように、時雨は想羅を見つめる。

「……」

表情はいつも通りなのに、よく見ると、額や首筋には汗が滲んでいた。

「万」

時雨が少しだけ語気を強め、返事を促す。

「大丈夫だよ。まだ、あと一割は残ってるから」

「一割?!」

咄嗟に声を上げたのは、焔だった。

あまりの衝撃に、涙さえ引っ込んだようだ。

その場にいた全員の顔から、さっと血の気が引いていく。

私には、それがどれほど深刻なことなのかはわからなかった。

ただ、大丈夫ではないことだけは、伝わってきた。


「あと、どのくらいの時間もつんだ?」

彼は責め立てることなく、常に活路を探している。

「二十分……かな」

「わかった」

彼は、そこで口を閉ざした。

どうすればいいのか、考えていることは明らかだった。

誰もが、彼の次の言葉を待つ。

「…信、俺の神気を信に渡すから、それを万に流してくれ」

「!わ、わかったよ」

二人は、間髪入れず互いへ手を向ける。

先程よりも淡い、青みがかった光が灯った。

そのまま凩が、想羅に手を差し出す。

「万、早く…!時雨は、僕よりも神気量が多いんだ。すぐに上限が来る」

「う、うん」

仄かな光を眺めながら、ふと思う。

(そのまま渡せない理由でもあるのかな?)

三人とも眉間に皺を寄せ、張り詰めた表情を浮かべている。

そんな疑問を口にできるはずもなく、何事もなく終わることを願うしかなかった。


しばらくして、三人の手が離される。

「ごめんね、二人とも、ありがとう」

二人は、同時に頷いた。

時雨は、その先に備えるように、一点を見つめたまま動かない。

そこで、想羅が私へ視線を向ける。

「どうして、しーくんから直接オーラを渡せないのか……だっけ?」

まさか拾われるとは思わず、背筋がぴんと伸びた。

「あ、うん」

「神が七人いるのは知ってるよね。想、風、雨、炎、光、影、地。この順で円環の関係性を持っているんだ。僕だったら、両隣は地と風。この二人からは神気を移しても問題はない。性質が近いからね。けれど、それ以外の神から直接受け取ると拒絶反応が起きてしまう。だから間に凩がいないと、しーくんからも焔からも神気は受け取れない。逆も同じだね」

「なるほど。ありがとう」


説明が終わる頃、俯いて考え込んでいた時雨が、顔を上げた。

「神気が切れないようにするには、どうしたらいい?」

「地の神は、今いないだしね~」

「う~ん……」

みんなが頭を抱える中、美音がぴょんと立ち上がる。

「神気を渡せないなら、回復魔法しかないんじゃないですかね?」

そう言いながら、昨日とは違う色の本を机に広げた。

「回復魔法は、始まりの魔法使いが創って以来、誰も成功したことのない魔法といわれています。実際に使っている人も、初代以外では見たことがありません。でも、初代を除いて、歴代最高といわれている皆さんなら、挑戦する価値はあると思います!」

簡潔にまとめられた説明は、私にもわかりやすかった。

「なるほど、そうだな」

時雨が、深く頷く。

「そうなると……俺の出番だね~!みんな神気不足だろうし!任せて!!」

いよいよ挑戦が始まろうとした、その時。

か細い声が、静かな部屋に響いた。


「あ、あの…」

「ん?」

声のほうを見ると、どこか気まずそうな表情を浮かべている恒が、遠慮がちに右手を挙げていた。

「俺、」

その一言に、全員の視線が彼へ集まった。

「使えます。その……回復魔法」

「え……えぇ?!」

想定外の展開に、部屋の空気が、一瞬で固まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ