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君と紡いだ宝物。  作者: 朝凪 紡


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32/42

幼馴染集合

翌日——


下に降りると、時雨が朝ご飯を作り終えていた。

こちらに気付いた彼と目が合う。

「おはようございます」

「おはようございます。早いですね」

時刻は午前六時半。

今日こそは私がご飯を作ろうと、早起きしたつもりが、見事に完敗。

「仕込みたいものもあったので、早起きしました」

「早起き過ぎでしょ!」と、ツッコミを入れたくなるのを堪えた。

(それに、仕込みって…仕事かっ!)

「ありがとうございます」

非の打ちどころのなさは、もはや神をも超えているように思う。

むしろ、人間の境地のようだ。


「昨日のうちに、焔と信に連絡したところ、神人界だと何があるかわからないから、ここにきて話し合おうということになりましたので、お昼ごろには、来ると思います」

「あ、そうなんですね、わかりました」

彼は両手に持っていたお盆を机に置く。

「お腹は空きましたか?これから忙しくなるかもしれないので、食べれるときに食べておきましょう」

(親かな?)

どこかむず痒い感覚に、居た堪れなくなる。

けれど、彼の素直な誠実さを蔑ろにはできない。

恥ずかしい気持ちを横において、椅子に腰かける。

「ちょうどお腹が空いてきたところです。いつもありがとうございます」

「いつもおいしそうに食べてくれてありがとうございます」

想定外の返しが来た。

(あぁ言えばこう言うんだから…良い意味で)

「いつもおいしいので…」

視線を逸らす。


そんなこんなで食事を終え、片付けも一段落した頃、ドアをノックする音が聞こえた。

コン、コン、コン——

「来たみたいですね」

手を拭きながら、裏口へ進んでいく彼。

私はぎこちなくも、お茶を淹れる。

(焔さんかな?風神さんたちだったら、ちゃんと挨拶しなきゃ)

いつもは唐突に会ってきていたため、会うとわかった状態で神に会うのは初めてだ。

そのせいか、ずっとどこかでそわそわしていた。


「「「「お邪魔します」」」」


(焔さんと……あと、お一人、お二人……四人)

思っていたより人数が多く、私は少しだけ背筋を伸ばしてた。

先に目に入ったのは、クリームがかった淡い緑色の髪をした青年だった。

髪色より少し黄色みを帯びた瞳は落ち着いていて、少し長めの前髪が目にかかっている。

その表情は一見すると淡々としていて、どこか近寄りがたい印象を受ける。けれど、不思議と冷たさは感じない。

初めて見るはずなのに、不思議とすぐにわかる。

(この人が、風神……)

そう思えたのは、彼がまとっている空気が、どこか、風そのもののように穏やかに感じたからだ。

全体的に柔らかな雰囲気をまとい、和を基調とした装いがよく似合っている。


その後ろには焔さんと、その隣に桔梗色の髪をした女性。

そして少し後ろには、赤紫色の髪をした青年が立っている。

女性は、長い髪を一つに束ねていて、瞳と髪の色が焔さんと対になるような色合いだった。

どこからどう見ても、焔の神妃だ。


一方で、最後尾に立つ青年へ視線を向ける。

(……焔さんにそっくり)

兄弟だろうか。

いや、それとも。

(まさか息子さん……? え、神様も子孫残せるのかな……?)

頭の中に疑問符が次々と浮かぶ。

(というか、皆さん美形すぎませんか……眩しくて直視できない)


そこで私ははっとして、反射的に綺麗な四十五度のお辞儀をした。

「は、初めまして。瀬梛 翠と申します。よろしくお願いいたします!」

顔を上げて、勢いのまま言い切った。

生温かい視線が返ってくる。


焔は、口元を押さえて笑っていた。

(そんなにやけなくても…勢いがから回ったのは認めるけれど…)

先程の緊張がここで放出されてしまったらしい。

(穴があったら入りたいとは、この状況のことを言うんだろうな)

客観視していないと、羞恥で気が遠くなりそうだった。


そう思っていると、女性が優しく微笑んだ。

「初めまして。やなぎ 燎華りょうかよ。燎華って呼んで。敬語もいらないわ。私も翠って呼ばせてもらっていいかしら?」

(かっこいい…!)

運動部のキャプテンに抜擢されそうな、はきはきとした口調と、すがすがしさ。

お似合いの二人だと、笑みがこぼれる。

「はい…、うん、よろしくね燎華」


続いて二人の後ろにいた、青年が一歩前へ出る。


「僕は天火あめのひ こうです。恒って呼んでください。この二人の息子で、五人兄弟の四番目です。よろしくお願いします」

(息子さんでした。うん、ちょっと待って?五人兄弟?いや、まず二人の息子?!)

心の中だけで大きく驚きながらも、「まぁ長生きしてる割には少ないほうかも」と、言い聞かせ、どうにか笑顔を保つ。

「よろしくお願いいたします」

今日一の驚きはここだろう。


そう思いながら、最後の男性へ視線を向けた。

穏やかな笑みが、こちらへ向けられる。

(優しそうな方だな)

まだ何も話してないのに、そう感じた。

「初めまして。こがらし たよりです。風神を務めています。時雨たちとは少し離れて育ちましたが、小さい頃からよく一緒に遊んでもらっていました。以後、お見知りおきを」

言い終えたと同時に、お辞儀をした。

(穏やかだ……。話し方まで風みたい)

聞いているだけで、肩の力がふっと抜けていく気がした。

私もお辞儀を返す。


「では、とりあえず座ってくれ」

時雨さんに案内され、私たちは店内の席へ腰を下ろした。

向かいの席には、左から焔さん、燎華さん、恒さん。

こちら側には、凩さん、時雨さん、そして私が並ぶ。

「信~、美音ちゃんは一緒に来なかったの?」

(美音ちゃん?)

「信の神妃です」

私が疑問に思ったことが伝わったのか、彼が耳打ちしてくれた。

「ありがとうございます」と、伝えると微笑み返してくれた。

「あぁ、それが、時雨から連絡もらってから本を探し回っていて、少し遅れてくるみたいなんだ。出発はしているみたいだから、そろそろ到着する頃だと思うよ、あ、来たね」

(え、どこ?)

と、私が思った瞬間に凩さんから風が巻き起こり、裏口のほうへ飛んで行った。

(そっか、どこにいるのかわかるんだよね。それにしても、神様って存在だけでも美しいのに、生み出すものまで麗しいの反則だよね)

なんて思っていた間に、ドアが開く音がした。

その方向に目をやると、人影が見える。

(浮いてるよね…風に、乗っているのかな?)

表現が正しいか困惑する。

乗っている本人は、とても優雅に座っていて、乗り慣れているようだ。

そのままってきた人影は、和服系の洋服を着た女の子だった。

髪と瞳の色は、凩とまるで鏡合わせのようで、金縁の丸眼鏡がよく似合っていた。

彼の隣まで来たところで、ピョンっと飛んで地面に着地した。

(可愛い…)

肩の少し上で揺れるふんわりとしたボブは、まるで雲のように柔らかそうで、自然と目を引く。

にこりと微笑むだけで、その場の空気まで明るくなりそうだ。

「ありがと、信」

「探してた本は見つかった?」

「うん!632番棚にあったよ!」

彼女は「えへへ」と嬉しそうに笑った。

(多いね?!どういう区切りかわからないけれど、すごい数字だね?!)

無言で驚いていると、「あ」という小さな声が聞こえた。

私に気付いたようで、こちらに駆けてきてくれた。

愛らしすぎて、テクテクという効果音がつきそうだ。


「おはようございます!初めましてですよね!日笠ひかさ 美音みおんです。美音って呼んでくれると嬉しいです。仲良くしてください!」

と言って手を差し出した。

(アイドルかな…?)

目の前の生物が尊すぎて、私は抑えきれず、天を仰いだ。

私は咄嗟に(いけない!)と、自分を現実に引き戻し、慌てて名乗る。

「おはようございます。初めまして、瀬梛 翠です。好きなように呼んでください。こちらこそよろしくお願いします」

私は、差し出された手を握り返した。

「じゃあ翠ちゃんって呼ぶね!敬語でも敬語じゃなくても大丈夫だから楽に接してね」

彼女は、ニコッと笑った。

(可愛い!!)

そのまま凩のところまで戻っていく後ろ姿は、シマリスのように愛らしい。

(急に知り合いが増えた気分)

実際そうなのだが、見た目も存在も異次元。

自分が神妃になった実感がない私は、そんな人たちに囲まれて少し気後れしていた。

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