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君と紡いだ宝物。──路地裏から始まる物語  作者: 朝凪 紡


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18/21

きかんと、ぎもん。

「最後に、守護をかけさせてください」

「え?守護、ですか?」

新しい単語に、手をぱっと横によける。

「お守り探知機のようなものです。

例えば、翠さんに危険が迫ったとき、相手を弾き飛ばしたり、僕の元に瞬間移動させたり、その場面に応じて脅威から遠ざけてくれます。 身体に変化はありませんから、ご安心ください」

「それはまた、すごいものですね」

思わず苦笑いがこぼれ、視界が白一面になった。

徐々に、ゆっくりと色が戻り始め、はっきりと視界が蘇った。

「これで完了です」

彼の声が静かに響いた。

「ありがとうございます」


私は、いつも与えられてばかりだ。

どうすれば、少しでも役に立てるのだろう。

神である彼の力の前で、私にできることは―――。

それでも、何かできるなら。

私は―――

「こちらこそ。では、今度こそ帰りましょう」

決断の重みを少しだけ首に預け、私は彼の首に手を回す。

「お願いします」

少しの間が過ぎて、彼の手に力が込められた。

風がそっと吹き抜け、私はぎゅっと目をつむる。


コツン――


目を開けると、見慣れた店内が広がっていた。

久しぶりのはずなのに、どこか懐かしくて、胸が静かに満たされていく。


迷うことなく真っ直ぐに階段を上りきると、彼はベッドまで歩み、そっと腕を解いて、私を座らせた。

どうぞと、ジェスチャーをした彼に促されるまま、靴を脱いで、布団に失礼する。

「では、僕は万たちと今回の件について調べてきますので、翠さんは休んでいてください。何かあれば、こちらを鳴らしてください」

布団に入った私を満足げに見つめながら、彼は机に、小さなベルをそっと置いた。

その可愛らしいフォルムに、翠は思わずくすっと笑みを零す。

「ありがとうございます」

彼は首を傾げ、一瞬だけ考え込むような仕草を見せたが、まあ、いいかと肩をすくめるように柔らかく笑った。

「では」

一礼し、扉の方へ向かう彼。

彼の背中が扉に消えかけたとき、翠は無意識に声を上げていた。

「あの! 時雨さん」

彼は一瞬肩を揺らし、振り返る。

「はい」

呼び止めたのはいいものの、翠は言葉を探し、唇をそっと噛んだ。

「その……さっき、運命で結ばれたって言ってましたよね?」

「はい」

「それなら……私も、時雨さんに危険が迫ったとき、気づけるんでしょうか?」

このことを聞いてから、なんとなく心に引っかかっていた。

もし彼が想羅のようになったら、知らないまま……何もできずに手遅れになるなんて、考えたくない。

彼の言葉では“気づける”とのことだったが、まだ神妃になっていない自分や、理解の追い付かない状況を思うと、どうしてもこれだけは確かめておきたかった。

ふと視線を落とすと、ベッド脇の花瓶に挿された一輪の花が揺れていた。

「そうですね…現状だと、少し調子が悪いな…くらいの違和感だと思います」

「そう、なんですね」

それだと、わからないのと変わらないかもしれない。


時雨の場合は、体調不良を感じないと言っていた。

だからこそ、何か異変があればすぐに察知できるのだろう。

けれど、私にはそんな確信はない。

抱くべきではない不安が、胸の奥でじわりと広がった。

「大丈夫ですよ。こう見えて、僕、強いですから」

(こう見えてって……)

どう見てもの間違いでしょ。

珍しく茶化した彼の様子に、思わず笑みがこぼれた。

「そうですよね」

「はい」

不安を裏返したような微笑みに、こちらの心も少し緩む。けれどすぐに、張り詰めた感覚が戻ってくる。

「それでも……もし何かあれば、私にも教えてくれませんか?」

「え?」

予想外の言葉に、彼の動きが一瞬止まった。

役に立てるなんて、思っていない。

ただ、これは私自身の心を励ますための言葉。

それでも、言わずにはいられなかった。

じっと彼を見つめて待つと、彼はふっと目尻を下げ、優しく答えた。

「もちろんですよ」

(良かった……)

「ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとうございます。しばらく休んでいてくださいね」

「はい」

彼の姿が見えなくなったのを確認して、全身から力が抜けていく。

ふわり―――

柔らかな音と一緒に、ベッドからふわりとお日様の香りが漂った。

身体が沈んでいく心地よさに、少しだけ身をゆだねた。


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