麗蘭と先輩②
万希彌との昼食のお迎えがそろそろ来る―――と教科書を机に仕舞い、午後からの授業に必要な物を確認していた。
少し教室がざわついたので藤宮先輩が来られたのか…と、とにかく準備を急ぐ。
「皇 麗蘭さんいますか?」
廊下から自分の名前を呼ぶ声が聞こえてくるまでてっきり先輩が来ているものと思っていたが、そこにいたのは、黒髪を後ろで一つ結びにした、長身の、日本人形さんの様な美人さんで―――全く知らない女生徒さんだった。
『あれ? 藤宮先輩じゃない??』
教室内のクラスメイトは皆『誰?』という顔をしている。
制服を見ると胸元には高等科のバッチと一年生の証である緑色のリボンタイをしている。
初等科と高等科の生徒には殆ど接点がない為、興味津々でクラスメイト達が私と女生徒さんを見ている。
下級生からの熱い注目を浴び、そしてどうやら私が分からないことで女生徒さんには少し苛立ちが見えた。
そして、そんな上級生の横を通って昼食に向かうことが出来ないクラスメイト達が私をちらちらと見る。
ソウダヨネェ~。トオリヅライヨネェ~。スミマセン……。
でも、正直私も認識ない人に呼ばれて困惑中なんだよ~。
まだ、女生徒さんは私に気づいていないようだったので溜息をついた。それを見ていたクラスメイト達が明らかに動揺していたが大丈夫。
だって女生徒さんには私のことは視界には入っているが誰かは分からない程度の人なのだから。
常に認識阻害のスキルを軽くだけど発動してるから、常日頃接している人達でないと私は影の薄い人でしかない。
こっちから声を掛けるか触れるかしないとはっきりとは認識できないから、きっと女生徒さんは気づいてないと思う。
……昨日の先輩は、私の認識阻害を打ち破ってきた―――けどね。
完全なスキルを発動する前だったとはいえ、本来なら接点のない先輩の目に留まる事すらない筈、だったんだけど……。
看破されるようでは私もまだまだってことかな? 精進せねば、だわ。
あと、火猿ちゃんと仲良くなりたいなぁ~。あんなにビビられると悲しいよね……。まぁ、ビビられた原因は私だけじゃなかったかもだから、気持ち少し浮上したけど。
認識阻害のスキルを発動させるために、私が学園にいる間も寮にいるペレちゃんとは常に意識下で繋がっているのよね。
だから、意識してペレちゃんを呼べばいつでも会話できるし、いざとなったら私の傍まで転移してもらえる。
一心同体は言い過ぎかもだけど、その位ペレちゃんとは繋がっている。
人には分からないかもだけど、精霊同士、特に同じ属性の上位者(中位以上?)だと気配を感じ取ることが出来るらしい。
なので『火猿よりも上位精霊であるペレの気配を感じとって恐れ多いと身を隠したんじゃないか?』って、昨日、本日の報告をイグニスさんにした時に言われた。
思わず『それだ!つまりは私を怖がったんじゃないのね』て喜んじゃったわ。
話が逸れてしまったけど、つまりは私が『認識してもいいよ』って思っている人か、よっぽどの実力者でないと私の認識阻害のスキルは突破できないので、こうして堂々と溜息ついても大丈夫。
だから、クラスメイトの皆さん心配しないでね。
そろそろ藤宮先輩もお迎えに来ちゃうし、皆お腹空いてるだろうから、せめて扉が使えるように移動してもらおうかな、と―――『はぁ~、やれやれ』と思いながら重い腰を上げた。
「何かご用でしょうか?」
女生徒さんに近づき声を掛ける。
女生徒さんは急に目の前に私が現れたのでびっくりしたのか、一瞬表情が凍りついたが直ぐに微笑みを見せた。
「皇 麗蘭さん、ですわね?」
「そうですが――――」
沈黙が流れる。
こほん、と軽く咳払いをした女生徒さんがすっと白い封筒を差し出した。
それは、昨日私が桐生芙蓉さん宛てに出した封筒だった。
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