魔眼持ち②
イグニスさんにぎゅうぎゅうに締め上げられていた私は、段々と息苦しくなって腕をばしばしっと叩く。
イグニスさんの急な行動についていけてなかったのは私だけでは無かったようで、私が手を動かしたことで父が慌ててイグニスさんの腕を抉じ開けてくれた。
「おい! イグっ 何やってんだ?!」
父は私をイグニスさんから奪うと、優しく抱え上げてくれた。ちなみに、イグニスさんは父の勢いに負けて地面にぺしょっていた。
「リアン、大丈夫か?」
「……ちょっと苦しかった!」
私の言葉を聞いたイグニスさんは、バツが悪そうな顔をしながらのそのそと正座をした。
口がもごもごと動いているところを見ると何か言いたい事があるんだろうが、結構な苦しさだったことに少しお怒り気味の私は、イグニスさんと視線が合った瞬間『ぷいっ』と顔を背けた。
途端に、イグニスさんの顔色が悪くなり吊り目の目尻がこれでもかってくらいに下がった。
あ、イグニスさんに怒られた子犬の垂れた耳としっぽが見える……。
ちょっと一言物申そう!と思っていたのにこんな姿を見たらなぁ。
日頃の態度と全然違う、というか父に真剣に怒られた時にも見せない様なイグニスさんの珍しい態度に怒る気が失せてしまった。
ひとつ息を長く吐き出してイグニスさんに声を掛けると、そろそろと上目遣いで見てきた。
なんだ? 大きい体なのに『きゅ、きゅぅ~ん』という効果音が聞こえてくる様なその姿は??
だめだぞ! そんなんで誤魔化されないぞ!!と思ってる時点で私の負けは確定してたけどねっ
結局絆されてしまった私は、渋る父の腕からイグニスさんのお膝の上に戻っていた。
……だって、さっきの行動が最近私達がみつきちゃんのことに構いっきりで寂しかったから(まぁ、いい大人が何言ってんだ?とも思ったけど)と聞いたら。ねぇ?
どうやら父と母、それにエアル様までもが、みつきちゃんと会った時のために張り切っていろいろとお勉強していたらしく。
イグニスさんは疎外感を感じていた上に、私がどうやらとどめを刺したようで。
みつきちゃんと一緒にいるようになってから、放課後は授業の予習と復習をしながらお話していると寮の夕食前に戻る事もしばしば。
ご飯食べて、入浴して、明日の準備をしてたらあっという間に就寝時間。
前世の時は日を跨いでの就寝なんて当たり前だったけど、子どもの身体には無理!
八時過ぎたら身体がふらんふらんする。九時まで持たない。
自然、ペレちゃんを通じてのイグニスさんとのお話たいむは回数が減り、口を開けばみつきちゃんの事ばっかり話していた様な気がする……。
イグニスさんは寂しかったのね。うん、悪いことしたわ。
精霊王様方って常に精霊とかが周りにいるから(うちの父は結界張って気付かれないようにしてたらしいけどね)、独りってイメージはないんだけど、イグニスさん曰く『精霊にとって俺は敬われる対象であって、同列ではないからな』と言うように壁が存在するようだ。
それに引替え、我が家でのイグニスさんは『兄貴ぶるやつ』で『愛する夫のお友達』で『頼れる親戚のお兄さん』であって『図体だけでかい弟』なのだ。
心許せる一家が、言葉は悪いが新参者に靡いて自分を放ったらかしにしてたら……そりゃ拗ねるな、うん。
と、言うことでお詫びもかねて私は大人しくイグニスさんのお膝にいるのです。
さっきから頭に顔押し付けられてぐりぐりされてるけど私は大人だから許しますけどね。
表情がすんってなるくらいは良いでしょう?
イグニスさんも落ち着いたところで話を進めましょうか!!
読んでいただきありがとうございます。




