みつきちゃんと眼鏡⑧
ここが防音対策ばっちりの個室で良かった。
兄が少し離れた場所でエアル様を通して父に連絡を取った瞬間、部屋の空間から父と母、そして何故かイグニスさんが現れた。
心の準備が出来ていなかった私と、人(?)が突然目の前に現れるという初体験をしたみつきちゃんの叫び声が部屋中に木霊したからだ。
「お父さん、お母さん、急に呼び出してすみません。あ、良かったら夕食にしませんか? ここのミートパイは本当に美味しいのでおすすめですよ。あ、リアンとみつきちゃんも何か頼みますか?」
……兄の普段通りのしゃべり方に心臓はばくばくしながらも、急な展開に頭をあれこれ使って疲れ、脳が甘いものを欲していた私は
「あ、じゃあココアのおかわり欲しい〜!」
と、つられてしまった。
……あ、いやいや待て! そうじゃない!!
みつきちゃんに自分のことを話さなきゃいけないのに初っ端をくじかれた感が否めない!!
いや、ひとのせいにしたらいけないぞ!
さぁ、説明しなくちゃ……。
既に常識外れな事をみつきちゃんの前でしでかしてしまった家族の説明と、私や兄が認識阻害を発動している理由を説明しなくちゃいけない……と悩んでいたけど、この短時間でみつきちゃんの中に『りらんちゃんの家族はちょっと普通と違って、そしてどうやら訳ありっぽい』との認識が出来上がっていた。
そして、説明したら家族のことは意外とすんなり納得してくれた。 あれ? いや、良かったんだけど……なんかあっさり過ぎて逆に怖い………。
みつきちゃんと私と兄は椅子に座り、父達は壁際に椅子を持っていって見守ってくれている。
緊張して掌に汗が滲む。
一息入れてから説明を始めた。
うちの家族が準皇族として扱われている理由は、みつきちゃんと仲良くなってから伝えていた。
けど、それは母が倭国に縁があるという事だけで詳しくは伝えていなかった。
なので包み隠さずに言うことにした。
本当は何百年前の倭国の皇女様がお祖母様なのだと。
あ、みつきちゃんが反応に困ってる……。
後で纏めて質問タイムを取りますので、続けさせていただきますね。
さてさて、と。
倭国の準皇族扱いもだけど、母はランヴィドール王国の王族でもあるし、実は母は絵本に出てくる勇者でしたっていうのを説明した。
それと、倭国に来た理由はランヴィドールの王族に(色んな意味で母娘とも)狙われていることもあって逃れる為に姿見を変えているから、本当の自分を他の人に知られるのは困るんだとみつきちゃんに話した。
そして、もう一つ。どんな言葉で説明しても上手く言えなさそうだったので、簡潔に言う。
「あとね、父は風の精霊王なの」
なんて言われるかな……不安が押し寄せる、俯いたまま視線をちらっとみつきちゃんに向けると、なんだか固まっている。
ちょっと情報過多だったらしく、みつきちゃんはぶつぶつと私や時々会話に加わった兄の言葉を反芻している。
これも、みつきちゃんと友達になってから知ったことだけど、みつきちゃんは小さいけれど声に出して反芻することで自分なりに整理していくらしい。
今まさにその最中ってことのようで、邪魔をしてはいけないと私は口を閉じた。
しばらくすると、みつきちゃんは深呼吸した後、細く息を吐いて瞼をぱちぱちさせぎゅっと目を閉じた。そうして、一言「よし!!」と言うと、目を開けて私を見つめたと思ったら大きな声で言った。
「質問!」
……みつきちゃんの言葉にどきっとなる。
「りらんちゃん、うちが言った途端、お顔に『え? 質問って何??』ってでかでかと書いちょった」
と後で笑いながら言われるくらいに出ていたそうだ。
質問内容にどきどきしながらも、みつきちゃんから聞かれた事は誠心誠意答えようと誓い口を開く。
「・・・・・はい、どうぞ」
「ばれたのがうちだけなら、りらんちゃんはここにいられる?」
読んでいただきありがとうございます。




