みつきちゃんと眼鏡⑤
「えっ……あっ! あれ?! まって、なんか見えるよっ りらんちゃん、字見えるんやけど!!」
個室の壁に前世では馴染みのある大小様々な文字が並んだ紙を上から順に読んでもらい、一番下の文字が見えたみつきちゃんは歓喜の声を上げる。
う~ん、いい反応だ!
兄と私とスイくんは、みつきちゃんの後ろで水の魔術で作ったレンズ状の塊をみつきちゃんが言ってくれる言葉を頼りに微調整しながら形を変化させていった。
お陰でみつきちゃんに合ったレンズが出来そう。
早速、兄とスイくんはレンズの削り出しに掛かっている。
「みつきちゃん。下まで見えたし、これで眼鏡作っちゃうね」
「……あ! うん!! あんね、すんごい見えたっっ びっくりやねっ なんか久しぶりにまわりがよく見えたぁ~、はぁ~、すんごいねぇ!」
興奮冷めやらぬみつきちゃんだったが、ひとしきりふんふんと鼻息荒く語った後、段々と声が重くなってきた。
「………りらんちゃん、あの、これね、ほんとにうちがもらっていいんやろか……? うち、なんもできんのにこんな高いものもらうの、悪くない?」
不安げにじっと私を見つめるみつきちゃんだけど、正直に言っちゃうと自分の勝手なお節介に巻き込んだ感があるんだよね、と申し訳なく感じるおばちゃんです。
「いや! あ、あのね、逆に、みつきちゃん学園の勉強とかもあるのに眼鏡のことでレポートとか書いてもらわないといけないから大変だと思って、ごめんね……」
いや、本当にすみません。大変な上に、提出先が国のトップとか……私だったら胃痛まっしぐらの拷問だわ。
お詫びというにはおこがましいですが、一応レポート作成が負担にならないように形式を作った。
実は、みつきちゃん以外にも学園には何人か視力で困っている生徒や先生がいる事が判明した。複数の意見が聞きたいのでその人達にも声を掛ける事にしているんだけど、試作品を渡す条件はみつきちゃんと一緒でレポート提出。
提出されたレポートは玄武様達に渡す事になっているので、書類の形式がばらばらだと見づらいかな?と思って。
なんせ相手はとてもお忙しい方々(一名は時々雲隠れするみたいですけどね……)なのでね、自分で出来る事はしようと。
いくつかの項目に書き込む、もしくはチェックを付けていく事で負担を削らせて頂こうかと。所謂、アンケート用紙なんだけどね。
眼鏡が出来たら掛けてもらって説明しようと思います。
兄から「出来たよ」と声が掛かり、早速みつきちゃんに掛けてもらう。
目を閉じてもらって、兄から奪った眼鏡をみつきちゃんの耳に掛けた。
兄が作成した眼鏡は健康的なみつきちゃんの肌にも馴染む藤色の丸みのあるフレームで良く似合っている。……くっ、文句のつけようがない!!
だが! みつきちゃんに似合う眼鏡を作った事は認めるが、初めての眼鏡の着用権利は譲りませんからっっ
「みつきちゃん、目を開けてみてくれる?」
私の言葉に、みつきちゃんの瞼が開く。ぱちぱちと瞬きを数回すると、みるみるうちに頬に赤みが差す。
「みえる〜っっ」
可愛い。みつきちゃんとお話出来るようになってから見るようになった笑顔の中でも上位に入るお顔だわ〜。
「みつきちゃん、眼鏡掛けた感じはどうかな?」
声を掛けると、ばっっと振り返ってきた。
「いい! すんごくいいっ」
「良かった! あ、みつきちゃん、鏡見てみる?」
すっ……と、大きめの鏡を手渡そうとみつきちゃんに差し出した。
「ありがと!!」
お礼を言って受け取ろうとしたみつきちゃんの動きがぴたっと止まった。
『ん?』と思ってみつきちゃんに目を向けると固まっている。………と、感じた瞬間、今度は更に顔を真っ赤にして叫ばれた。
「………うっわーーーっっ りらんちゃん、かわいい!!」
「え……っと、ありがとうございます?」
前世が平凡な日本人の主婦だったおばちゃんは、この世界に転生してから結構な人達に『かわいい』を連呼されてきたので慣れたと思っていたんだけど、同年代の初めてのお友達に言われると……うん、ちょっとくるものがある。
私的には、目の前で鏡を持っていた手ごと握って上下にぶんぶんと振り、興奮の度合いを表しているみつきちゃんの方が可愛いと思うのだが?
「みつきちゃんのまわり金色やったけど、目の色と一緒やったんやね~!」
……ん? みつきちゃん??
「周りが金色って?」
いや、そこじゃない! 瞳の色が金色って言った!?
認識阻害の魔術を発動している私の瞳は赤のはず?! どうして!?!?
読んでいただきありがとうございます。




