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輝葉様と眼鏡


「つまり、一時的に国に保証しろ、と?」


 輝葉様の鋭い視線が私に向けられた瞬間、私の胃はきりきりしてきました。……あぁ、胃が痛いぃ。


 前世の社畜時代を経験した私でも、こんな上ぇ〜の方の上司(倭国のNo.2)にプレゼンとかした事無かったんだからしょうがないよね……。


 輝葉様とは日頃『このお菓子も美味しいですよ』とか『この食材は今迄は苦味が強く食す者が少なかったのですが……成程、一度茹で零す事で苦味を取り除き、旨味を引き出すのですね』とか『ふむ、こうすれば保存期間も伸びる上に栄養価も高くなるのですか!』などなど、比較的和やか(食べ物関係多し)な会話をしてきたんだけど……国の予算に絡んだ話になった途端に宰相としての威圧感が!!


 そうです。本日、私は()()報告及び提案をしに皇城に来ております。



 今のところ、この世界では眼鏡以外で視力をカバー出来る物が無い。

 だから、今までは視力が低下してしまったら諦めるか、度の合わない眼鏡を使用するかだった。

 まさかレンズの凹凸を調整したら個人個人に合った物が出来るなんて思わなかったんだろうな……。


 きっと眼鏡を使用する事でその人の人生は変わると思う。

 その位、視界が良くなるということは大きな意味を持つと私は思っている。

 だから、一度経験すれば興味を持ってくれると思うし購入したくなると思うんだ。

 でも、今のままじゃ誰でも彼でも眼鏡を手に取る事は出来ない。


 ()()()()()


 私の素人な考えだけど、今までよりも安く手に入れられるってなれば、一定数の人が購入するんじゃないかな?


 だって、今のままじゃ誰も買わないよ。人によっては度が合ってない上に、高いし()()()し。


 それに引き換え、今、兄が掛けている眼鏡!!

 性能はもちろん、似合ってるでしょ!!


 この眼鏡なら売れるっって! そうなれば、今までは在庫となってしまっていたレンズも捌けるし、職人さんの懐にもお金が入る!! 


 それに硝子レンズの眼鏡は、扱い方が雑だったり、何らかの衝撃を与えると割れちゃう事もあるから、そうなればまた購入しなくちゃ!


 ……でも、何度も買い換えるのは躊躇しちゃいそうでしょ?

 なので、ここで国も絡んでいただけないかなぁ〜って……。



 倭国の初代皇王•皇冬夜君は日本の健康保険制度に近いものを試行錯誤しながらも制定してくれていて、治療院とかで怪我なんかを治療する時も少額で利用出来るようにしていた。偉い子だよね!!


 なので、その制度を『眼鏡の作成時にかかる代金』でも適用させていただけないかなぁ〜、何割か国が負担してくれないかなぁ〜……なんて提案したんですけどね。


 今現在、眼鏡が必要な人がどの位いるのか分からないけど、これまでよりも品質、デザインが良くって、しかも安く買えるとなったら結構な人数が利用しそう。


 そうなれば、国の負担が大きくなるというデメリットがある。だから輝葉様のその突き刺さる様な視線は納得なんです、はい。


 だけど眼鏡が売れていけば、その内眼鏡を作る職人さんや魔術師さんも増えて市場が上手く回りだすかも?

 競争して価格も下がって来るかも?


 そうなれば皆が手に取り易い値段になって、国の保証も軽くなって良くなるんじゃないかなぁ〜。


 それに、視力が悪い事で今まで生活に支障をきたしていた人達が、思う様に能力を奮う事が出来れば、それって人財の開拓だよね?―――なんて希望的観測も含めての『提案』なんですが……輝葉様、駄目ですか?

 ちょっとびくびくしながらプレゼン中です。


「………獅輝様が掛けておられるのが、実際に作られた物ですか?」

「そう! そうなんですよっ、輝葉様っっ! 今までの眼鏡とは違って性能は勿論、デザインにも拘ってるんです!!」


 畳み掛けるように『兄に似合うものを!』と作った十数点の眼鏡を並べる。



 実は以前から気になっていた事がある。


 輝葉様、視力悪くない?


 元々は眼力ある人なのかな?って思ってたんだけど、輝葉様を観察してたら書類の小さい文字を目で追ってる時に眉間に皺を寄せてるんだよね。

 あと、遠くを見てる時も目をしぱしぱしてますよね?

 宰相という事もあって常に大量の書類と闘っている輝葉様の視力に問題があるというなら大変だと思うんだけど。


「実はここにレンズがあるんですが、もし良ければスイくんと兄で実際にどうやって作るのかを実演したいなぁ〜、と思ってまして……協力してくださる方を紹介していただけますか?」


 繊細な作業ではあるけれど、使用する魔術自体は難しいという訳では無い。

 こんな感じで『レンズと水の精霊と契約した魔術師』がいれば、どこでもその人に合った眼鏡のレンズを作ることが出来る。


 !! そっか! 今世はどの国も眼鏡は()()だから、兄が掛けてる様な眼鏡を倭国だけでなくて大陸中に広める事が出来れば……。


 眼鏡のフレームとレンズがあれば、倭国に留まらずに世界各地を渡りながら商売出来るかも。


 もしくは、国との交渉でちらつかせたり、その技術の使用料なんかを、こう、上手く回収したりとか、……いかがでしょうか、宰相様。


「そうですね、発想は良いと思いますよ。ですが、どの様に作られるのか実際に見てからの方が良さそうですね」

「あ、はい」


 輝葉様に促された私は持参した眼鏡の中から、細めの銀色フレームの眼鏡を手に取った。


「では!! 輝葉様に体験してもらうのが一番わかると思うのでお願いしてもいいですか?! あと、似合うと思うのでこれで作ってみてもいいですか?!?!」

「……そうですね。今後の事も踏まえて体験した方が良さそうですから、協力致します」


 私の提案は、気持ちいい位にすんなりと通ったのでした。



読んでいただきありがとうございます。

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