麗蘭の学園生活⑨
「イグニスさん違いますっっ リアンは可愛い!!ですよっっ まぁ、確かに綺麗というのもあながち嘘ではないですが……お陰で今日も羽虫が寄ってきたので駆除しましたけど」
兄のシスコン発言が本日も絶好調の様です……。
「……レオン。それは、つまり、そういう事か?」
両手いっぱいの荷物を持ったまま兄に詰め寄るイグニスさんに至極真面目な顔で頷く兄。
「そうです。さっき声を掛けてきた同級生の一人です。リアンの可愛さに一目惚れしたみたいでして」
「そうか……。ふむ。そいつ、見る目がある事は認めるが許せんな!」
あの〜、イグニスさんの許可必要でしたっけ?
「大丈夫です。彼にはきちんと『うちの妹との交際条件は僕に勝つ事です』とお伝えしましたから。僕としましては、やはり最終的には父やイグニスさんに勝てる位の男性でなければ、リアンを預ける事は出来ないと思ってるのですが……」
え? 止めて?? そんな人いる???
いくら今の私が恋愛や結婚に興味がなかったとしても、いつかはしたいなと思ってるのよ。
今は、前世の旦那様や子どもの事で気持ちの折り合いがつかないだけなんだから!
「レオンの気持ち分かるぞ! 大事な妹を預けるんだからな!! よしっ、リアンの事は俺に任せと」
「さっきから聞いてりゃ、何勝手な事言ってんだ?!」
背後からの頭への平手打ちが見事に決まったイグニスさんは前によろめきながらも頑張って踏ん張り、すぐに振り向いて父に吠えた。
「ナギル! 痛いぞっっ」
「当たり前だ。叩いたんだからな」
「なんで叩くんだよ?!」
「お前が阿呆な事を言うからだ」
―――ぁあ、これが始まったら長いんだよね〜。
一種のコミュニケーションだし、変に口を挟むとより悪化しちゃうしなぁ〜、なんて遠い目で佇んでしまっていた私だったけど、暫くすると『ぐ………きゅるきゅー』と現実に引き戻してくれる音が周囲に響いた。
「「「あ……」」」
男性陣はさっきまでの言い合いが嘘の様にぴたっと止まり、母は口に手を添えながら『あらあら』と言っている。
だって、成長期ですもん。しょうがないです。
「リアン! これを食うか?! それともこっちがいいか!?」
両手の荷物をがさがさと漁り出したイグニスさんは次から次へと食べ物を取り出してきた。
トロトロに甘辛く煮込んだ豚肉ぽいのに、揚げて砂糖をまぶしたパン、色鮮やかな野菜のピクルスに甘い匂いの果物のジュース、チーズ、にらソースをかけた温豆腐、そして私が一番食べたかったお粥があった。
「―――! イグニスさんありがとーーっっ」
はぅぁ〜! 休日にこれを食べなかったら、明日からの授業のやる気が無くなるとこだったわ!
胴に飛び付いて頭をぐりぐりと押し付けていると、両手が身軽になったイグニスさんが私を抱え上げ『きゅっ』と私を抱き寄せた。
身長差があるから足が宙ぶらりんになって、どぎまぎするので降ろして欲しいのだが抱え込まれていて身動きが取れないです……。
「イグニスさん、あのぅ、降ろして?」
「やだ。やっと会えたのに。まだ良いだろ?」
え―……、ほぼほぼ毎日映像ありで話してたじゃん……。
「顔は見れたけど触れなかった」
はぁ……。ほんと、イグニスさんってでっかい弟だな。お姉ちゃんに会えなくて淋しかったのか。
イグニスさんは火の精霊王だから、上に立つ者という自覚がある分、気を抜いて接せる人は少ない。アス様やうちの家族くらい。
私もそのうちの一人な訳だけど、前世分の記憶もあるからか、実はお姉ちゃんというよりは親戚のおばちゃん感覚で接している。
親戚のノリで甘やかしていたら懐かれた。
「………あー、ほんと、お疲れ様。頑張ったね〜」
「……頑張ったぞ。もっと褒めても良いぞ」
これ以上褒めるのか〜、調子に乗りそうだなぁ、と考えながら頭に手を伸ばしてよしよしする。
イグニスさんは少し頬を染めて締まりのない笑顔になった。
う〜ん、かわいいなぁ。
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