麗蘭の学園生活⑧
空腹で足が重いですが、両親も心配しているだろうと頑張って進めます!
いつもなら10分もかからないこの距離が憎いぃ……。
「あ! やっと来た!! もうっ、心配したのよっ」
ぁあ、やっぱり心配かけてた……謝らなくちゃ、と思っていたら兄が申し訳なさそうに口を開いた。
「お母さんすみません。ちょっと途中で同級生に会ったので」
その言葉に両親は『あらら』という表情を浮かべた。何があったのか分かったようである。
「それは……大変だったな」
「あ、今回は僕はそんなには! リアンが助けてくれたから大丈夫」
「そうなの? ……リアン、やるわね!」
母は、兄の言葉に一旦『え?』という表情を見せたが、きっと私の性格上何があったのかを読み取ったのであろう。
ふふふっと笑いながら私に『良くやった!』と言わんばかりに親指をぐっと上にした拳を向けてきた。
昔癖でしていたら、母が『なぁに、それ?』と聞いてきたので説明したら面白がってする様になった。ちなみに『親指は下に向けてはいけません』とも付け足してお伝えしております。
「そういう事ならしょうがないわ。朝から大変だったわねぇ」
本当ですよ……お腹空きすぎて胃が痛くなってきてるんですから……成長期の食欲舐めるな!です。
「レオン、また女の子に囲まれたのか?」
怒りがなかなか収まらない私の後ろから聞き覚えのある声が聞こえたので振り向くと、両手にいろいろな容器と袋をぶら下げたイグニスさんが立っていた。
兄はイグニスさんだと認めると嬉しそうに微笑んだ。
「イグニスさん、お久しぶりです」
「あぁ、やっと帰ってこれたよ」
そういえば、私が入学して三週間が経った頃、『南地域の小国で魔族が関わってる形跡のある事件が数件起こっている』と精霊同士の連絡網?によってイグニスさんの下に情報が入った。
南地域の国は小さな部族が集まって出来ている。そして、この南地域を守護する精霊王のイグニスさんの声を聴くことが出来る魔術師が代々国王となって治めているのだとか。
今回は、その部族間でいざこざが起こり殺傷沙汰が起こってしまった。
南地域で唯一声を聴くことのできる魔術師が、ある部族に狙われてしまったのだとか。
その部族長を守る為に犠牲者が出てしまったという事らしい。
その争いにどうやら魔族が関与していると情報が伝わり、イグニスさんは解決の為に文字通り飛んでいった。
「こんなにかかるとは思わなかったがなぁ……リアン、会えなくてさみしかったか?」
「? 別に??」
にっと口の端を上げ、ちょっと悪戯っ子の様な笑みを浮かべて私に問い掛けてきたけど、私も入学してからの環境の変化や人間関係、久々の授業で睡魔と戦ったり……と大変だったのだ。
それに正直、イグニスさんの眷属のペレちゃんを通して毎日の様にイグニスさんがテレビ電話の様に顔を見せて伝えてくるのだ。
ここ暫くの私のルーティンに、毎週末のこの時間、イグニスさんの進捗状況を家族に伝える事が加わった位だ。
元々私は『連絡がないって事は元気に頑張ってるんだろう!』と思っている人なので逆に心配してしまった。
まぁ、途中で精霊王の心配なんて時間の無駄だと思い直したけれども。
そんなこんなで、常にイグニスさんと話していた私は寂しいと思う事はなかった……と思っていたので素直に答えたら明らかに落ち込んだイグニスさんが目の前にいた。
「ぇえ〜と、あ、イグニスさんお帰りなさい。元気そうで安心したよ」
そう声を掛けると、ゆっくりと目線を私に向け、じーっと暫し見つめてきた。
……何だろう? どうかした?
「少し見ない間に、また綺麗になったな」
……大人の色気を振り撒きながら微笑んで言うのはやめて下さい……。
読んでいただきありがとうございます。




