麗蘭の学園生活⑦
静寂の中、私は兄に『言いたい事とやらを早く済ませてね』という意味を込めて言った。
「お兄ちゃん、お父さん達待たせてるから急ごう?」
私のお腹も待たせてます!! ……本当にね、くぅくぅ鳴いてるんだからね、勘弁してください……。
「ぁ、うん、直ぐに終わらせるから待ってて」
私の言葉にはっとなった兄はそう言うと、居心地悪そうな集団の方に向かって歩いて行った。
兄の事だから女の子達のフォローにでも行ったのかな?と思っていたが、予想と違って一人の男子の元へと足を進めた。
そうして、側まで行くと兄は肩に手を乗せ男子の耳元でぼそぼそっと何かを言った。
途端、男子は耳を真っ赤に染め腕で口元を覆った。瞳が所在なさげに右往左往し狼狽えている。
また兄が耳元に近づいて何かを呟くと今度は一気に顔色が白くなってしまった。
兄は何を言ったのやら?と、その様子をじっと見ていた私と目があった途端、男子はびくっと直立し体を跳ねさせた。白から真っ赤に変わった顔色、目はうるうるして口をぱくぱくしている。
あ〜〜、この反応って……そういう事なのかなぁ?
私も伊達に前世を含めて六十年近くを生きてるわけではない。
学生時代や社会人時代の恋愛も人並みにあるし、もちろん結婚して子どももいたんだから、流石に『え〜、私、恋愛初心者でわかんな〜い』なんて口が裂けても言わんです。鳥肌たっちゃう。
……それにね〜。私、結婚して大好きな旦那様と子ども達に愛し愛されてたし。最期の方はいろいろあったけど満足して人生を終えることが出来た。
今でも異性で一番愛しているのは旦那様。
十代の子なんて、私にとっては『孫』だわね〜。
実際の私の孫は2歳だったからこんな大きな孫はいなかったけどね。
それでも『うちの孫もこのぐらいのお年になったら好きな人とか出来ちゃうのかしら?』なんて、ついついおばちゃん通り越しておばあちゃん目線で見てしまう。
要するにだ。十代、下手したら二、三十代の異性ですら私にとっては恋愛対象にはならないようです。あ、おじさま好きって訳では無いですからね。
―――話が逸れました。現実に戻ろう。
兄は私に前世の記憶があると分かっても変わらずに妹としてめちゃくちゃ可愛がってくれている。溺愛といってもいい位。
なんでそんなに私を可愛がりするのか?
兄に昔聞いたけど、私が生まれる前後の兄の葛藤は幼い子なら有り得る話だし、私が生まれた後の兄の心境の変化は、元々の兄の性格の良さがあってのことだと思うんだよね。
でも、いつも私に『リアンのおかげなんだよ』と言う。
そんな事はないんじゃない?っていつも言うけど、毎回『リアンの言う事は否定したくないんだけど、この事に関しては駄目だよ』とにっこり笑顔で言われてしまう。
だから近頃は受け入れる事にした。
自分の考えをずっと否定されるのは私だったら辛いし、それに兄がそれで幸せそうにしてるならいいか、と。
そんな兄が常日頃口にしているのが『リアンの相手は僕より強い人じゃないと許しません!!』です。
多分、今とっている行動はその事に付随しての事なんでしょうが……私、本当にそういう気持ち、さらっさら無いんですよ、兄……。
だから、私よりも自分の幸せ見つけてください!
あ! ちなみにそこの三人娘は却下ですからね!!
読んでいただきありがとうございます。




