麗蘭の学園生活⑤
「そうなんだぁ〜! 麗蘭ちゃんって言うのね! 獅耀君に似てすっごく可愛いねぇっっ」
……いえ、私と兄はあんまり似てないと思うのです。父似の兄と母似(祖母似でもあった)の私ですからね。
テンション爆上がりしながらもうっすら安堵の混じった表情のお姉様方を見て、多分遠くから私達を見た時に妹と思われてなかったんだろうなぁ〜と推測。
私が入学してから早数ヶ月。妹がいるのは知っていても私の詳しい容貌までは知らなかったんでしょうね。
兄が中等科にいた頃は毎週末になると両親と私が街に降りてきて兄を待っていたので数年前の私ならちろっとは見かけているかもしれない。でもそれも最初の頃だけと思うのです。
どうしてかと言うと、毎回の様に時間になっても待ち合わせ場所に現れない兄に事情を聞いてみたところ………どうやら週末に私達が待ってる場所に行こうとすると何処からともなくいろんな人が声を掛けてきて、ついて来て大変な事になっていた事が判明。
何とか自分で解決しようと思ってたらしいけど『これは大変だ!』と、これは対策するべき案件だと家族で話し合った。
結果、家族で『認識阻害』を発動させることにしたという、そんな経緯があったので意外と私と両親の顔は知られてないと思うのです。
あとは物理的なところもあって、私のいる初等科との距離が結構あるので学園に通っていても接点が無い。
それと高等科に進級してからの数ヶ月は缶詰め状態と言っても良いくらいに学ぶ事が多く休日にお出かけなんて余裕はないのだそう。
……あれ? 兄とは毎週末一緒に過ごしてるけど……うん、きっと大丈夫なんだろうな、さすがです。
学園を卒業した学生達は、魔術師として国または民間の様々な職につくので、その前に職業訓練の様なものを単位として取らなくてはいけないんだって。
その為にギルドで外部依頼を自分達で請け負ったりするので、その前にいろんな事を叩き込まれるし、それが終われば実際に依頼をこなして経験を積んでいく。
この高等科の三年間は、卒業したら即・就職てことだから真剣にやってね!と学園側からの圧力もあって肉体的・精神的にも結構な忙しさなのだとか。
そっか。この歳で世間の波に揉まれるんだね……って、いや、他人事じゃなかったよ! 私もだよ!!
まぁ、魔術師というだけで世間の中でもかなりの特権があるらしいし、考えてみたら良いこともある筈なんだ!
その代わりに学園に在籍している私達から既に緊急時には居場所を通知する魔導具を身に付けさせられてるんだけどね……。
この魔導具は指輪で、左手の親指につけるんだけど、出身校毎でデザインが違う。
世の中に出ても学園の看板を背負ってるってことなので『まさか変な事はしないよね?』という、ここでも学園からの無言の圧力をかけられている訳です……。怖い。
―――ところで、安心したのか更にぐいぐいくる一人のお姉様が兄の前を陣取っていろいろと話し続けております。
すんごいなぁ〜、頬は紅潮させ瞳は潤んでて全身で『恋する乙女』だと言ってる様だ。
後ろの項垂れてた男の子もこっちをちらちら見ながら小さく溜息をついてるな〜。
『恋する青年』よ、がんばれ……。
そういえば兄の恋愛事情ってどうなってるんだろうと、以前万季彌に学園生活をちょっとだけ聞いたんだけど、『獅耀は、人当たりも良いし話しかけやすいみたいでね、男女共に人気者だよ。……まぁ、いろんな人に囲まれてるかな?』と、期待していた回答は貰えず、しかも少々含みがある言い方だった。
それまでは、男の子だし異性には聞かれたくない事もあるだろうなぁ〜、と前世の子育てから学んでいた私だったけど一回気になりだすと止まらなくなったので聞いちゃいました。てへ。
それで聞こうと思って、甘い物好きの兄におやつのクレープをエサにしてそれとなく学園生活を聞いてみた。
……まぁ、聞いたらきゅんきゅんする話ってよりも女の子同士のバトルとかバトルとかバトルとか………『ゔぅわ〜〜……』て兄に同情したくなる様な話ばっかりだったけど……。
そんなこんなで私が入学してからも家族でそれを続けてたんだけど、最近は同級生達も忙しくしていて街で会う事が無くなっていたのでここ最近はスキル発動してなかったんだよね。
油断した途端にこれとは……。
「獅耀君、今からどこに行くの?」
「両親と待ち合わせてるんだ」
にっこり微笑みながらも言外に『急いでるんで行かせて?』と言っているのが聞こえます、お兄様……。
「えーっっ 獅耀君のご両親?! うっそ〜っ 挨拶したいからついていっちゃだめぇ?」
………え? 駄目の前に『何故?』ですよ、お姉様???
読んでいただきありがとうございます。




