倭国の勇者②
ーー皇 冬夜はこの世界において異分子ーー
『世界の理』とはまた違う次元で全てを見護る存在は、判断を下した。
『痛い… いたいっ 痛いっっ』
心臓は締め付けられる様に軋む。
内臓は熱く、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜられて粘りのある塊となり張り付いている様な、吐き出したいのに体内に留まり続けていて苦しい。
自分がまるでウイルスで、体内に侵入したら抗体に捕食されているかの様に……この世界から排除されようとしているのがわかった。
この世界に充満している『魔力』に一切適応できない自分が、この世界の異分子であるのだと見せつけるかの様に自分を殺していく。
『世界の理』は、自分の思惑とは異なる結果になった事に『残念』とは思ったが異世界転移させた命を救おうという気持ちはなかった。
また違う星から呼び寄せればいいか、と考えた。
「嘘だろ?! 俺、死ぬのかよ……」
転移させられた時の僅かばかりの繋がりが『世界の理』の思念を伝えた。
最悪だ……突然、知らない所に連れてきておいて、誰にも、家族にも会えない場所で、苦しんだ挙句に殺される?! 許せない! こんな理不尽な事があってたまるか!!
拳で地面を叩きつけ「ざけんなっっ」と叫んだ。
それを愛し子は遠い空間で聞いていた。
自分らを産み落とした『世界の理』の心無い仕打ちを詫びる為もあり自身で助けたかったが、自分は『世界の理』と余りにも近しい存在であった。
猶予がないのに救う手立てがなく嘆いていると、精霊王の中で一番永くの時間を共に過ごしてきたアスが側に立っていた。
「哀しまないでください。貴方が手を差し伸べれない理由は分かっています。でも、私ならばそれも可能ですよね?」
哀しい眼差しで、遠見の術で映し出された冬夜の姿を見つめるアス。
「私の属性の力は、彼を救う手立てになりますよね?」
********
「初めまして、異世界から渡られた方。私はアースノア。貴方を救いたいのです。どうか私と『契約』を交わして頂けませんか?」
『浄化』により、体内に侵入した魔力を排除。
『結界』によって、魔力回路の無い体内への魔力の侵入を防御。
『豊穣』の力を自然物以外のものに授ける事は初めてだが、彼の者の人生が今後実りあるものに成れば………と想いを込めて祈った。
『浄化』は『神聖力』として体内から溢れ、『結界』によって『闇の魔力を封印する』力となり、『豊穣』の力は身体能力を強化した。
皇冬夜は、魔王を『封印』する事で世界に平和をもたらし、勇者となった。
皇冬夜の血と結ぶ『古の盟約』は、勇者の血が続く限り、土の精霊王をこの世界に永久に縛る楔となっていた。
読んでいただきありがとうございます。




