絵本の真実④
その後の父の話は、所謂、少女と風の王の恋愛話&少女が魔族に騙されて風の王を闇堕ちさせてしまったという内容で。
あまり子どもには聞かせたくない様だったので、私は空気を読みましたよ。
兄は興味津々で(恋愛話にではない様だったけど)父にせがんでました!
おばちゃんとしては恋バナ聞きたくてしょうがなかったんですけどね。残念!!
父は、話を濁して語るということが出来ない、というか誤魔化しながら話すというテクニックがない為、きっと続けていたら子どもの教育上宜しくない内容(と、父の恋バナ)を話すことになると思ったんでしょう。母が後を受けて『私も聞いた話なんだけどね?』と前置きして教えてくれた。
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少女から大人の女性となった『聖女』は風の王を愛した。
けれど、時間の流れが違う種族ということもあり、どう足掻いても一緒にいることが出来ない……と苦しんでいたところに、甘い誘惑を囁く人物と知り合った。
その人物が魔族で。
魔族が渡した『ピアス』は魔導具で、『対のピアスを互いに身につけると、寿命を分けあう事が出来るので共に生きる事が出来る』のだと少女に囁いた。
実際はそんな夢の様な魔導具ではなく。
魔族の手から『ピアス』を受け取り、言われるがまま少女が身につけた時から、『ピアス』を媒介に闇が魂を侵していった。
巧妙な手で、少女や周りの者までもが気づかない内に、少しずつゆっくりと闇に染まっていった……。
風の王は性質上、一つどころに落ち着くことはなかったが、季節が冬に変わる前、月桂樹の下で少女と語り合う姿を見ることができた。
風が冷たくなり森も動物も眠りに入る前、風の王はいつもの様に教会の月桂樹の枝に腰を下ろし少女が現れるのを待っていた。
何を話そうか。待つ時間すらもうすぐ少女に会えると思うと愛おしい。
精霊も数多の命ある者達と同じ様に暫し休息の為に眠りに入る。
その前に心寄せる少女と語らいを……その想い出を眠りの間の拠り所とするべく会いに来ていた。
そしていつものように会えていなかった間の出来事を語る。
主に風の王が話すことになるのだが。
風と共に訪れた街の様子や人々のこと、今流行っているもの等、教会から一歩も外に出る事が叶わない少女に聞かせたいことは尽きる事がない。
久々に会えた事が嬉しくてしょうがない風の王は、気付けなかった。少女の変化に。
いや、いつもならどんな些細な話でも心から喜んで見せてくれる笑顔が何処となくぎこちないというのは、流石に風の王にもわかった。
『どうかしたのか?』
そう声を掛けると、少女はおずおずと声を発した。




