絵本の真実③
元々は、人が好きだった精霊王は、そこをつけ込まれた。魔族に。
人も魔族に騙されていた。魔族に真実を知らされた。けど、精霊王は人を赦すことが出来なかった。
赦すことが出来ない自分が嫌になった。
そして、深い傷だけが残されてしまって。
虚無の空間に閉じ籠り、闇が深くなり魔王の力は増していった。
魔王の闇が世界に混沌をもたらした。
『勇者』は『聖女』でもあった。
癒しの力を授かっていた。
魔王と対峙している時、王女は『勇者の力』を振るい原因となる左耳のピアスを破壊した。
『これで世界が救われた……』
安堵し、ようやく対峙していた魔王に目を向けることが出来た。王女が見たものは、涙を流し慟哭をあげる魔王だった。
悲痛過ぎる叫び声に胸が掻きむしられた時、何故か『そうしなければならない』そう思った。
直感だった。
気づいた時には、王女の神聖魔法が発動、魔王を癒していた。
魔王を蝕んでいた闇の魔力が体から逃れる様に霧散。その霧に触れた事で経緯を知ることになった。
魔王の記憶が王女の内に流れ込んだのだ。
*****
風の王は生まれたばかりだった。
そこは『聖霊教國』と呼ばれる『聖霊王』を唯一神として拝する国の教会。
その教会の庭で唯一植えられていた月桂樹の幹からこの世界に生まれた。
精霊はその者が持つ格や魔力量によって『聖霊王』から相応しい体を授かる。
風の王は、六大精霊の中で一番魔力量が多かった。生まれ出た時には青少年の姿形だった。
風の精霊らしく、天真爛漫、興味のある事に没頭している……と思った次の瞬間、そこには姿がなく新たな場所へと移動している。
周囲の者を振り回しているのに人好きする笑顔と言葉で憎まれない。
精霊はもちろん、教会の力ある者達、教皇や枢機卿、聖者、聖女と呼ばれる精霊を見ることのできる者等とも交流を持っていた。
生を受けて80年、精霊にとっては数年の時間を過ぎた時、風の王は一人の少女と出逢う。
酷く怯えた目をした少女。教会の月桂樹の下で膝を抱え込み声を押し殺して涙を流していた。
「なんで泣いてるの?」
純粋な疑問だった。声を掛け肩にそっと手を乗せると、体が大きく跳ね、手を思いっきり刎ねられた。
「―――っ!?」
まさかそんな対応をされるとは思っていなかった風の王は少女に向けて怪訝な目を向けた。
次の瞬間、少女がガタガタと震え出し自分で自分の体を抱え込んだ。
「ご……ごめんなさい!ごめんなさいっ どうか許してください!!」
体を丸めたまま、一切顔を上げる事なく叫ぶ様に謝罪の言葉を口にした。
「え………?」
今まで、その様な対応をされたことがなかった風の王は困惑した。
自分が声を掛けたら皆が笑顔を向けてくれた。
こんな訳がわからない事や言われたことはない。
(『ごめんなさい』って『許して』って……謝罪の言葉だよね……。でも僕に怯えてる………え!?僕なにかした?!……してないよねっ 声掛けて肩に触れただけじゃん! 何で初めて会う子にこんな事言われなきゃいけないの!!)
風の王は、初めて他者から拒否された事で衝撃を受けていた。
風の王は憤慨しながら「なんだよ! 心配したのにその態度っっ おたんこなすっ!」と少女に捨て台詞の様に言って教会の奥にある森の一番高い木の上に転移したのだった。




