絵本の真実①
『はるか昔、人と精霊は仲よく暮らしていました。
しかし、ある日、魔王が地上に現れました。
その後、人は50年間、魔物や魔獣に追われることになりました。
人が暮らせる場所が段々と少なくなっていき、人達の心は深い闇に閉ざされて希望を持てなくなっていました。
王国には勇者の血を引く王女がいました。ヴィヴィシュアナ第3王女は、生まれ出でた時から剣と共に過ごしていました。『聖剣・光龍』がいつも傍らにあったのです。
王女は、長い間、国の民が哀しんできた姿に心を痛め、14の歳に魔王討伐へと旅立ちました。
夜明け前の空の様なラピスラズ色の瞳と深い藍色の髪を靡かせて。
闘いに一人旅立つ毅然とした姿を見た国民は、平和への希望を込めて『宵闇姫』に祈りを捧げました。
困難な旅でしたが、仲間が出来ました。
精霊の王『聖霊王』です。
二人は長く険しい道のりを乗り越え、魔王の元に辿り着きました。
長い長い戦いの末、二人は魔王を倒し、世界は平和になりました。
その後、聖霊王と宵闇姫は精霊の国で幸せに暮しました』
カイがわが家の台所の椅子に座って、ニコニコしている。笑顔すぎて、綺麗な顔が崩壊している………。
机を挟んで、正面に父、横に私を膝に乗せて兄。その横に母。
少しでも、カイと母の距離を取る為の位置。
まぁ、視線は母に固定されているので、父の機嫌は底辺を這っている。
護衛の人達は、カイが『此処はどこよりも安全な場所だから』とにっこり笑いながら言い、家の外で待つ様に指示した。
『外で待つくらいなら森の外に行け』と父に転移させられていたが。
話を進めると、今まで森で見かけたおじさま達は、実はカイが指示してこの家を探させていた人達だと分かった。
この森は、かなりの広さで魔獣も現れる為、おじさま達は皆、殺気立ってたらしい。
父はこのおじさま達に魔法で目的を聞き出していた。状況を把握し『妻に会わせてたまるか!』と、問答無用で魔法で森の外に転移させていた。
そんな事が十数回あり、おおよその家の位置の見当が付いたので今回カイが出張ってきた、と。
「カイエン・クァルト・ランヴィドール。用件を言え。そして、さっさと帰れ」
父の圧が凄い。もちろん、カイに対してだが。
毒を吐かれているにも関わらず、カイは嬉々として母を見つめ口を開いた。メンタルすご………。
「あぁ、ヴィヴィシュアナ様。前回お会いした時から7年が経ちますが、変わらずお美しい……いえ、更にお美しくなられていらっしゃいます。お迎えが遅くなりましたが、準備も整いました! 我が王国へ迎えさせてください!」
「!?!?」
「「「??????」」」
カイが発言した途端、父は怒りが上限突破した。私達は『なに言ってんだ?』と首を傾げる。
「どうやら、この国の王族の頭は幼少期から成長しないようだな」
「ふふ……宵闇姫に依存している貴殿に言われるとは。思わず笑ってしまいました、失礼」
「これが依存に見えるならお前はやっぱりお子様だ。そして、自分の感情を振り回し周りの者の声を聴くことすらしない、自己中心的なお子様にヴィーは勿体ない。残念だったな、態々ここまで来て『お美しい宵闇姫』に自分の至らなさを見せるだけだったとは」
カイを『男』としてみる価値もない様な、雑魚を相手しているみたいな、心から『どうでもいい』と思っていることが分かる素晴らしく美しい笑顔だった。




