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青年に出逢った

 物凄く胡散臭い笑顔で私に声をかけた青年は、私が口を開くのを待つつもりの様で、後ろで手を組んで腰をかがんでこちらを覗き込んできた。

 ……ここから立ち去ろうか、と腰を浮かせた途端に周囲から何かしらの気配を感じた。

 それは『かさっ』という音や『チャキッ』という音だったり。血の気が引いたのは言うまでもない。


「驚かせちゃったかな?」


 ふふっと青年が笑い声をあげたが、やっぱりその目には温かみを感じる事は出来なかった。


『私は3歳児! 3歳児!!』


 周囲の気配が2つ3つではない。その事が私に焦燥感を与えているが、今の私には対策できる感はない。いや、おばちゃんでも無理だ!!

 もう、こうなったらやけくそだっ


「うん おどろいたの にぃにはだぁれ?」


 私は、首を傾げながら青年に問いかけた。

 ちょっとでも可愛く見えるように笑顔を心がける。口端が少し引き攣ってるのは……しょうがないだろ! そんな度胸は持ち合わせてないんだってば!!


「あぁ、それは悪かったね。ここには僕の……ん〜? なんだろう……親類? ……家族? みたいな人が居ると聞いてね。会いにきたんだけど、まさかこんな可愛いお嬢さんが居るなんて、と驚いているところだよ」

「……しん、るい?」


 この森には私達家族しかいない。じゃあ、この青年は親戚ということなのか?

 ――え?! この物騒そうな人が!? 嫌だーーっっ


「うん、そうなんだよ。遠い親類だけどね」

「とおい にぃに? おなまえ なぁに?」

「そうだね、カイって呼んでくれたら嬉しいな」


 カイと名乗った青年は、笑顔を浮かべながら突然私を縦抱きし、目線を合わせた。

 翠眼が妖しく光り私の視線と絡んだ。ひぃっ――っと息が詰まった。

 動揺を見せまいとするが、おばちゃんの頃からそんなスキルはなかったっっ 無理!!


「びっくりさせてごめんね。実は、僕に時間があまりなくてね……急で申し訳ないんだけど、出来ればお嬢さんのご家族にお会いしたいんだ」


 突然現れて親戚だといってくるカイ。いつもの私だったら二つ返事で了承していただろう。

 ……あの眼を見てなかったら。

 

 どうしたもんかなぁ? 周りの気配も気になるし、断ったらアウトかな?

 だって、腰浮かせただけで金属の音がするんだぜぃ!? 怖いって……と、考えた瞬間、私の体はカイの腕の中から森の木の上まで舞い上がっていた。


「ーーー!!!!」


 あまりの高さに驚くが声にならない。さっきから私は何に巻き込まれてるんだ?!

 その時、パニックに落ち入りかけた私を安心させるかの様に温かい腕が体をきゅっと抱きしめた。あ、この感覚は……。


「リアン、一人で森の散歩は早い。行きたいのであれば、父に言っておくれ」

「!! おとぉさんっ」


 父の澄んだ金色の瞳には慈愛が滲んでいた。

 ふっ、とやっと息の出来る心地になれた。

 知らず知らずの内に上手く息が出来ていなかった様で、鼓動が速くなる。そして、安心したのか自分の視界が滲んで鼻がじんじんと熱を持ってきた。

 父は、私の背中を優しく摩って「もう大丈夫だから」と微笑んでくれた。


 そして、父は眼下を見据え、低い声で「小僧…」と呟いた瞬間、私達の周りの空気の密度が濃くなった気がした。



 日頃と違う父の雰囲気に戸惑う私とは真逆にカイは妖艶な笑みを浮かべながら口を開いた。


「『()()()()()』よ。どうかお怒りを鎮めてください」



 地上から響くカイの軽やかな声。どこか楽し気で父の怒気をさらりと流す姿に寒気がした。




 父の顳顬がぴくっと動くと同時に周りの空気が蠢き出した。


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