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394.三級冒険者ケンツとの出会い 02 sideアリサ

 

「ケイトさん、少しだけ待っていただけますか?急いで食べてしまいますので」


「え?はい、どうぞごゆっくり……」



 唖然とするケイトさんと浮浪者さんを横目に、私は急いで食事を再開。



 ― ぱくっ



 美味しい、本当に美味しい! このパスタ覚えておこっと。


 しかし私の食事再会はこの一口でまた中断されてしまう。



 ― ガタリッ




「いつつ、よくもやってくれたな……てめぇ、もうただの犯し方じゃすまさねぇぜ!」



 なんと、今の雷撃を食らって起き上がる冒険者がいた!



 ― パリッ、ジジジジジジ……



 そして冒険者の周りが俄に帯電し始める!?


 どうやらこの冒険者、雷撃魔法を扱えるようだ。雷撃系の攻撃に長けていたからある程度抵抗(レジスト)できた?


「食らえ、必殺のギガボルト(中級雷撃)!」



 ― ガラガラドゴーン!



 閃光とともに、冒険者が放った雷が襲い迫る!


 しかしこれは……ギガボルト(中級雷撃)と言ったわりには大したことなさそうな?



「ふん」



 ― キン! パシュッ……



 雷撃は私にあたる直前で消滅!


 こんなのストライバーを張る程でもない。気合の結界で十分だ。



「バカな、俺のギガボルト(中級雷撃)が効かないだと!?」


「今のがギガボルト(中級雷撃)?…ごめんなさいキロボルト(初級雷撃)かと思っちゃった」



 決して嫌味じゃなく素で驚いてしまった。それくらいこの雷撃は大したことが無かったのだ。


 しかし私の一言は、この冒険者のプライドを酷く傷つけ癇に障ったらしい。



「舐めんな、ガキぃ!」



 ― シュッ



 自慢らしいギガボルト(中級雷撃)キロボルト(初級雷撃)扱いされ怒り心頭な冒険者!


 顔を真赤にして抜剣した!



 抜いたわね?それならこっちも……



テンタクルローズ(鋳薔薇の触手)



 呟いた途端、冒険者の足元から無数の鋳薔薇イバラが現れ体中に巻き付いた。




 ―ウネウネ……ギュリリリリイィ!



「ぎゃあああああ、いてててて、なんだよこりゃ!?」


「見ての通り鋳薔薇の触手だけど?もがけばもがくほど鋳薔薇の刺が食い込んでいくわ。早く外さないとそのうち植物毒で刺さった箇所が壊疽を起こすけど……どうしたい?」


「わ、わかった!悪かった!勘弁してくれ!」



 私は“ふん”と鼻を鳴らすと鋳薔薇の触手は掻き消えた。


 後から知った話だけど、この男の名はバロン。


 冒険者パーティー〈天翔ける雷光(サンダースカイ)〉を束ねるリーダーで、剣士でありながら雷撃魔法も操るマルチファイターだそうだ。


 二級冒険者として登録されており、魔法はとにかく剣技の方はそれなりに強いらしい。


 性格はかなりの粘着質らしく、ハッキリ言って関わり合いになってはいけないタイプだ。



「うぅ……」

「ひぃ……」



 他の雷撃を受けて倒された冒険者達も目覚め始め、私達と距離を置き始めた。


 さすがにチョッカイを掛けようとする輩はもういないようだ。



 しかしそのとき、ツンとする劇薬の様な悪臭が漂う!



「 !? 」



 驚いて振り返ると、先程の浮浪者さんがお礼を言おうと近づいて来ていた。



「さっきはありがとう。おかげで命拾いしたよ」


「あ、いえ…それよりどうして冒険者から目のかたきに……何か悪い事でも?……ていうか……あなた凄く臭い!少し離れて!」



 ― おえ



 悪臭にえづき、食べたパスタを吐きそうになる。


 失礼とは思うけど、これは我慢出来る限界を超えている!


 うぷっ……


 私の異変に気付いたケイトさんが、慌てて浮浪者さんに消臭剤スプレーをかけまくった!



「すまねぇ、もう何日も風呂に入っていないんだ。俺の名はケンツ、三級冒険者でジョブは魔法剣士(マジックサーベルマン)だ。俺は殺されるような悪い事はしちゃいねぇ、本当だ!」


「初めましてケンツさん。私の名はアリサ、二級冒険者でジョブは魔法騎士(マジックナイト)で登録しています」


「ま、魔法騎士(マジックナイト)?」



 私の正体を聞いて以外に驚いたのか、浮浪者さん……もとい、冒険者のケンツさんは声を裏返して驚いた。



「いや、魔法騎士(マジックナイト)って、あんた剣を持ってないじゃん」



 当然のツッコミ。


 私の聖剣はディメンションアーマーと一緒に亜空間だ。


 腰にはロングサバイバルナイフしかなく、キュロットベースの旅服姿な私はどう見ても魔法剣士には見えない。



「はい、これ」



 私は少し考えたあと、面倒に思いながらもギルドカードを提示した。


 ラミアの森に入る手続きさえ出来れば、この冒険者ギルドには用はない。


 ケンツさん一人くらいに知れたって大丈夫だろう。この人は大勢の人から避けられているみたいだし。



 名前 アリサ

 ジョブ 魔法騎士

 等級 二級上位

 登録 スラヴ王国デボート支部(オリヨールにて申請)

 国籍 スラヴ王国



「スラヴ王国?……あんた、外国人だったのか!?」



 驚くと同時に心配そうな顔をするケンツさん。どうやら根は良い人のようだ。



「し、声が大きいです。こんな人達ばかりでは、素性はあまり知られたくありません」


「ああ、すまん。それもそうだな」



 私の素性を確認して、ケンツさんはギルドカードを返した。


 それから私は急ぎ食事の続きを済ませると席を立った。



「それじゃケンツさん、お体に気を付けて」



 ケンツさんに一言挨拶して、ケイトさんにフォレストラビット討伐の件を伺おうと思ったのだが……



「ま、待ってくれ!」


「まだ何か?」


「俺とパーティーを組んでくれ!頼む!!」


「 !? 」



 なんとケンツさんから突然のオファー!


 彼の顔は真剣そのもの!


 決して軽い気持ちで声を掛けたワケではいことが伺えた。


 熱意は相当なもので、彼から放射される熱を感じるほどだ。


 そしてその熱のせいで、体表から気化したよくわからないものが悪臭となり、一気にブワッと広がった!


 ひいいいいいいいいいいい、臭い! 目、目に染みる!!!!!


 おえっ……


 ケイトさんも再び消臭剤を彼に吹きかけた!


 猛烈な催涙と吐気がどうにか収まり、私はケンツさんに向かって返事をした。




「お断りします」



 こんなの当然却下だ!


 例え何か訳ありだとしても、アドレア連邦の人には絶対に手を差し伸ばさないから!


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