389.チャームアイ炸裂!/vs召喚勇者キヨシ side祐樹&朱里
「なるほど、そう来るか。やつらにもうすぐ目にモノ見せてやれそうだ」
祐樹の目がギラリと光る!
勇者の魅了を掛けるとなると、朱里の目を覚ます事が必須。
そして朱里が起きてしまえば一気に形勢逆転できる!
祐樹は朱里が目を覚ますのを期待するのだが、果たして……
そして祐樹の思ったとおり、キヨシとエスカが朱里を起こしにかかった。
「おい、こら、起きんか朱里とかいう女!」
― ペシペシ
「いつまで寝ているツモリです!この寝虫め!」
― ペシペシ
どうも魔法睡眠薬の効きが良すぎたのか、夢を見るほど眠りは浅いのに、起きる気配は全くない。
むしろペシペシは心地よい刺激となって、朱里をさらに眠りへと誘ってしまった。
「「 何故起きない! 」」
それでもかなり時間が経つと……
「んん……んんんん……」
朱里に覚醒の兆し!
「「 おお! 」」
期待するキヨシとエスカ!
しかし朱里は低血圧気味で寝起きは悪い。
「ふわぁぁぁ……よく寝たぁ……でももう少しだけ……zzzz」
朱里、まさかの二度寝!
― ブチッ!
「「いい加減に起きろ!」」
― ビクッ!
「きゃっ!なに?なんなの!?え、祐樹どうして縛られてるの!?なんで私は素肌の上に鎧を!?エスカさん?……それにあなたは誰!?」
二人から全力で怒鳴られ、寝ぼけながらも目を覚ます朱里!
しかし寝ぼけた頭では、朱里は何が起きているのかすぐには把握できない!
「いいからこっちを向け!勇者の魅了!」
「きゃああああああああああああああああ!!!」
キヨシは寝起きの朱里にいきなり勇者の魅了をぶちかました!
― キュイイイイイイイン……キンッ!キンキンッ!
キヨシの欲望めいた瞳から、朱里のつぶらな瞳に向かって禍々しいオーラがねじ込まれる!
「あ、ああああああああああ!!!!」
ボーっとする朱里……なにか様子がおかしい。
まさか完全魅了されてしまったのか!?
~
「ふふふふ……」
朱里の様子を見て、完全に魅了下にあると確信したキヨシは勝鬨を上げる!
「ふははははは、いいぞぅ!これでこの女は俺のものだ!最初からこうすりゃ良かったぜ!さあ女、おまえは今から俺のものだ!」
朱里はゆっくりとキヨシを見上げ……
「はい、キヨシ様。朱里はキヨシ様のものです。どうぞ末永く可愛がって下さいませ」
朱里は熱っぽい目でキヨシに服従の意を表明。
朱里、まさかの魅了堕ち!?
「うわあああああああああああ!!!そんな馬鹿なぁあああああああああああ!!!朱里ぃいいいいいいいいいいい!!!」
気が狂ったように絶叫する祐樹!
その絶叫を聞いて実に満足そうな表情を浮かべるキヨシ。
「実にいい響きだ。よーしよし、朱里よ。それではあの煩い男に別れを告げてこい!決別式だ!」
「はい、キヨシ様……」
朱里は下着姿に戻り、縛られ床に転がっている祐樹の元へ。
そして告げられる破局の言葉……
「祐樹、いままでありがとう。でもごめんね。朱里はこれからキヨシ様の女になるの。だからこれでお別れだね」
朱里はほんの少し申し訳ない笑みを浮かべていたが、すぐに歪んだ笑みに変わり祐樹を蔑むように見下した。
「嘘だああああああ!朱里、目を覚ましてくれ!勇者の魅了なんかに負けないでくれ!」
祐樹は芋虫のように這いながら、朱里の足元に近寄ろうとするも……
「寄るな、気持ち悪い!」
― ボコオオオオオオオオオオ!!! グシャッ
朱里の爪先蹴りが祐樹の顎を砕く!
しかし祐樹はなおも縋り寄ろうする!
「いやだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛あ゛あ゛あ゛あ゛がりぃぃぃぃいいいいい!!!」
しかし祐樹の心の叫びは通じず、それどころか朱里はイラっとする表情に変わる。
そして朱里の爪先が無慈悲に祐樹を襲う!
「煩い!纏わりつくな死ね!
死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!
あんたなんか死んじゃえええええええええええ!!!!!!!」
― ドココココココココココココココオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!
「ぎゃがああああああああ!!! うう……朱里……俺の朱里……」
「俺の朱里?悍ましいこと言わないでよ!あんたなんか大嫌い!ほんと、なんでこんな男と今まで一緒にいたのかしら?一緒に過ごした無駄な時間を返して欲しいわ。ペッ!」
朱里は祐樹を死体蹴りにして全身の骨を粉砕、ベチャリと朱里の唾が頬に浴びせられる。
そのうえ朱里は真っ赤な下着姿で祐樹の顔面をこじるように踏みつけた!
― フミッ!
「ふふふ、私からの最後の贈り物よ。存分に楽しみなさい!」
― ギュリリリリリィ!
「あが、あがががががががが!」
その様子を観て、キヨシは実に満足した。
「よしよし、朱里よくやったぞ。さあ、その忌々しい下着を脱いでこっちに来るんだ」
「はい、キヨシ様!」
朱里は言われるがままにローズレッドのランジェリーアーマーを脱ぎ、一糸まとわぬ姿でキヨシに寄り添った。
露にされたシミ一つない瑞々しい肌……勇者の本能は爆発寸前だ!
キヨシは朱里の腰に手を回し、強く引き寄せ身体を密着させる。そして勝ち誇ったように祐樹に見せつけた。
「ふはははは、祐樹とやらよ。朱里はたった今から俺の女だ!そこで血の涙を流しながら、俺達が愛し合う様を見ているがいい。キヨシ様からのせめてものプレゼントだ!」
「うう……ぢぐじょう……ぢぐじょう…………」
全身の骨を砕かれクラゲにされた祐樹には、もはや何もできることはない。
血の涙を流し、これから始まるキヨシと朱里の痴態を、指すら咥える事も出来ずに傍観するしかないのだ。
「ふははははは!実にいい気分だ!最高だ!さあ朱里、こいつの目の前で思いっきりやるぞ!」
「いやですわ、キヨシ様。そんな『やる』だなんて……でも朱里はキヨシ様のモノです。早くお情けをくださいませ……」
腰をモジモジさせながら、熱っぽい目でキヨシを見つめる朱里……
もはや朱里の頭には祐樹の思いは微塵も無い。
ただひたすらにキヨシを欲する雌と化していた。
「ふふふ、今宵は徹底的に可愛がってやるぜ……」
「キヨシ様……」
― トゥクーン……
偽りのトキメキが鳴る……
朱里は目を瞑り、分厚いキヨシの唇を受け入れた……
「悪夢だ……朱里……」
唇を噛みしめ、祐樹は絶望に身をよじった。
「ふははははは!最高だ!最高の気分だ!めはははははは!!!」
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てな感じの《ゲスい妄想》をキヨシはしていたのだが、勇者の魅了後に朱里が発した最初の言葉は――
「はぁ?ふざけないでよね!なんで私があんたの女にならなきゃならないわけ!?ていうか、あんた誰よ!」
「「 へ!? 」」
それはキヨシとエスカにとって全くの予想外!全くの真逆の反応!
キヨシにとってはまさかの塩対応な言葉に困惑している!
「ふふふ……ヤツめ、戸惑ってやがるぜ」
祐樹はニヤリとほくそ笑んだ。
やはり、同じアース世界の召喚者である朱里に勇者の魅了が効くわけがない!
「な、効いてないのか!?」
「もしやこの娘、魅了耐性があるのでは!?キヨシ様、重ね掛けして下さい!そうすれば必ず!」
「わかった!勇者の魅了!勇者の魅了!勇者の魅了!勇者の魅了!チャームアイィィィィィィ!!!」
キヨシ怒涛の勇者の魅了!重ね掛け!
しかし重ね掛けなどしても効果があるはずもなく……
「チャームアイ、チャームアイって、鬱陶しい! 身体強化4倍、朱里パーンチ!」
― ベキッ! ギューーーーーーン……ベキャン!
「ほんげぇえええ!ぐえ!?」
キヨシは朱里の拳をモロにくらい、頭から壁に向かって吹き飛んだ!
「よっしゃ!」
縛られている祐樹は心でガッツポーズ!それから朱里に向かって叫ぶ!
「朱里!俺にファイヤーボールを撃て!」
「ええ!?あ、うん!ファイヤーボール!」
― ボウッ! ジュジュッ……
祐樹の意図を察した朱里。
小さな火球が可愛らしい手の平から飛び出し、祐樹のサナダロープを焼き切った!
「よーし、でかした朱里!あ、今は近くに寄らないでくれよ。おまえの鎧、キヨシってやつにくまなく舐められて、唾液まみれでバッチイからな」
「唾液!?うわ、なんか鎧が生臭い!あの人なんなの?鎧フェチ!?」
朱里は、頭から壁に突き刺さったキヨシを気持ち悪そうに目をやったあと、自身にホーリーピュアファイを掛けた。
金色の粒子に包まれ、鎧にこびり付いたヨダレがスッキリと浄化された。
それでも朱里はまだ気になるのか、鎧のあちこちを嗅いでは首をかしげている。
そんな様子を見ていたエスカはただただ驚愕!
「この娘、勇者の魅了が全く効果無い!?それに今の金色の粒子……」
博識なエスカは何かを思い出しながら考えを纏め、答えを導きだそうとする。
「魔法を行使する際に金色の粒子が現れるのは聖女だけだったはず。ヒモト人じゃなく異世界召喚者?でも召喚者の中から聖女が現れるなんて聞いたことが無い……だけど、よく考えたら決してあり得ない事ではないわ……」
エスカがブツブツ言っている間に朱里は服を着直し、祐樹は自分達の荷物を探し出し纏める。
「あなたまさか召喚聖女!?なら男も召喚者!?そういえばさっきライディーンって……まさかこいつも召喚勇者なの!?」
「さあて」
「何の事やら」
祐樹と朱里は嘯いた。
― ガボゥッ!
「クソッ、やってくれたな!」
キヨシが壁に突き刺さった頭を引き抜くなり、エスカの見解を否定する!
「エスカ、そんな訳はねぇ!連邦の召喚者は全て知っている!こんな奴らはいない!」
「でもキヨシ様、この二人は外国人なのです。もしや仮想敵国から送り込まれた刺客なのでは!」
「そうだった、こいつらは外国人だったな。だとしても戦ってみれば分かる事だ!おいキサマ、今から俺様が直々に相手してやる!朱里はその後ふんじばってくれるわ!」
キヨシは祐樹を殺す気満々で身構える!
「別にいいぜ。どの道テメーらにはキツーイお仕置きをするツモリだったからな。デフォイメント!」
― ギュルルルルルルルルルゥ……
祐樹の身体も和洋折衷なディメンションアーマーに覆われた!
そして大小二本の聖刀をスラリと抜いた。
「祐樹、殺しちゃダメだよ!それでは……いざ尋常に勝負!」
なぜか朱里の号令で決闘開始!
「はっはー!勇者に盾突くやつは皆死ぬがいい!くらえ、必殺ジゴブレイク!」
― バリバリバリ、ゴワッシャアアアアアアアアアア!!!
ジックリと力を溜めた後、バリバリと雷音を立てながらジゴブレイクが炸裂!
怒涛の雷斬波が祐樹を襲う!
それに対して慌てるエスカ!
「キヨシ様!こんなところでジゴブレイクを使うなんて!?」
― ビシッ!ベキャアアアアアアア!
雷斬波の余波で、半壊する店の地下室と上部階層!
しかし祐樹は眉一つ動かさずに――
「ふん!」
二本の聖刀を軽く十字に振り抜いた!
― ガラガラガラ………ボシュウゥ……
祐樹の聖刀一振りの前に、キヨシの放ったジゴブレイクはあっけなく消滅。
「なに!そんなバカな!?」
全く予想外な事態!キヨシは次の一手が思い浮かばない!
どうやらこのキヨシという召喚勇者、実戦経験はあまりなく戦いには全く慣れていないようだ。
レベルもそれほど上がっていないように思える。
「なんだ、この弱いジゴブレイクは?期待外れなヤツだな。それ、縮地!」
― ブンッ!
祐樹の姿がキヨシの視界から消える!
「な、どこ行きやがった!?」
キョロキョロと見回すキヨシ。
アドレア連邦の召喚勇者は縮地を知らない。
初めての縮地使いとの遭遇に、キヨシは軽くパニックになる。
そのキヨシの背後から――
「ここだよ、バーカ」
「うぉっ……!?」
―ガッ!
祐樹は聖刀のツカでキヨシの後頭部を強打!
「がはっ!」
― ズシャリ……
キヨシはあっけなく崩れ意識を手放した。
「ひいいいいいいい!召喚勇者をたった一撃で屠るなんて!」
エスカは腰を抜かしてへたり込んだ。
「人聞きの悪い事を言うな、気絶させただけだ!屠っていないぞ!で、あんたの処遇だが……」
祐樹はジロリとエスカを睨む。
「す、すみませんでした!何卒ご勘弁を!どうか殺さないで下さい!!!」
土下座しなおしてエスカは必死になって命乞いを始めた。
しかし祐樹はニタリと悪ガキのような笑みを浮かべた。




