322.決着(後)
「さあて、それじゃあ!」
「思う存分ぶっちめてやろうぜ!」
ユーシスと祐樹は鬼の形相で、改めてネストルとルイスに対峙する。
アーミアから『ネストルとルイスは洗脳されている可能性有り』と報告は受けてはいたが、ルイスはともかく、ネストルに関しては徹底的にブチのめさないと気が治まらないユーシスと祐樹!
「ルイス、正直おまえとは戦いたくない。その禍々しい剣を捨てて投降しろ!」
「ネストル、実力は完全にこちらが上だ、今降参したら9割9分9厘殺しで勘弁してやるぜ!」
ユーシスと祐樹はそう言い放つが、ルイスの様子がどうもおかしい。
「僕ハ、アリサを救うンダ……必ズ助ケるンダ……聖女かラ解放サセるンダ……アリサを幸せニするんダ……」
「ルイス、おまえ……」
ルイスに自我はすでになく、ただアリサを救いたい想い・思念だけが残っていた。
容姿もすっかり変わりはて、歪に再生した組織はまるで蟹や蠍のような殻に覆われている。
一方ネストルは――
「降参だと?冗談じゃない。ようやくアリサと朱里を美味しく頂戴する方法がわかったというのに……ふんっ!」
― ドスッ! グルンッ! ドシャッ!
「ぐギャっ!」
「「 !? 」」
なんとネストルは背後からルイスを魔槍で貫き地面に叩きつけた!
「おまえっ!」
「何のつもりだ!」
ビクンビクンと痙攣するルイスのシャツのボタンを引きちぎり、ルイスの胸に埋め込まれた3つの黒魔石のうち2つを抉り取る!
「心配するな、急所は外してある。でかい黒魔石も一つ残してあるから死にはしない」
そう言ってネストルは自分のシャツをはだけ、ポケットのエリクサーを飲みながらルイスから奪った2つの黒魔石を胸に押し付けた!
― ブシュウ、グゴゴゴゴゴ……
「ふごおおおおおおおおおおお!!うえああああああああ!!!!」
黒魔石はブスブスと燻りながらネストルの胸に同化した。
今、ネストルの胸には、元々同化させていたものも合わせて5つの黒魔石がひしめいている。
― ぞわっ
「うえええええ……俺、ああいう蓮台みたいなやつ苦手なんだよ」
祐樹はどうやらトライフポフォビア恐怖症のようだ。
「実は俺も苦手なんだ」
ユーシスもゾワゾワと悪寒が走る。
「好き放題いいやがって……とは言え、本当は僕も苦手だけどね。だがこれでおまえ達の力を確実に上まわったぞ!黒魔石暴走稼働!平行励起!」
― バシュウッ!
「ふぉおおおおオオオおおおおおおおおおぅ!」
胸に埋め込まれた5つの巨大な黒魔石、さらには改造魔槍ルノードシャティヨンの黒魔石、計6つの黒魔石を平行励起させ、ネストルは勇者を上回る超絶パワーを引き出した!
「うがあああアあ!!!!はぁ……ハァ…… さあユーシス、祐樹、戦いハこれカらダ!」
「あいつマジか!人間を辞めるつもりか!?」
「何があいつをそこまでさせる!」
「何がっテ?そンな事きまってイルだろウ!おマえ達を倒シ、アリサと朱里と凄イ気持ちイイ事をシまくって、ハーレム王にナるためダ!ハーレム王にナル事は僕ノ子供の頃かラの夢なんダああああアあアア!!!!」
「こいつガキの頃からそんなエロい野望を!?」
「いったい、どんな幼少期を送っていたんだ!」
「フフふ、知りたイなら教えテやろウ。貧乏農家の三男に生まレた僕ハ、幼馴染のメグ、マコ、アッコの三人ヲ同時に好きにナり、しカしどうシても一人だけヲ選ぶことが出来なカった僕ハ、生活苦もあっテ……」
ユーシスと祐樹のリクエストに応えて、幼少の頃からの苦労話と愛の遍歴を語り始めだすネストル。
「ああ、そういうのいいから」
「少しでも興味に思った俺達がバカだった」
面白そうではあるが長くなりそうなので、ユーシスと祐樹はネストルの一人語りを慌ててやめさせた。
「話を振ってオいて断るとハ失礼な奴らダ!そんな奴にハお仕置きが必要だナ」
― ブオンッ!
ネストルは魔槍ルノードシャティヨンを力強く一振りしたあとピタリと構え……
「ラベリーランス千峰閃!」
― ブババババババババッ!
秒間千突の槍撃がユーシスと祐樹を襲う!
「うおっ!?」
「なにぃ!?」
すでに過剰身体強化5.5倍と身体強化4倍を使っていたユーシスと祐樹だが、それでもとても捌ききれず被弾しながら後ろに下がる!
「フシュルルルル……どうダぁああア、ユーシス!祐樹!」
ネストルはそのまま槍撃の手を緩めずにユーシスと祐樹を追い詰める!
― ビュンッ! ギュンッ! シュババアッ!
「くそ、ルイスと違って、元が女神の祝福でパワーアップした1級冒険者だからな。そこに黒魔石の効果が加わってとんでもない事になってやがるぜ!」
「ああ、ぽっとでのモブかと思ったが、けっこう……いやかなり手ごわい!」
「シュシュウウ……ようヤく僕の本当の強さヲ認めたカ!さア楽にしてやるゾ!縮地!」
ネストルは縮地を織り交ぜ超高速領域の戦いへ突入!
「ぐっ、こっちも縮地!」
「祐樹、少し気張ってくれ!大砲を撃ってやる!」
「まかせろ!」
祐樹が超高速領域で戦っている間に、ユーシスはモーションの大きい大技の準備に入る!
― バシュッ!バシュシュ!キンッ!ガキン!
「ユーシス、今だ!」
「 炎 獄 流 星 斬 !」
ユーシスの必殺技、炎獄流星斬!
― ゴオオウ!ゴッパアアアアアアアアアアアアン!
紅蓮の炎を纏った聖剣の剣撃波が、ネストルに直撃!
「うぎゃああああアアああああああああアアアア!!!!!」
― ブシュウ……ジュウウウウウ……
ネストルの身体は半分に千切れかけ、肉や内臓が炎に焼かれ、とんでもない状態になっている。
「「やったか!?」」
― ブシュウ……シュウウウウウウウウウウウゥ
「コ、ここ、コんなもノ全く効かないナ、ななななナ」
「「 !? 」」
なんとその状態からネストルは、異常な組織に覆われ再生していく!
― ブオウ!
「うぉ!?」
「ぐぬう!」
魔槍の一振りの圧でユーシスと祐樹は吹き飛ばされた!
「おいおい、さっきより強くなりやがったぞ!?」
「まるでスーパーサ〇ヤ人みたいな奴だな」
「なんだそりゃ?」
「気にするな、俺の世界の漫画の話だ」
「フはははハ、サあ覚悟はいいカ?死ななイ程度ニ八つ裂きニしてやル!」
信じられない事に現状ネストルの方が二人を上回っている!
ブリジットがルイスとネストルに与えた特別の巨大黒魔石。
その6つの平衡励起は、召喚勇者と真正勇者の力をも遥かに上回るのか!?
Lu~♪ Lulu~♪……
「 ? 」
Rara♪ Lu~♪ ………… Lu~♪ Lulu~♪…………
「なんダこの歌声ハ?」
Lu~♪ Luru~♪ Ευλογία της εξουσίας για γενναίους και φίλους Lu~♪
(女神の勇者には、力と勇気の祝福を与えましょう)
「なんだ、急に腹の底から力が沸き上がる!?」
「この声、まさか!」
Lu~♪ Εξαλείψτε τη δύναμη της καταστροφής του εχθρού Lu~♪ Lulu~♪
(仇なす者よ、災いの力を消し去らん)
― シュゥゥゥゥゥゥ……
「うグ、力が抜けていク……なぜダ!?」
Ra~♪ Lura~♪ Καταστρέψτε τον εχθρό της θεάς Ra~♪
(さあ、女神の敵を殲滅なさい……)
「「アリサが歌っているのか!」」
ユーシスと祐樹が振り返ると、祈りの姿勢で声高らかに戦の聖歌を奏でるアリサが!
突如アリサに発現した聖女の歌の一つ、【勇者への聖歌】!
― メキメキ……ミチミチ……
【勇者への聖歌】は、ユーシスと祐樹に神聖な力を注ぎ与える!
一方で勇者達の敵、ネストルに対しては、絶望的に弱体化させる!
超強烈なバフ効果とデバフ効果!
ユーシス・祐樹とネストルのパワーバランスが再び逆転する!
「バカな、コんな事ガ!」
「やるぞ、祐樹!」
「おう、ユーシス!」
「ひゅイ!やめロ!来るナ!ラベリーランス千峰閃!」
― ブババババババババッ!
また秒間千突の槍撃がユーシスと祐樹を襲う!
「ふんっ!」「はっ!」
― ブオッ!
しかしネストルのラベリーランスはユーシスと祐樹の剣の一振りで全て防がれてしまった!
「っ――――!?」
― ピリッ、ジジジジジジ……パシッ!
ユーシスと祐樹の身体に聖雷が帯電していき……
「「 ツイン・ジゴブレイク!!!!!! 」」
― カッ!ガラガラガラ!ドッシャアアアアアアア!!!!!
パワーアップしたユーシスと祐樹のジゴブレイク同時雷斬撃!
それが一寸の狂いも無くネストルにクリーンヒット!
「るぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
― ベキイイイッ!ズッシャァアアアアッツ¥!
その破壊力は魔槍ルノードシャティヨンを再びへし折り、
カニの殻のように盛り上がったネストルのプレート状組織を全て粉砕した!
ネストルは深刻なダメージを受けた!!!
― ビクン、ビクン……バシュウ……
身体のあちこちが雷気破裂を起こし、再生がおぼつかないネストル。
それでも辛うじて虫の息で生きてはいるようだ。
そして――
― ピシッ!パキッ!
魔槍ルノードシャティヨンに実装されていた特別性の黒魔石が音を立てて砕け散った。
ついにユーシス達はネストルに完全に勝ったのだ!
「今度こそやったろ!魔槍ルノードシャティヨンも再生不可能だな」
「ああ。ネストルの方も、この忌々しい黒魔石を外しておこうぜ」
ユーシスと祐樹がネストルに近づいて、胸の黒魔石に手を掛けようと思った矢先――
― パチパチパチパチ♪
どこからか拍手が聞こえた。
「いやー、勝ったユーシスさん達も、負けたネストルさん達も、実にお見事な戦いぶりでした」
「本当に素晴らしい戦いですよ!それで濡れ場シーンはどうなったんです?」
そこには拍手をしながらニコニコ顔の女性が二人……歩み近づいて来る。
「え、アビゲイルさん、なんでここに……」
「もしかして加勢に来てくれたのかな?」
ユーシスと祐樹はキョトンとした顔で二人の女性を見ていたが――
「ユーシス、違う!この人はアビゲイルさんじゃない!この人はきっと――」
この二人の正体に気付いたアリサは顔色を変える!
「はじめまして……ではないですね。私は愛の伝道師ブリブリこと、ブリジット・ライカー」
「同じく私は愛の伝道師マルマルこと、マルタ・ノッカータ」
「「以後、お見知りおきを」」




