323.遭遇、ブリジットとマルタ!
「はじめまして……ではないですね。私は愛の伝道師ブリブリこと、ブリジット・ライカー」
「同じく私は愛の伝道師マルマルこと、マルタ・ノッカータ」
「「以後、お見知りおきを」」
― ざわっ!?
突然のブリジットとマルタの登場に、ユーシス達は驚くと同時に身構えた。
「あガ、ぐ……」
「ぐガが……ガガ……」
「あらあら、ルイスさんもネストルさんも、随分と酷くやられてしまいましたねぇ」
「二人とも虫の息の上、肉体・魂ともに浸食されています。どうやら限界以上の力に手を出したようですね」
ブリジットとマルタは、身構えるユーシス達をスルーして、今にも死にそうなルイスとネストルの心配をする。
「じゃあマルタ、お願いしますよ」
「おまかせを……では彼らの黒魔石を回収してと……」
「ぐっ、なに勝手に……」
「祐樹よせ、迂闊に動くな!」
ユーシスが祐樹の肩を掴んで制する。
マルタは、ルイスとネストルの胸に埋め込まれた巨大な黒魔石を強引に剥がし、衿合わせの懐にしまった。そのおかげでマルタの胸が豊乳に見える。
「同志ブリジット!ほらほら!」
「あーはいはい。黒魔石はこちらに渡しなさい。あと早くして下さいな。ユーシスさん達が怖い顔して待ってますよ」
はしゃぐマルタを煩わしそうに相槌するブリジット。
「では……『開け、虚櫃への回廊、深宙の女神セントールの名において、その力を顕現せよ リザレクション!』」
― ボウッ!
ルイスとネストルの身体が一瞬にして黒き炎に覆われ焼かれる!
「ぎゃあああああああああああ」
「ぐおおおおおおおおおおおお」
二人の断末魔のような悲鳴!
「ルイス!」
「ルイスくん!」
ルイスとネストルの身体は完全に灰となり消滅。
その後、炎の中から二人の新たな身体が現れる!
「さて次は、二人の洗脳を解いてと……しばらく眠っていただきましょうか。《ディープスリープ》!」
ブリジットは、ルイスとネストルにかけた弱い洗脳術を解除してから、二人を深く眠らせた。
ルイスとネストルを使い捨てにせず、きっちり回復をしたブリジットとマルタを意外に思いつつ、ユーシスと祐樹は緊張しながら問い詰めはじめた。
「あんたらがルイスとネストルを唆し、俺達にけしかけた張本人なんだな!」
「いったい何故だ?何故俺達に絡んで来る!」!
「「 余興です! 」」
ブリジットとマルタは力強く凛とした声で返答した。
「「「「 は? 」」」」
一瞬ブリジットとマルタの返事の意味が分からなかった4人。
「えっと、厳密には趣味と実益を兼ねた救済と余興?」
「私達は愛の伝道師、色恋沙汰に悩むルイスさんとネストルさんに手を貸す愛のキューピットみたいな?同時に将来的脅威の廃除?」
『んー?』――ブリジットとマルタは顎に人差指をあてながら考える仕草をする。
「は?余興?愛のキューピット?あんたら何を言ってんだ!?」
「まさか遊び感覚で俺達の関係を壊そうとしていたのか!?」
「酷い!なんでそんな事を……前の時だって危なく祐樹と関係を持ちそうに……」
「私も……もう少しでネストルに汚されて……どうして!?」
激しく憤る4人!
しかしブリジットの実力は、アビゲイルと同等と聞かされている。
『それが本当なら、ヘタに動けば殺される』――4人は掴みかかりたい衝動をグッと抑える。
ブリジットが静から動に転じないよう探りながら……
「立ち位置の違いじゃないですか?私達の行いはルイスさんとネストルさんにとっては愛の助力だったはずですよ?まあこの様子では思いは遂げられなかったようですが……」
ブリジットは、浜に転がるルイスとネストルを、同情の目で見ながらそう言った。
「それにね、アリサさんはルイスさんと結ばれた方が、良かったのではないですか?」
「なんだとっ!?」
「どうして!?」
「だってユーシスさんはアリサさんの幸せを望んでおられるのでしょう?ハッキリ言って、ユーシスさんではアリサさんを幸せにするどころか、いずれ一緒に死地に向かうことになりますよ?
だったらルイスさんにアリサさんを託して、聖女の呪縛から解き放ってあげないと。聖女でなくなればユーシスさんの巻き添えを食うことは無いのですから」
「ね?そうすればルイスさんはアリサさんと結ばれてハッピー♪
アリサさんも聖女の呪縛から解放されてハッピー♪
そしてユーシスさんもハッピーになったアリサさんを見てハッピー♪
みんなハッピーで誰も損しないでしょ?」
「ふざけるな!そう言ってルイスを誑かしたのか!あいつも同じような事を言っていたぞ!」
激昂するユーシス!
― キュイイイイイイイン……
「ええ、そうですよ。ルイスさんを誑かしました。それが何か?」
「だけどこれは本当のことです。勇者のユーシスさんでは聖女のアリサさんを必ず苦しめ、いつか死に至らしめる……間違いありません」
「ぐっ……そんな……俺ではダメなのか!?ルイスに任せるべきなのか!?」
ブリジットの洗脳術に、ユーシスが惑わされる!
ユーシスの心が揺らぎはじめる!?
「ユーシス、しっかりして!この人達の言葉に耳を貸さないで!私はユーシスがいいの!ユーシスでなければダメなの!」
アリサを手放そうとするようなユーシスの言葉に、アリサは血相を変えてユーシスに縋る。
「駄目ですよ、アリサさん。あなたがユーシスさんの傍にいれば、それはそれでユーシスさんを苦しめてしまいます。か弱きあなたは必ず命を落とす……その時ユーシスさんの心は壊れ、あなたを追って命を捨てる事でしょう」
― キュイイイイイイイン……
「そんな!私がいるとユーシスを苦しめる……そしてユーシスは心が壊れ、私を追って死ぬ……そんなのイヤぁ!……でも私がルイス君の元に行けば、ユーシスは死ななくすむ……だったら……」
アリサもブリジットの洗脳術に堕ちる!?
「祐樹さんと朱里さんも同じですよ。セフィースの召喚勇者と召喚聖女とは言え、あなた方も必ずこれから先の異変に巻き込まれます。今のうちに朱里さんをネストルさんに委ねてみては?」
「朱里さんも祐樹さんを手放すべきです。このままでは祐樹さんの足手纏いとなり、祐樹さんはいずれ命を落とします」
― キュイイイイイイイン……
「う……朱里をネストルに……しかし、その方が朱里は幸せになれるなら……」
「祐樹、ダメ!そんなこと言わないで!私は祐樹でなきゃ……でも私がいると祐樹も死ぬ!?……そんなの…………待って、この感覚はどこかで……」
「そうだ……この感覚は王都で俺達が受けた…………もしや!?」
祐樹と朱里は王都にいる頃に受けたアビゲイルの洗脳魔法を思い出した。
そして今ブリジットから受けているのは全く同種のものだ!
「ユーシス、目を覚ませ!これは奴らの洗脳術だ!」
「アリサ、気をしっかり持って!そうすればきっと洗脳術に対抗できる!」
そう言いながら、祐樹と朱里は腰のホルスターからハリセンを引き抜き――
― スパーーーーーーーーン!
「うべっ!?」
「へぶっ!?」
ハリセンの乾いた音と、ユーシスとアリサの奇声が湖に響く!
― シュワー……
頭の中に巣食っていた負の感性がスッパリと掻き消え、ユーシスとアリサは正常な思考に戻った!
「な、俺は今アリサと別れようと……!?」
「わ、私もユーシスと別れてルイス君の元に……!?」
― ゾッ……
洗脳術により思考が捻じ曲げられ、自主的に別れる選択をしそうになったことに、心底ゾッとするユーシスとアリサ!
「おや、これは予想外」
「まさか、またしても同志ブリジットの洗脳術が破られるとは」
悔しがるでもなく、珍しいものでも見たかのようにキョトンとするブリジットとマルタ。
「出来れば皆さんには事を荒げず、円満に破局していただきたかったのですがねぇ」
「アリサさん、ルイスさんの想いはユーシスさんに負けていませんよ?一度お試ししてみては?」
真顔で提案してくるブリジットとマルタ、それが余計にユーシス達をイラッとさせる。
「ふざけるなっ!なんであんたらの都合で破局せにゃならんのだ!」
「ルイス君の気持ちは十分伝わっていますけど、ユーシスと別れるとか絶対あり得ません!」
当然、断固拒否するユーシスとアリサ。
「姉妹揃って人の心を弄びやがって!」
「誰があんた達の言いなりに何てなるもんか!」
祐樹と朱里もノーを叩きつけた!
「むぅ、最近の若者にしてはなかなか頑固ですね……」
ブリジットは、聞き分けの無い4人の態度に眉間のシワをよせる。
― ポンッ!
マルタは妙案が浮かんだとばかりに、ポンと手を叩いてユーシス達に提案した。
「そうだ!じゃあ別れなくてもいいので私達の仲間になりませんか!」
4月更予定をご覧になられた皆様へ
今回の話は元々次回合わせて一話の予定でしたが、見直すと文字数が6000文字超えていましたので、急遽分割変更致しました。
次回『324.交戦、ブリジットとマルタ! 絶望の戦い」




