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激重第三王子の暗躍無双~禁忌の闇の魔法を隠して無能を演じていたら婚約者が馬鹿にされたので王位を取って周囲を徹底的に黙らせる~  作者: 9bumi


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第16話 僕は本気です

 セシアに連れられたのは、お茶(教養)の授業で使われる教室だった。


 彼女は自らお茶を用意し、僕とジャスミンの前に差し出す。


「「ありがとうございます」」


 セシアがお茶を口に含むのに合わせて、僕とジャスミンも一口頂く。口に抜けるような甘くも爽やかな味。


 僕は嫌いではないが、ジャスミンは少しだけ辛そうだ。


「私は回りくどい話が好きではない」

「では、単刀直入に用件をお伝えしますね」


 ヴァルノート辺境伯が治める領地は、王国内でも屈指の激戦区として知られている。

 戦場では無駄なやり取りが命取りになることも少なくない。用件をすぐに促す背景はそこだろう。


「私は近々、自分の派閥を立ち上げます」

「王位争いに本格参加すると?」

「はい。その後ろ盾をヴァルノート家に担って頂きたい」

「なるほど……」


 今のやり取りで、こちらの思惑の凡そは伝わっただろう。


「見返りは?」

「前線への援助です」

「――笑わせるな」


 即座に、セシアは僕の提案を一笑した。


 有力な公爵家がこれ以上は無理だと匙を投げる。

 それほどまでに、前線の状況は深刻だ。


 そんな中で、つい最近まで無能と呼ばれていた僕に何ができるというのか。


 セシアの怒りは最もだ。


 やはり、ここが今の僕の限界か。


 状況的にヴァルノート家は猫の手も借りたい状況のはず。

 それでも、安易に僕のような人間は信用しない。

 それだけの矜持はまだ捨てていないということだ。


 ますます、ヴァルノート家の力が欲しくなった。


 とはいえ、今のままでは交渉の条件が弱いのも確かだ。


 僕はジャスミンに一度目くばせし、ここは一端引くと伝える。


「セシアさん。今日のところは引きます」

「結果は変わらないと思うが?」

「それでも、僕は諦めませんよ」

「――そうか。なら、一つだけ聞かせろ」

「何でしょうか?」

「なぜ、王位を目指す」


 確かに、外野からすれば僕が突然王位を目指すことに違和感を抱くというのが普通だろう。

 

「ジャスミン。先に席を外せ」

「――かしこまりました」


 有無を言わせぬため、隷属の権能で強制的にジャスミンを部屋から退室させる。


 僕がリティアを溺愛していることはテオたちにも周知の事実だが、それでも聞かせない方が良いと判断した。


「どうした、わざわざ側近まで外させて」

「それだけ、僕の意思は重たいということですよ」

「――言ってみろ」


 セシアの雰囲気が、僅かに緊張感を含んだものへ変わる。


 彼女のことだから、馬鹿にするなとキレだすかな。

 それなら、その程度の人間だったということだ。


「僕が国王を目指すのは、リティアのためです」

「婚約者のため、だと……?」

「はい。無能のままでは、彼女が馬鹿にされる」

「――正気か?」

「はい。僕は本気です」


 セシアの燃えるような橙色の瞳に、僕の深く陰の指した瞳が映る。


「――そうか」


 先に視線を逸らしたのは、セシアの方だった。


「覚悟はわかった」

「そうですか」

「だが、まだ信用には値しない」

「――」

「少し時間を寄こせ」


 最初からすぐに答えを出して欲しいとは思っていない。


「すばらしい答えが返って来ることは期待しています」

「――」

「では、僕はここで」


 黙り込んでしまったセシアを残して、僕は部屋を後にする。


「行こうか、ジャスミン」

「――っ、わ、わかりました」


 ほんの少し抜け落ちた記憶にあたふたしながら、ジャスミンが僕の後ろをついてい来る。


「これから、どうされるのですか?」

「計画に変更はない。遠征の準備だ」


 セシアの協力が得られるならそれが一番だが、そうでない場合は強硬手段も辞さない。


 ヴァルノート家と関係を結ぶことは、単に後ろ盾を得るだけでなく、第二王子派閥に大きな打撃を与えられる唯一の手段でもあるのだから。


         ◇◇◇


 ルルアが去った後の教室で、セシアはもう一度お茶を入れ直し、それを一口含んでから大きく息をついた。


「彼は一体何者なんだ……」


 ヴァルノート辺境伯家の人間として、貴族院入学前に過酷な戦場は経験している。

 それでも、ルルアに相対したときのような大きな不安を抱くことはなかった。


「彼を安易に信用してはいけない。だが――」


 一対一で対峙したとき、ルルアの中に得体のしれない力があることが感覚的にわかった。


 それが現在のルルアの快進撃の秘密であるとするならば、ヴァルノート領の窮地を救ってくれる可能性はある。


「リティア・ノルンか」


 ルルアの原動力のすべてといっても過言ではない。


 そんな彼女のこと知れば、少しは信用できるかもしれない。


 翌日の昼休み。セシアは第一学年の教室がある階層へ赴いた。


「失礼する」


 セシアがAクラスに入室すると、周囲が喧騒に包まれる。


 ヴァルノート家は国内でも有数の力を誇る貴族である。


 加えて彼女が所属する生徒会は、貴族院の生徒の中でエリート中のエリート中のみが所属を許される組織である。

 加えて、卒業後もそのステータスは継続され、生徒会OBOGたちともに国運営にも大きく関わっていくことになる。


 周囲から羨望の眼差しを受けながら、セシアは一人の女子生徒の下へ向かった。


「リティア・ノルンだな」

「――っ、そ、そうですが」

「話がある。放課後、少しいいか?」


 セシアのこの行動が、ルルアの耳に届くことにそう時間は掛からなかった。 



 

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