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激重第三王子の暗躍無双~禁忌の闇の魔法を隠して無能を演じていたら婚約者が馬鹿にされたので王位を取って周囲を徹底的に黙らせる~  作者: 9bumi


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第12話 色男、散る!

 貴族界隈は情報の流通が早い。


 ブレヒト男爵領であったことは、すでにブレイク家にも入っている。


 とはいえ、ロイクがわざわざDクラスまで来るとは思わなかった。

 あの男の事だから、適当に舎弟を送り込めば済むだろうに。


「本当に良かったんですか? 絶対に罠ですよ、これ」


 放課後、帰宅の準備を進めているとテオが嘆くように訴えかけてくる。


 ロイクの目的は、放課後に僕とロイクを校舎裏に呼び出すことだった。


 何をするかは大方予想できるが、今の僕たちには些細なこと。


 むしろ、こちらから誘う手間が省けたとさえいえる。


「でも、いいんですか?」

「まだ何かあるのか?」

「放課後、僕と付き合ったら、リティア様と」


 こいつ、何を言っているんだ?


「お前が一人で行くに決まってるだろ」

「えっ――?」


 理解できないと疑問符を浮かべるテオ。


 普通に考えたらわかるだろう。


 リティアは本当に魅力的だ。


 放課後リティアを一人にしたら、絶対に悪い虫が寄って来る。

 それがわかっていて、わざわざテオに付き合う意味がわからない。


「心配するな、お前ひとりで何となる。そのための特訓だっただろ」

「そ、そうですけど……」

「つべこべ言わず行ってこい」

「はい――」


 まあ、本当に一人で行かせるわけはない。


 僕は以前そうしたように自分の分身を生成し、認識阻害の権能を使った状態でテオの後を追わせる。


 今回の相手は恐らくロイクとその舎弟たち。

 措定通りなら、今のテオ一人で十分勝てる。


 これはロイクが他のAクラスの生徒を連れていた場合の対策だ。

 さすがのテオでも、Aクラスの生徒を二人同時に相手はまだ厳しい。


「ルルア様ー!」

「――っ、リティア!!」


 テオを別れると、すぐに校門前にリティアの姿を見つけた。


 テオがグダグダ話すからリティアを待たせてしまったではないか!

 

 ちなみに、今日のリティアは紫色のシュシュで銀髪をお下げにしている。


 控えめにいってヤバい!


 僕はすぐに走ってリティアの下へ向かった。


         ◇◇◇


 ルルアと別れてテオは、落ち着いていた。


(ロイクなんか怖くない)


 自分を鼓舞するのではなく、それが当然だと確信している。


 ルルアと比べれば、ロイクが劣っているのはわかり切っていることだ。


「待っていたよ。テオ」


 路地裏に入ると笑顔のロイクが待っていた。


 少し距離を詰めると、退路を複数人の舎弟に塞がれる。


 ルルアの予想通り、ロイク以外Aクラスの生徒はいない。


「何の用でしょうか?」


 テオが尋ねると、ロイクは笑顔を崩す。


「テオ、君は何をやっているんだい?」

「何を、とは?」

「私は言ったはずだよ。あの無能を陥れろと」

「無能、ですか……」


 事実を知らないとはいえ、ルルアに完全なる忠誠を誓っているテオは、今の発言の時点で許せない。


 テオの中の魔力が活性化し、力が漲って来る。


 ルルアの力がリティアへの愛で増幅するように、テオやマイヤの力はルルアへの忠誠によって引き上げられる。


 主君を馬鹿にされた強い怒りは、力を引き出すための一種のトリガーだ。


「テオ。君には失望した」

「それはそうでしょう」


 ロイクの立場からすれば、標的に近づきすぎた挙句に懐柔され、さらにはブレイク家すらも裏切る行いをしたのだ。


「テオ。今から君がどうなるかわかるかい?」


 ロイクがテオに向かって手をかざし、同時に背後を固める舎弟たちが武器を構える。


「私に恥をかかせた罪。その身で償ってもらおう!」


 ロイクの手から手のひらの面積を優に超える火球が生み出される。そして――。


「遅いですよ」


 火球が生み出されるのと同時に、テオが手を前にかざして小さな稲妻を火球へ向けた。


「――ぐあっ……っ!」


 生成途中だった魔法がかき消される。


 さらに稲妻をうけた右腕は痙攣、その場に膝をつく。


「テオ。いつの間に――」

「力を隠していただけです」


 変に自分が目立たないよう、今後はテオに矢面に立ってもらう必要がある。

 ルルアはテオに、実力はあるのにブレイク家のせいで力を出せなかった設定を与えた。

 

「こんなことをして、ただで済むと思わないことだ」

「はい。ブレイク家など怖くありません」

「何――っ!?」


 声を荒げるロイクをおいて、テオは退路を塞ぐ数名に声をかける。


「ここでロイク様に手を上げた者を、ルルア様は仲間とお認めになるそうです」

「「「「「「――っ!?」」」」」」


 言葉の意味を説明するまでもなく、一人、また一人と舎弟たちがロイクのもとへ歩みを進めていく。


「くそ。お前たちごとき――っ」

「足は麻痺させておきました。あとはお好きに」

「「「「「「ありがとう、テオ」」」」」」

「や、やめるんだ。お願いだから――」


 この日以来、ロイクは貴族院への登校を拒絶するようになった。

 そんな彼の顔には、甘い色男の面影はまったくなかったという。


         ※※※


 ロイクが舎弟たちに粛清される中――。


「それじゃ、リティア。また明日」

「はい。ルルア様」


 リティアの乗った馬車が見えなくなるまで見送ってから、僕は邸宅の門をくぐる。


 テオはちゃんと上手くやったようだな。


 最初からわかっていたことだが、これでまた次の段階へと計画を進めることができる。


「お帰りなさいませ。ルルア様」

「ただいま、マイヤ。その手紙は?」


 訪ねると、マイヤが手に持っていた手紙を渡してくる。


「ノルン家の御者からお預かりしました」

「ふむ――これは」


 送り主は当然お義父様。どうやら今夜、家で話たいことがあるらしい。


「マイヤ。すぐに返事を届けて欲しい」

「かしこまりした」


 お義父様の真意について、確かめる時がきたな。




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