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激重第三王子の暗躍無双~禁忌の闇の魔法を隠して無能を演じていたら婚約者が馬鹿にされたので王位を取って周囲を徹底的に黙らせる~  作者: 9bumi


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第10話 権能の代償

 部屋に案内された僕は、すぐに寝台に飛び込んだ。


「リティア!」


 まずは、愛する人の名前を絶叫する。


「どうして君はいつもそんなに素敵なんだ!」


 続いてリティアの良いところを延々と語り続ける。

 少年期の出会いから現在に至るまでの思い出を交えながら、恍惚として。


「ああ、リティアリティアリティア――」


 最後はシーツに噛みつき、愛する人の前を連呼し続け――。


 時計の針がちょうど一周したところで、ようやく闇の動悸は収まった。


「これが闇の権能の代償か」


 かつての使い手が同じだったかはわからない。

 しかし、僕の場合はリティアへの愛に対する干渉らしい。


「これは危険だ――」


 ただでさえ、僕のリティアに対する愛は歪んでいる。

 これ以上、歪んでしまったどうなるか。


 僕はリティアを壊してしまうかもしれない。


「なるほど、僕は狭愛王というわけか」


 きっと狂王となり果てたかつての使い手も、僕のように何かに狂った。


 そういえば、初代国王は何を――。


 意識が薄っすらと遠のき、眠りにつく。


 目が覚めると、時計の話がさらに二週進んでいた。


「じきに昼食か」


 寝台から降りると、違和感を覚える。


「身体が重い」


 重いと言っても疲労や熱病のものとは違う。


 純粋に身体自体が重くなっている。


「これは……っ」


 身体全身を映し出す鏡の前に立つことで、僕は異変の正体に気づく。


 体つきが変わっている。身体全体の筋力が目に見えて上がっている。


 これも闇の権能の代償か……やり過ぎだ!


「幸いなのは、身長があまり伸びていないという点か」


 まったく伸びていないというわけではないが、精々薄い本一冊分くらい。


 さすがにこれで身長も伸びていたら周囲から怪しまれる。

 

 何より、リティアに心配をかけさせてしまう!


「とりあえず部屋を出よう――ん?」


 部屋の扉が数回ノックされる。


「テオです。ルルア様、入ってもよろしいでしょうか」

「構わない」

「ありがとうございます」


 部屋に入ってきたテオの表情には、僅かに疲れが滲んでいた。

 どうやらあの後、男爵と色々あったのだろう。


「どうした。昼食のお誘いか?」

「それもありますが、その前に。先ほどのお話の続きです」

「話――?」

「私がルルア様に忠誠を誓うというお話です」


 ああ、そういえばそんなことを言っていたな。


         ◇◇◇


 テオ・ブレヒトは、ブレイク家の長男として生を受けた。


 性格は気弱なところがある一方で、領民を思う心は人一倍強い。


 そんなテオを、両親は領主の器は十分にあると認めていた。

 しかし、貴族社会で生きていくには弱すぎるとも思っていた。


「テオ・ブレヒト。今日からお前は私の舎弟だ」


 ロイク・ブレイクと関係を持ってから、テオの心は確実に蝕まれていた。

 常に周囲から馬鹿にされ蔑まれる度に、さらに気弱になっている。


 どうして、こうなったんだろう……。


 賊を抑えきれないブレイク家が悪いとは、考えない。


 悪いのは、無力な自分。

 自分が強ければ、領民を守れるのだ。


 力が、欲しい――。


 テオは魔法のセンスがない。魔力の保有量は平均だが、魔力を感じ取るのが下手だ。

 そのせいで、派閥内で最下位のレッテルを貼られ、挙句の果てにルルアとペアを組むことになってしまった。


 だが、今となってはそのことにも感謝だ。


「ルルア様。私はあなたに忠誠を誓います」


 ルルアが賊を一蹴する姿を見て、素直に憧れを覚えた。


 ルルアの力が決して正しいものでないのはわかっている。


 それでも、ルルアの持つ力にテオは魅せられた。

 悪を一蹴し、民を幸せに導く姿に惚れた。


 ルルアの下で、修行がしたい。

 そして、ルルアへの恩義を返したい。


「ルルア様。お願いします!」


 テオは、垂れている頭を一層深く沈ませた。


         ◇◇◇


 自分から服従すると言ってくるとは。


 きっかけが何かはわからない。


 ただ、嘘をついていないことだけはわかる。

 ここ数日の付き合いだが、テオは自分の気持ちに素直な奴だ。

 領地を救った僕を裏切るような真似は絶対にしない。


「わかった。お前を従者として認めよう」

「――っ、ありがとうございます!」

「左手を出せ」

「左手、ですか――?」


 不思議そうにテオは左を手を出すと、差し出された手の甲に右の手のひらをかざす。


「これは――っ」


 マイヤのときと同様、薄紫色に光る三日月模様が浮かび上がる。

 しかし今回は、以前よりもより三日月に近い形になっている。


 なるほど、僕の肉体の変化に伴って、権能の力も上がっているというわけか。

 王都に戻ってから色々と試してみる必要がありそうだ。


 気になるのは、月の模様の進展具合か。

 この調子なら、半月になる頃にはきっと――。


 考えるは止めよう。

 今は目先のことに注力するべきだ。


「テオ」

「はい」

「くれぐれも裏切らないようにな」

「当然です!」


 さて、あとは男爵の説得だな。


「行こうか、テオ」

「はい……!」


 交渉のカードは用意しているが、それが問題なく通用するかどうか。


 僕は世間的には無能。そんな奴の言葉がどこまで届くか。


 だが、この試練を僕は乗り越えなければいけない。


 王とはただ力があればいいというものではないのだ



 

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