↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ進行中】「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。 〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜  作者: 高瀬船
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/61

19話


◇◆◇


 ある晴れた日の午後。


 騎士隊の隊服に身を包んだヴァンが、玄関ホールにやって来た。

 そこには不安そうに佇むウェンディが立っていて、ヴァンは眉を下げ、笑いかけた。


「ウェンディ、見送りに来てくれたのか?」

「──ヴァン!」


 ヴァンの声に反応したウェンディが、彼の方に振り向く。

 すると、やって来たヴァンの服装を見て驚きに目を見開いた。


「ヴァン、あなたその格好……」

「ああ、これ? デート、とは言われたけど服装には特に口を出されていないだろう?」


 ヴァンは自分の服を見下ろすようにした後、軽く肩を竦める。


「リンドット嬢と一緒に出かければいいだけだ。俺にとっては護衛任務に変わらない」

「だ、だけど大丈夫、かしら? リンドット嬢は、ヴァンとデート、だと」

「俺と一緒に出かける事が出来ればいいんだろう? それさえ守れば彼女の要望には答えた事になる」


 それに、とヴァンは続けた。


「俺は、ウェンディ以外の女性と……私的に出かけたくない」


 ヴァンから真っ直ぐ目を合わせて告げられた言葉に、ウェンディの胸はどきり、と鼓動が跳ねた。


「……っ?」


 そわ、と何だか落ち着かない気持ちにウェンディは自分の胸に手を当てた。

 普段より幾分か早く鼓動を刻んでいるような気がして、ウェンディはちらりとヴァンを見やった。


 だが、ヴァンの視線は既にウェンディから外れており、腰に下げている自分の長剣を確認している。

 ヴァンの髪の間から覗く耳が、微かに赤く染まっているのに気が付いたウェンディは、ヴァンに釣られるように僅かに頬を染めた。


「と、とりあえず行ってくる」

「わ、分かった。その、気をつけて……」

「ああ。ウェンディ、それじゃあまた後で」


 軽く手を振り合い、玄関から出て行くヴァンの後ろ姿を見送る。


 去って行くヴァンの後ろ姿を見ていると、何だかとても寂しく感じてしまい、ウェンディはヴァンの後ろ姿から目を逸らすように振り返った。


「……今日は、孤児院の子達に教える魔法の練習をしておこう……」


 そうしていれば、きっと時間はあっという間に過ぎる。

 ヴァンもすぐに帰ってくるはず。


 そう考えたウェンディが、自室に戻ろうと階段に足をかけた所で──。


「なんだ? ウェンディはあいつらを尾行しないのか?」

「──ひぃっ!」


 突然、背後から話しかけられてウェンディはびくっと肩を跳ねさせた。


 慌てて振り向いた先にいた男性を見て、驚いたように叫ぶ。


「ヒュ、ヒュフースト様!?」


◇


 王都・貴族街。

 様々なお店があり、以前ウェンディとヴァンがレックスの万年筆や自分達用に揃いの装飾品を購入した小間物屋もある。


 今王都で流行っている洋菓子店もあり、そこは店内で食事も出来るようになっているらしい。

 テラス席もあり、街並みを眺めながらゆったりと過ごせるのが良い、と評判らしい。


 そのお店のテラス席に、ヴァンとイブリーンの姿を見つけたウェンディは、近くにいるヒュフーストの服の裾を引っ張った。


「ヒュ、ヒュフースト様! ヴァンとリンドット嬢がいました……! 近付き過ぎるとバレちゃいます、隠れましょう!」

「この姿ではバレないだろう。店に入るぞ。奴らの隣の席に座ろう」

「ヒュ、ヒュフースト様っ!」


 ウェンディは慌ててヒュフーストの服を引っ張り続けるが、彼はそんな事は気にせずどんどん進んでしまう。


 風に揺れて、ヒュフーストの髪の毛が揺れる。

 普段は金色の美しい髪の毛が、今は黒曜石のような黒い髪色に変わり、ハイエルフの象徴とも言える尖った長い耳は人間のよう。

 瞳の色は変わらずブルーサファイアのような瞳だが、容姿はヒュフーストと何一つ変わらない。

 変わったのは髪色と、人間のような耳に、髪の毛の長さだけ。


「き、きっとヴァンにはバレてしまいます……!」

「あの女にバレなければ良いだろう」


 振り返ったヒュフーストにそう言われ、ウェンディはぐっと言葉に詰まる。


 実際、ヴァンがイブリーンとどんな風に過ごすのか……気にはなっていた。


「う、うう……」

「ウェンディの姿も普段とは違うからあの女にはバレないだろう。どれ、容姿は少しいじっといてやろう。それに、認識阻害の魔法も掛けておいてやる」


 ヒュフーストが自分の指先をパチリ、と鳴らす。

 ふわり、とウェンディをヒュフーストの魔力が包むのが分かった。


 だが、自分が今どんな姿になっているのか。

 姿見がないので確認しようもない。


 視界の端に映る髪の毛。

 その髪の毛は、ヒュフーストと同じく黒い髪の毛だ。

 瞳の色も、容姿もどうなっているのか自分では分からないが、ヒュフーストが自信満々に言うからには本当に大丈夫なのだろう。


 ヒュフーストに促されるまま、ウェンディは店内に入り彼と一緒にテラス席にやって来た。


 ヴァンとイブリーンは、探さなくてもすぐに見つかった。

 イブリーンが弾んだ声を上げ、ヴァンに話しかけているためすぐに二人を見つける事が出来たのだ。


「ヴァン様! ここは今人気の洋菓子店なのです! 恋人同士で利用するのが多いのですよ」

「そうですか」

「ふふっ、私たちも恋人同士に見られているのでしょうか」

「いえ。ただの護衛と貴族令嬢にしか見られていないと思います」


 イブリーンの高く、弾んだ声とは違いヴァンの声は低く淡々と冷たい。


 ウェンディは今までヴァンのこんなに素っ気なく冷たい声を聞いた事が殆どなく、驚いた。


「お、隣がちょうど空いているな。座ろう」


 飄々としたヒュフーストの声が耳に届き、ウェンディの手を引いて行く。


 自分達の隣に人がやって来たのが分かったのだろう。

 ヴァンがちらりと視線を向けてくるのが分かった。


 ぱちり、とウェンディとヴァンの目が合う。


 ウェンディは慌てて目を逸らそうとしたが、そうする前にヴァンの目が驚いたようにみるみる見開かれて行く。

 そして、ヴァンの口がパクパクと動き、ウェンディの名前を口にしたように見えた。


 ──容姿も、髪色も全く違うし、認識阻害の魔法をかけた、と言っていたのに!!


 ヴァンに瞬時にバレてしまった、と言う事に気が付いたウェンディが真っ青な顔でヒュフーストを見やると、彼はしたり顔で「やるな」と呟き口笛を吹いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。