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【書籍化・コミカライズ進行中】「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。 〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜  作者: 高瀬船
2章

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17話



 ヴァンの長剣の柄が後頭部に直撃したフォスターは、声を発する間もなくそのまま倒れ込んだ。


 フォスターに突き飛ばされたエルローディアは、何が起きているのか分からず目を白黒させていたが、フォスターが倒され、捕れば。自分の身も危ないと言う事は分かったのだろう。

 重罪、だと言っていたのだ。

 そんな人間を、侯爵邸に招き入れてしまった自分も、ただでは済まない。


 エルローディアはたたらを踏み、転倒するのを何とか堪えると逃げ出そうとした。

 だが、そんなエルローディアを逃がすようなウェンディではない。


「つくづく思うわ。エルローディア、あなたもどうしようもない人ね」

「う、うるさい……っ! うるさい、うるさい! そこをどいて!」


 エルローディアは大声でウェンディに告げると、攻撃魔法を放とうと自分の手に魔力を集中させた。

 だが、エルローディアが魔法を放つより、ウェンディが魔法を放つ方が早い。


「氷よ、阻め!」


 ウェンディの声に呼応し、一瞬で氷の檻が目の前に出現した。

 その檻はエルローディアの体をすっぽりと覆ってしまう。


「いっ、いやっ、寒い……っ! 炎よ……!」


 エルローディアが氷の檻に向かって炎魔法を放つ。

 だが、熱に弱いはずの氷は、エルローディアが放った炎を受けても一切溶ける事はなく、ただただそのままエルローディアを閉じ込め続けている。


「いやっ、寒い……っ、どうして溶けないのぉ……っ!」


 寒さに歯をガチガチと鳴らし、エルローディアは混乱したように叫ぶ。

 だが、いくら炎魔法を檻にぶつけようとも、檻が壊れる気配は見えない。


 ただの、氷なのに。

 どうして、どうしていつも……!

 どうして私より……!


 エルローディアは自分を檻に閉じ込めたウェンディを見た。

 ぺたり、と床に座り込んでしまったエルローディアは、自然とウェンディを見上げるような体勢になる。


 エルローディアを冷たい目で見下ろすウェンディを見て、エルローディアの胸に冷たい物が過ぎった。


「──あっ、あ……。そんな目で、見ないで……! 見ないでよぉ!」


 エルローディアが発狂したように叫ぶ。

 その尋常じゃない叫び声を聞いたヴァンは、顔を上げた。

 フォスターは縄で縛り、拘束済だ。


「ウェンディ? エルローディア嬢はどうしたんだ?」


 ヴァンの言葉を受け、ウェンディは困ったように眉を下げる。


「……私にも分からないわ。急に取り乱しちゃったのよ」

「そうか……こっちもフォスター卿を捕らえた。このまま憲兵隊に──」


 ヴァンがそう話している時、廊下の奥からバタバタとこちらに近付いて来る足音が聞こえて来た。

 その足音は複数で、真っ直ぐこちらに向かって来ているが分かる。


 ウェンディとヴァンから少し離れた場所に居たヒュフーストが、顔を向けた。


「おい、ウェンディにヴァン。誰か来たぞ」

「……誰でしょう、ヒュフースト様分かりますか?」


 ウェンディの言葉に、ヒュフーストは暫し沈黙した後、続けた。


「あの魔力は……ウェンディの兄だな」

「──お兄様が!?」


 ウェンディが声を上げたのと同時。

 こちらに近付いて来ていた足音の主が声を発した。


「そこに居るのはウェンディか……!? どうしてここに……。それに、檻の中にいるのはエルローディア!? そっちに倒れているのはフォスターか!?」


 どうしてこんな事に、と目を白黒させているレックス。

 レックスは数人の侍従と一緒にやってきたようだった。


 檻の中に居るエルローディアと、ヴァンに拘束されているフォスターを見て、近付いて来た。


「……エルローディアには自室での謹慎を命じていたのだが……。それに、フォスターは何故ここに? 奴は犯罪者だ。誰が手引きを──ああ、そうか。エルローディアが手引きをしたのだな?」


 ろくな事をしないな、と溜息を吐きつつ額を抑えるレックス。


「お兄様、フォスターが言っていました。両親と連絡を取り合い、何かをしようとしていたみたいです」

「……何だと? 両親と……?」

「ええ、そうです。ヒュフースト様が、フォスターと両親がやり取りをしていた手紙を……」

「なに?」


 ウェンディの言葉に、レックスが眉を寄せる。

 ヒュフーストが近付いて来て、手紙をレックスに手渡した。


「この男がお前達の両親とやり取りをしていた証拠の手紙だ。エルローディアと言う女に、そこの男は金の工面を頼んでいたぞ」

「ヒュフースト殿、手助けありがとうございます」

「ウェンディの兄だからな。私が出来る事をしたまでだ」


 ひょい、と肩を竦めて答えるヒュフースト。

 レックスは礼を告げてから手紙を受け取り、内容に目を通した。

 手紙を読むにつれ、レックスの眉間に深く皺が刻まれて行く。


「……憲兵隊を呼んでくれ。フォスターにはもう一度牢に入って貰わねばならないな。……それに、両親も……まだ爵位に未練があるのか」

「……両親は、フォスターと繋がって何をしようと……?」

「……あの人達の考えなど簡単に分かる。フォスターと手を組み、私を排除しようとしたのだろう。……ウェンディは今、ヴァンの所だ。侯爵家には今、私しか居ない。彼らは前侯爵だ。邸の抜け道も知っている。邸に入り込まれ、フォスターと両親……三人でかかられたら、流石に私では抗いようがない」

「……そんな。お兄様に、そんな事を……!?」

「ああ。憶測ではあるが、遠からず、だろう。……王家に前侯爵夫妻の捕縛を進言しよう」


 両親と言えど、流石に自分の命を狙われたらこうする他ない。


「……父上も、母上も。どうしてこんな人間になってしまったのか……」


 額に手を当て、溜息を零すレックスにウェンディは何も言葉をかける事が出来なかった。



 

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