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弱小国家の総司令、超大国全てを敵にする  作者: 地下道
第六章 第三次崩魂平原合戦篇
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七拾陸話 報告

 ――――第五人間暦四百八十七年十月五日。

 鵬砂平原で睨みあっていた光龍・氷晶両軍は風船に貼りを刺したように、勢いよく突撃を開始。

 鵬砂平原の戦い、開戦。


「なんの捻りもない。横陣を当てるだけなら俺が出て来た意味がない」

 リシュアンへの挑戦者として央都より出てきた俺、ヒメル・フロストバードだが、リシュアンがなんの捻りもない軍動をするせいで、苛立ちを隠せていなかった。

 子供っぽいな。

 兄上に見せられたもんじゃないな。こんな姿。

 「フロストバード家の恥だ」とか散々に言われるのがオチだろう。

「まあいい。俺の方から揺さぶりをかける。左端に移動するぞ。俺の直下兵七千だけついて来い」


 ♦♦♦


「なんの捻りもない。もう三日目だぞ!? 横陣を当てるだけなら俺が出て来た意味がない」

 リシュアンへの挑戦者として央都より出てきた俺だが、リシュアンがなんの捻りもない軍動をするせいで、苛立ちを隠せていなかった。

「まあいい。俺の方から揺さぶりをかける。左端に移動するぞ。俺の直下兵三千だけついて来い」


 ♦♦♦


「馬鹿だな。右端に組み込んでいるのは守備のユリウスだ」

「その通りだ。やはり格の差が出たな」

 そう思うのは自然の摂理か。

 だが時期尚早だ。

「油断するには早い。念の為ユリウスに二千を送れ」

 引っ掛かる。

 俺が思うヒメルはもっと慎重で不動の存在だと思っていたが、こうも早く動き出すのか。

「しかし、こうじれったらしい事をしていれば意味がない。出るぞ。左の端から食い荒らす」

 ヒメルとは反対側、俺の主力を置く左端から一気呵成に攻勢をかける。

 そうすれば必然的に中央で接敵する形となる。

 ならば後は兵団の練度にかかって来る。

 数年間引き籠っていた奴の兵団が、葬獄に並ぶほどの戦闘能力を有しているとは到底思い難い。

 実戦経験数でも明らかに俺の方が上だ。

 俺の今、率いている直下兵の数は凡そ三千。

 量より質。量で上回るヒメル軍相手に俺は質で凌駕する。


 中央より少し右側。

 そこに配置していた将の名は、ベテルギウス・ゼイファード。

 彼がここにいる理由を説明しよう。

 この出陣より前、俺や朝廷軍官は近衛兵団を朝廷軍部直轄軍へと変更した。

 名称こそ違えど、その役割は殆ど同じであり、新たに組み込まれ、失われた役割は一つずつ。

 新たに組み込まれたのは、朝廷”軍部”の護衛。

 失われたのは朝廷”高官”の護衛。

 この二つは似たようで全く違う。

 この軍は朝廷軍部が出陣、又は必要とした場合に王都より出陣する。

 そのため、俺が出陣しているこの戦いに彼がついて来るのは当然と言えよう。

「ベテルギウス! ここの抑えを頼む! ここが動かなければ後顧の憂いを完全に絶てる!」

「承知!」


「両隊、接触! 前衛、優勢です!」

「全兵を充てろ! 叩き潰せ!」

「第一、第二隊、優勢!」

「第三隊、膠着!」

「第六、第八から第十五隊、優勢!」

「第四隊、敵を撃破!」

 衝突からものの数分で報告の山が出来上がる。

 これが俺がこの戦いから導入した、至近物見制だ。

 これまで光龍軍では動員されなかった、超至近距離での物見。

 それを俺の軍が初めて導入した。

 実際、かなり報告の量が多くなっている。

 そして、その大量の報告を捌けるのは、自画自賛ではないが、俺と片手で数えられる程の人数だろう。

 そんな大量の報告の中で、優勢の報告が多いのはきっと、俺の両と質の読みが当たったからだろう。

 だが、一つ気になるのは、第三隊の膠着の報告。

 つまり、そこに何かある。

「様子を見に行く。親衛隊はついて来い」

 急ぐ必要はあまりない。

 通常の速度で馬を歩ませ始めた。

 そもそも、自軍の中で馬を全力疾走させるのは、お世辞にも上策とは言い難い。

 歩兵主体の平原戦でその中を馬で爆走すれば、敵であればいいが、味方であれば同士討ちになる可能性もある。

 ……けども、まあ、俺はよくするんだけどな。

「第三隊、劣勢です!」

 報告が俺の歩みを速くした。

 この全軍優勢の状況下で、一つだけ違う動きを見せる場所。

 そこには大抵、掴み取ればとても大きい戦果がある。

 そこに何の迷いも、躊躇いも、弱さも無く、臆する事無く飛び込むのが、俺、光龍国軍総司令の肩書を持つリシュアン・レオンハルトの責務だ。

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