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弱小国家の総司令、超大国全てを敵にする  作者: 地下道
第六章 第三次崩魂平原合戦篇
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七拾伍話 バルバトス

 南都の外側、狼鋼城や狼麟城を落とされると、南都を大外から包囲することになり、兵糧攻めで陥落することとなる。

 ひいては光龍国北部周辺の失地に繋がり、多大な犠牲を払った南都攻略戦も無に帰すことになる。

 そんなこと、バルバトスもランシェも望んでいない筈だ。

「第七歩兵中隊を北壁に回せ。俺の本軍は南壁から纏わりつく」

 俺の率いる軍は狼鋼城南壁から迫る氷晶軍を攻め立てた。

「将旗は氷晶国軍事総括官ヒメル・フロストバード。兵数は両軍共に十万!」

「指揮官は両軍とも、軍総司令か。面白くなりそうだな」

 俺の新調した鎧が輝いた。

 これまでの鎧は度重なる戦いでボロボロになったから、俺がいた孤児院に送り付けた。

 鋼と鉄の合金で造られ、金の装飾が入る西洋甲冑。

 重装甲にせず、ランスレストなどの部分を取り外し、クウィスやボレインなどの上脚の装備を取り外し、葉桜の鎧の草摺と呼ばれる部位のような物を横に付け、体とその草摺の間に革鎧用に鞣した革を付けて、機動力や威厳を上げている。

 手甲は軽くし、受け流しをしやすいように形を流線形に変更。

 などなど、俺好みに改造を施した鎧だ。

 マントは重いし、邪魔だから今回の鎧から要らないと散々抗議したが、叔父上が「マントは将の威厳だ。無ければ一般兵の鎧と同じで意味がない。ましてや、軍総司令ともあろう人間の鎧なのだから当然だ」とかたくなに譲らず、赤の黒が外で赤が内のなんかやけに厨二っぽいマントを付けられた。

 ま、これが新たなる鎧だ。

 成人もしたし、鎧も変える必要があったから丁度良かった。

 あ、今年アリシアと結婚式挙げるつもりだったのに、これじゃ無理そうだな。来年に持ち越しだ。

「ヒメル軍、鵬砂平原へ移動していきます!」

 誘ってるつもりか。

 自分たちが場所的にも、兵数的に不利な城の回りを離れ、城からある程度距離位置に

「いいだろう。誘いに乗ってやる。第七歩兵中隊を引き戻し、右方横進」

 平原戦か。

 あまり気乗りしないな。

 ちょっとトウラマだからな。

「援軍を呼びますか?」

「いや、呼ばない。これ以上戦線が大規模化される方が困る」

「ですが、我々は城兵四万を合わせて十万ですが、ヒメル軍は単体で十万です。その差は……」

「安心しろ。この軍は王都より引き連れてきた軍だ。ちょっと前までバルバトスの指揮下に入っていた軍だ。練度や戦術理解度は他の各地の軍とはレベルが違う」

 あの戦いの後、撤退時に平原を通りかかった際にクロイザン軍と合流し、共に王都へ凱旋した。

 民の心は複雑だっただろう。

 国の英雄が死んだが、戦いには勝った。

 凱旋した軍を笑って迎え入れるのか、将又バルバトス追悼の意を込めて黙って迎えるか。

 きっと、誰もその答えを持ち合わせなかったのだろう。

 当然だ。

 だから王都を凱旋した時の歓声には、少しの違和感があった。

 そしてクロイザンからは「バルバトスの軍を率いてやってくれ」と頼まれ、今に至る。

「葬獄までではないが、他の下手な兵団よりも力がある。これがバルバトス軍か……」

 しかもそれが五万もの数いるとは驚きだ。

 王都に籠っていた時期が長いおかげだろう。

 だが、まあ、引き籠りゲーマーと一緒にするのは話が違うだろうな。



「短期決戦で済ませるつもりはないが、長期戦にするほどの数はいない。五日位で決めきるぞ」

 平原に着いた翌日、牽制しあう両軍を横目に、光龍軍本陣では軍議が行われていた。

「では、全体的に攻勢をかける勢いなのですか?」

 ランシェの穴を埋めるべく採用したアドアトラ・ヴァルティアが軍議で初めて発言した。

 アリシアの弟を貰ったから、まあ、俺は義兄に当たる訳か。

 ちなみに、ランシェの槍騎兵はユリウスに引き渡され、重装騎兵隊に付属する遊撃隊として、ユリウスの指揮下に入った。

 戦前からユリウスとランシェは仲が良く、ランシェは槍騎兵に「もし、自分が死んだらユリウスに槍騎兵隊を引き渡せ」と生前からよく言っていたそうだ。

 ランシェの務めていた葬獄の財政管理係はユリウスの兵器運用と統合された。

「そういう事になるであろう。だろう? 総司令」

 ヴィッツ・アタラ。バルバトス軍の生き残りで、光龍の部隊長に引けを取らない逸材。

「ああ、相違ない。兎も角、そういう事だ。今回は互いに右翼・左翼はなく、横陣のぶつけ合いになるだろう。正面はバルバトス兵に任せていいか?」

「問題ない」

「分かった。右端はユリウス、左端はガルドとガルムに任せたい。親衛隊と残りの葬獄は横陣の中央後方、俺の本陣を担当してくれ。以上だ。散会」

 平原の対岸の丘に見える氷晶の旗。

 それが靡く度に感じる。

 奴らの仇討ちは長い長い戦いとなると。

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