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刃物嫌いな僕は【防刃服】着て【ゴブリン】相手に無双した体験が忘れられなかった  作者: 金銅才狸


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3う、次元を切り裂き異世界へ



 ついに恐怖の調理実習が始まった。

 ハンバーグと野菜炒めを作るらしい。

 デザートは桃缶だ。


 クラスメイト40人。

 その殆どは包丁を手にしてる。


 僕はその光景が怖くて怖くて……

 そこから逃げ出したくて逃げ出したくて

 気がついたら……


 僕も包丁を手にした瞬間にイロイロ耐えきれなくなって、数年ぶりに……


【次元の壁を切り裂いていた。】




 僕は兄を刃物で失った一件以来……

 怖さが限界に達すると、次元の壁を刃物で切り裂く変な癖が出来た。


 僕が死の狭間で獲得した異能力

 ユニークスキル【次元切断】


 次元の壁を切り裂き、別の異界への道を作る能力。他者を異界へ放り込む事も、僕が異界へ逃げ込む事も出来る。

 

 僕は初めて異界へと逃げ出した。




 うっそうとした森の中。

 濃厚な緑の草の香り。


 ギャアギャアと明らかに大型の獣声がする

 それも複数。

 

(何だ? 今まで聞いた事も無い声。)


 空には翼の生えた蛇みたいな生き物が飛んでいる。

 間違いなく地球では無い。

 

 僕が刃物を持つと次元を切り裂ける。

 数年前の事件で兄を失った時に、その事は知っていた。


 切り裂いた次元の穴に飛び込むと異界へ行ける事も知っている。


 しかし……切り裂いた次元に飛び込むと、こんな所に出るとは、思いもしなかった。


 自分で次元の穴に飛び込む事を試した事は無かったのだ。


 初めての体験にパニック。


(落ち着け僕)


 僕はまず落ち着き……

 自分の体を確認した。

 手には調理実習で使った包丁と桃缶。


 手に持った恐怖の対象であり諸悪の根源である包丁を捨てて冷静に……


「何処だ! ここは〜〜!」


 僕は思わず絶叫してしまった。


「異界。

 ここ異界だよなぁ。

 見たこと無い生き物がいるし」


 ちょっとパニック。


 以前刃物で僕が刺された事件の時に、兄が失踪したと聞いた。


 兄は今だ行方不明。

 異界にいるのか、病院にいるのか、刑務所にいるのかさえも親は教えてくれない。


(だが、いま思えば。あの時、僕は兄を異界送りにしていたのだろうか?)


 そんな事を考えていると、

 ガサガサ

 と草をかき分ける音がする。

 目をやると


「ゴブリン?」


 ゴブリン。

 そう言うしかない外見の生き物がいた。


 奴は手にナイフを持っている。

 それを見た途端に僕は恐怖で総毛立った。


 初めて見るゴブリンには驚いた。

 が別にソレは良い。


 それよりもゴブリンが持つナイフ。

 刃物が怖い。


 僕の手には右手に包丁

 は、さっき捨てたから無手。

 左手に桃缶。


 もしも、このゴブリンに襲われたら?

 僕は桃缶でナイフ持ったゴブリンと戦わなきゃならないのか?


 戸惑う僕にゴブリンらしき生き物が、予想通りに突撃してくる。


 当たってほしくない予想ほど良く当たる。


 ズガ……

 僕はゴブリンの突撃をマトモに受け止めた

 

「痛い!……」


 間抜けにも避けられなかった。

 恐怖で足がすくんだ。

 とっさのことで避けられなかった。


 言い訳しても意味が無い。

 僕はゴブリンから刃物で刺された。


 ショックはデカイ。

 が、ほとんど痛くなかった。

 なぜだ?


 人間の子供サイズの体格のゴブリン。

 奴の持つ、小さなナイフ。


 僕が制服の下に着込んでいる【防刃服】は薄手とはいえ、完全に刃物を防いでくれていた。


 おかげでナイフで刺されたのに、ナイフが刺さらない。


「木の棒で突かれたか?」 


 そのくらいの小さなダメージしか食らわなかった。


 しかも……

 ゴブリンの身体は小学生くらいのサイズ。


 小さい。

 力も弱い。

 このゴブリンに刺されても全く痛くない。


 ゴブリンのナイフは酷く汚れている。

 だから余計恐怖心で危機感知が遅れた。


 もしかしたら汚れた刃物には毒が塗られてるかもだけども、【防刃服】には刺さらない。


 刺さらなければ毒ナイフにも意味が無い。


 ゴブリンの力は弱い。

 切ろうが刺さそうが【防刃服】は穿けない

 それがわかった。


 ナイフは無力。

 ナイフに毒が塗られてあっても無意味。

 ならゴブリンは全く怖くも無い。


 ただそれでも

 ゴブリンが持つ刃物は効かなくても、精神的には怖い。


 刃物は僕のトラウマを刺激する

 

「逃げるか? それとも……」


 僕の【防刃服】の弱点は顔だ。

 顔を覆う程の防刃装備は持って来なかった

 顔にだけは攻撃をくらわないように注意。


 ゴブリンは大きくても身長140センチ。

 ちっこい。


 しかも刃物を一つしか持ってないのか、石をなげては来るが、刃物は投げて来ない。


 注意さえすれば、顔に傷を喰らう心配はなさそうだ。


 ひとしきり、自分の優位性と安全性を確認したら、急に楽になった。


 恐怖が吹き飛んだと言うか。

 安心したんだ。


 例えるなら、

 命綱をつけて高所で作業するのと、命綱無しで高所で作業するのに似ている。


 命綱があれば高所から落ちても無傷。

 バンジージャンプ等のタダのアトラクションだ。


 アトラクションは楽しい。


 しかし……命綱が無ければ、命がけの恐怖に襲われ足がすくんでうごけなくなる。


 さっき迄の僕だ。

 今は違う。


 【防刃服】のおかげで恐怖がなくなった。

 刃物は相変わらず、やや怖いけどね。


 でも……刃物を扱うゴブリン。

 アレは怖く無い。

 僕の【防刃服】には無力だ。


 奴は刃物の使い方がなっちゃいない。

 僕には届かない。


 こうなればもう、力の弱く小さなゴブリンと戦うなど、タダの作業の様なもの。


 まるで無敵のバリアをまとった巨人が、ウレタン棒を装備した人類と戦う様なものだ。


 【防刃服】を穿けないゴブリン。

 僕は精神的にゴブリン相手に無双した。




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