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刃物嫌いな僕は【防刃服】着て【ゴブリン】相手に無双した体験が忘れられなかった  作者: 金銅才狸


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16/17

16、兄貴




ーーー


 夜


 城に泊まった。

 イロイロな事を考えながらベッドにダイブ


 全身におぞけが走る。


「何か……来る!」


【ゴブリン将軍の杖】の加護で僕の感覚は研ぎ澄まされている。


 その僕の感覚に何かが引っかかる。


 コンコン

 部屋のドアがノックされる。


「誰だ!」

「儂じゃ。話がある」

「もしかして王様、か?」

「そうじゃ」

「帰れ!」

「……」

「……」

「何故じゃ?」

「オマエ僕を殺す気だろ?」


 研ぎ澄まされた感覚が危機感を煽る。

 ギラギラした刃物の様な感覚。


「そんな訳無いじゃろ。お主は娘の命の恩人じゃし……」


 王様の口調は穏やかだった。

 しかし……


 僕の全身は産毛が逆立ち、鳥肌がたっている。尋常では無い何かが扉の外にいる。


 僕は危険を感じてる。

【ゴブリン将軍の杖】を構える。

 

 扉が……切り裂かれた。

 そして王様が手に大剣を持ち立っている


 王様の持つ大剣に目が惹きつけられる。


 刃物に恐怖し続けた僕にはわかる。

 アレはヤバイ。

 ヤバイなんて物じゃない。

 存在してはいけない類の刃物だ。


 僕は窓をぶち破り部屋から逃走した。

 

「刃物、刃物だ。刃物がいる」


 僕はあんなにも嫌っていた刃物を探し出し

 迷う事なく空間を切り裂いた。

 そして空間の穴に飛び込み逃げ出した。


 そのくらい、王様の持ってた大剣。

 アレに恐怖していた。

 アレはヤバイ。


 僕は上には上がいる事を知った。

 同時に娘を思う親の狂気も……

 あの王様。

 確実に僕を切る気だった。

 目も逝ってたし……


 僕は日本へ帰還した。

 たった1日。

 日本で僕は1日行方不明。


 その1日が僕を変えた。




ーーー


 僕が異界へ行って戻ってきてから数年

 一人暮らしの家に帰って来たら兄がいた


 家の中で


「おかえり」


 兄がナイフを手に持って僕を出迎えた。

 ナイフを持った兄は怖い。

 何せ一度深々と刺されて、重症を負わされている。


 僕は兄を刺激しない様に部屋の中を移動、家の中に置いてた【ゴブリン将軍の杖】を手に持つ。


 かつて仲良かった兄……

 僕を刺して姿を消した兄。

 僕が恐怖してた兄。


 今日の僕は服の下に薄手の【防刃服】

 服の上にもパーカータイプの【防刃服】

 【防刃服】の二段重ね。


 しかも手には、かつて雌雄を決した強敵

 ほぼ互角の戦いを繰り広げたゴブリンジェネラルの形見。

 【将軍の杖】が握られている。


 この杖を見ると思い出す。

 ゴブリンの群れと戦い、ゴブリンジェネラルとの命を賭けた一騎打ちの事。


 ナイフを持った兄は怖い。

 だが……あの日の輝き、

 命がけで僕とやりあったゴブリンジェネラルに比べたら……


 兄を怖がっていたら、

 ゴブリンジェネラルに笑われる。

 僕はゴブリンジェネラルに勝利した


 『オマエは強い。オマエの勝ちだ』


 そう言って散ったゴブリンジェネラルの顔は誇りと満足に満ちていた。


 僕は彼と命がけで戦い、

 僕と彼は命がけで戦ったモノにしか理解出来ない、互いへの敬意と称賛と誇りと満足を互いに得た。


 僕が彼に勝ち生き残った以上、僕の負けは命がけで戦ったゴブリンジェネラルの負けになる。

 僕は手に持つ杖を強く握る。



 僕は【防刃服】と【将軍の杖】を装備

 かつて兄だったモノは【ナイフ】を装備


 負けられない。

 負けるはずが無いと自分に言い聞かせ、かつて兄だったモノに対峙した。


 元兄は僕を舐めきっている。

 油断していた。


「お前の声せいで俺は……」


 何かモンクを言いかけた兄貴

 ためらうことなくナイフを持った兄貴のその手を僕の【将軍の杖】で一閃。


 ナイフは、今でも怖かった。


 杖は上手くナイフを持った兄貴の手に当たり、ナイフが手から弾け飛ぶ。


 驚愕する元兄は、杖で打たれた手首を抑え呻いていた。


 墨の2撃目は顔を狙った。

 元兄は、慌ててその場から逃げ出した。


 その背中を僕は見ていた。

 あの兄が逃げていく。

 僕の恐怖の対象だった兄が、明らかに僕に怯えて逃げていく。


「ハハハ。何だ僕つえ〜。と言うか兄、よえ〜。ゴブリンより、よえ〜。たった2発で戦わずに逃げるとか……雑魚ゴブリンか?」



 僕はひとしきり喜ぶとスマホを取り出し警察へ電話する。


「あ、警察ですか? 以前僕を刃物で刺した兄が、ナイフを持ってまた僕の家に来て襲われてまして……」


 警察に連絡。

 駆けつけた警察に証拠のナイフは押収され

 兄は警察のお世話になった。


 警察から僕も事情を聞かれたり。

【防刃服】コレクションを見つけられた。

 妙に感心されたり、同情されてしまった。


 犯罪でトラウマを負った被害者の【防刃服】コレクション。

 警察に痛ましい物に見えたのかも知れない

 

 僕が武器に使った杖には呆れられた。

 実際には鉄よりも硬い【将軍の杖】なのに、見た目はただの木の杖だから。


「ナイフ相手の武器を用意するなら金属バットとか用意しないと。そもそも戦うより逃げないと……」

 

 とか警察に言われました。

 バットよりも遥かに強い杖なのにね。

 刃物を持った兄よりも

 僕のほうが遥かに強いのにね。


 兄が刃物を持ち出していた事。

 過去に僕が兄から刺されていた事で、正統防衛がアッサリ認められた。


 僕は無罪。兄は、お縄。

 僕の一人暮らしを容認してた両親は兄に激怒。

 

 相手が刃物を持ってると比較的簡単に正統防衛は認められるそうだ。

 僕はすぐ開放された。



 兄は……倒した。

 もう、コチラで思い残すことは無い。

 やるべき事はやった。

 それから僕は毎日夢を見る。

 そのたびに思う。

 

 もう一度、向こうへ行かなければ

 僕は【防刃服】と【将軍の杖】を持ち出していた。

 もう一度向こうへ


 向こうには僕の会いたい運命がいる。

 僕を待っているのだから。


 コッチに戻ってきてから実感した。

 向こうにいた時には気にしなかったが、向こうにはカリスマ的な何かが沢山あった。

 アレはコッチは無い要素。


 何というか、会いたい。


 刃物は今でも怖い。

 怖いが……

 あれ程刃物を怖がっていた僕は、安全なコチラの世界に物足りなさを感じてしまう。


 無性に……スリルが恋しい。

 スリルを感じた時にでるアドレナリンが欲しい……


 ゴブリンと戦ったあの日が恋しい

 ゴブリンと戦いたい。


 僕は婚約者に会いたいのかゴブリンに会いたいのか、もうわからない。

 僕はゴブリン中毒になっていた。

 ゴブリンズハイ

 ゴブラーって奴か?


 婚約者よりもゴブリンに会いたいのかも知れない。

 こんな事が婚約者にバレたら一大事なので、この事は胸の奥にしまっておく事にする


 僕はカリスマ溢れる婚約者に再会できたら、嬉しさで感動の涙を流すかも知れない。

 が、

 ゴブリン将軍に再会できたら、嬉しさでヨダレを流すだろう。


 ゴブリン将軍との戦いを思い出しただけで、梅干しを想像するよりも、唾液が出るのだから


 ジュルリ


 僕のなかで婚約者に会いたい胸の高鳴りと、ゴブリン将軍との戦闘時の緊張感が区別できなくなり、

 まるで吊橋効果の様に感情が変化する

 そして思い出した。


 婚約者の顔が思い出せない事を

 ……ボクノ婚約者、小さく可愛いかったと思うけど、どんな顔をしてたっけ?


「ゴブリン将軍の顔はハッキリと思い出せるのに……」


 時間が立つに連れて記憶が薄れる。

 まぁ、再会できたら思い出すだろと、楽観的に軽く考えた。

 あの日の出来事は全てが輝いて……



 本当にさ

 いま僕は君の事が大好きなんだ

 本当だ

 ゴブリン将軍に誓っても良い


 そのうち僕の頭の中では

 僕の婚約者の顔はドレスを着たゴブリンの顔に置き換わっていたが、コレが吊橋効果のおそろしさと言う物だろか?

 






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