ラスト
ある日、僕は限界を迎えた。
もう……耐えきれない。
愛しくて愛しくて愛しい存在
それが地球にはいない。
僕にとって刃物以外の物は恐怖の対象にならない。
はず、だったのに……
僕は未だに恐怖の対象である刃物。
よく切れそうな刃物を見つめてる。
嫌で嫌で仕方が無い。
が、再び僕が愛しい存在に合う為には、刃物を握るしか無い。
思い立って準備をはじめる。
僕はゴブリン将軍から譲られた杖を片手に……パーカータイプの本格的な【防刃服】と薄手の【防刃服】を2重に着込む。
イロイロ詰めたリュックを担ぐ。
僕は、もう……我慢できない。
再び次元を切り裂いて会いに行こう。
手に持った刃物を振るう。
僕が刃物で空を切ると、次元が切れる。
切れた次元はしばらくするとふさがる。
前回は切った次元の穴に逃げ込んだらアチラの世界経行けた。
なら今回も……
僕が切り裂いた次元に飛び込む
すると……
目の前には僕が会いたくて会いたくて会いたくて仕方の無かった顔が……
しかも二人も。
引き寄せられたのだろうか?
偶然だろうか?
いや、偶然のはずが無い。
僕の目の前には、キレイに成長した女性
少女だった頃の面影を残した僕の婚約者らしき人影が見える。
おかしい?
あれからまだ数カ月しかたっていない。
なのに僕の婚約者は確実に数年は成長している。
もしかして……
時間の…流れが地球とここでは違うのか?
だとしたら危ない所だった。
もう少しグズグズしていたら、僕はお婆さんになった婚約者と再会していたかもしれない。
成長した僕の婚約者。
それと……
今にも僕の婚約者に杖を振り下ろそうとしている【ゴブリン将軍】がいた。
僕の婚約者はゴブリン将軍に今にも殺されそうな修羅場。
タイミングが良すぎる。
それとも……
こんなタイミングだから僕が次元を超える事が出来たのかもしれない?
前回も僕の婚約者が絶体絶命のタイミングに僕は次元を超えた。
僕は反射的に婚約者とゴブリン将軍。
二人の間に割り込む。
「会いたかったぜ。」
僕は心の底から語りかける。
心が踊る。
暖かい何かが心と脳に滲み出てくる。
そんな変な感覚。
まるでココにいて良いんだ。
ここが自分の居場所だとでも言わんばかりの感覚。
僕はアチラの世界では兄とイロイロあってから、常に心を閉ざしていた。
だからマトモな人間関係も構築出来なかった。それがどうだ!
コッチに来てわずか数秒。
僕はもう心を開いている。
味方にも敵にもだ!
帰ってきた。
黄金の様な時間、黄金時間に僕は帰ってきた。
「何度も何度も何度も何度も夢に見た。あの時の衝撃を忘れられなかった。ようやく、また会えた」
「また会えたなゴブリンジェネラル。おまえに再び会うために僕はまたここに来た」
「え??? ちょっと待って……」
と女性の声。
「寝ても冷めてもゴブリンジェネラルとの死闘が忘れられず、何をしても手につかず。」
「待ってください。待って。貴方は婚約者に会いに来たのでは???」
またも女性の声が水をさす。
「僕はゴブリンジェネラルと戦う為に生まれてきたのかも知れない」
「信じられない。ゴブリンジェネラル≫婚約者王女だなんて……これじゃNTRじゃないですか?」
「NTR???」
「ゴブリンジェネラルに王族が婚約者をネトラレるなんて……脳が……脳が破壊されてしまう」
『マテ人間ドモ。話ガ見エヌ。ナゼゴブリンジェネラルの我ガ人間ナドに求婚サレネバナラヌ? 貴様ラ狂人カ?」
「違う」
『貴様ラノ会話ヲ聞クダケデ、コッチの脳ガ破壊サレテシマウワ」
とゴブリンジェネラル。
【防刃服】があれば傷つかなくて良い。
僕は【防刃服】を愛していた。
今は……傷を嫌わない。
傷を負うかもしれない。
そのスリルがたまらない
安全でスリルの無い戦い?
つまらない。
危険でスリルの興奮は何よりも良い。
かつて傷つくことを恐れていた。
そんな僕はもういない。
僕は知った。
傷つくことを恐れる生き方は死んでいる
生きてはいない
楽しく無い。
傷つくことを楽しめる
スリルを楽しめる生き方を知った以上……
もう戻れない。
傷つくことを恐れない生き方を覚える
それは……
まるでエッチを覚えた猿のような者
もう戻れない。
【防刃服】着て、桃缶持ってゴブリン相手に無双した思い出が忘れられなかった
だから僕は戻って来てしまった。
例えそれが間違った選択だとしても
後悔はしない。
自分で選んだ選択だから
例え傷を負ったとしても、後悔しない。
楽しむ。
危険を嫌う事
スリルを楽しむ事
その2つは実は同じ事だ。
危険を嫌う者はどんどん弱くなる。
スリルを楽しめる者はどんどん強くなる。
どっちを選ぶかは個人の自由。
だけど
どっちが良いかは一目瞭然。
昔からよく言うだろう?
【傷は男の勲章だ】と
……
僕は間違いなく強くなった。
ゴブリンと戦ったおかげだ。
目の前のゴブリンジェネラルと戦う事で、更に僕は強くなるだろう。
確信出来る。
だから……
【防刃服】着てゴブリン相手に無双した思い出が忘れられなかった
さぁ、行くぞ
僕とゴブリンの戦いは、これからだ!
僕は会いたくて会いたくて仕方なかった愛しのゴブリンジェネラルに再開出来た。




