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全力!!! トライアングル  作者: 谷川ポンヌ
長月 -<1> の章
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17/51

第16話 ♪藤井香織 新人の嗜みを習う


『何、勝手な事してくれちゃってんの?』


え? 声の主を確認するとミドレンジ太田が立っていた。

検品作業も順調に進んでいた最中である。いつの間にかお昼から戻っていたらしい。

慌てて振り返ったツルちゃんが固まってしまった。


『鶴田。 お前、いつから他部門の人間を使えるほど、偉くなっちゃったのかな?』


『あ、あの。わたし……』


なんだ!!……新人いじめはやめろ!!

私の中の、正義の炎がメラメラ燃えた。


「ツルちゃんは悪くありません! 私が頼んで手伝わせてもらったんです!」


『はぁ?! 新入りは黙ってろ!!』


しまった!! 私も新人だった!! くそぉ、一番先輩なのにぃぃ!!

くうぅぅぅ!! このギャップ、やりにくい!!


『まぁ、しょうがないか。仕事が遅い鶴田さんだから、お手伝いが欲しかったって事だよな』


のおぉぉぉぉぉ!! ぜったいアンタの方が、仕事が遅いだろぉぉぉぉ!!!!


頭にキタ反動で、ツルちゃんとミドレンジの間に割って入ってしまった。


「怒るなら私を怒ってください。鶴田さんは自分の仕事をしていただけです」


頭にキタわりには冷静に伝える事ができた。おかげでミドレンジが一歩後ずさる。


『な、なんだ。……つうか、藤井。顔、変わってねーじゃんか!』


あ、忘れてた。……っていうか、これ以上は無理なんです!


「出来ることはしました。これ以上は、元が美人じゃないので無理です」


口を尖らすミドレンジ。可愛くもなんともないぞ!


『まつげ!』


……ハイ?


『ツケまつげしてこいよ! そしたら許してやる』


……ツケまつげぇ? まったくもって意味がわかんない。だいたい許しって何ですか?


『見ろ! 鶴田だってちゃんとツケまつげしてんじゃん! 4階の決まりなんだよ』


マジっすか!!!


見ると、たしかにツルちゃんの顔は、高校生を卒業したばかりの初々しさで、

お目めパッチリメイクのツケまつげビッシリタイプだ。


ってみんなコウなの?!!


そんな事、たらし天狗は一言も言ってなかったぞ! しかも小森主任は普通のマスカラだけだったような気がする。


確認の為にツルちゃんの様子を伺うが、固まったまんまだ。


『新人の(たしな)みなんだから。ちゃんとしてくんなきゃ困るし』


いや、そんな事急に言われても困るし。


「つ、ツケまつげなんて持ってません……」


『んなもん、コンビニで買えるっしょ。近くにあるから行って来ちゃえよ』


マ――ジ――で――ぇぇぇ!!!

本気で言ってます? 本気でツケまつげを買いに行かせます?


『ほら!!』


マジか!! 思わず舌打ちしそうになったが、グッと我慢した。


「鶴田さん、迷惑かけてごめんなさい」


とりあえず、とばっちりを受けたツルちゃんに頭を下げる。

折角、同士の絆を結んだのに(一方通行ですが)これでツルちゃんに嫌われるような事があったら、絶対ミドレンジを血祭りにしてやる。


『あ、いえ、わたしは……』


『早くしろって!!』


ムカつくほどミドレンジが急かしてくる。セリフを遮られたツルちゃんが再び固まってしまった。……仕方ない。これ以上ここに留まると、ツルちゃんが石になってしまう恐れがある。


「わかりました!! 行ってきます!!」


ドスドスとこれ見よがしな足音を立てて、バックヤードを後にしてやった。






ぼーぜんとしてしまっている。

コンビニの商品棚の前で3分ほど経過しただろうか……。


「ツケまつげが無い」


化粧水やマニキュア、ファンデーションなどが陳列されているこの棚以外で、果たしてツケまつげが置いてある可能性がいかほどあるだろうか……。


ほぼ無いとわかっていてもウロウロ店内を回ってしまう。


お! デザートの新作プリンが出てるぞ!


自分でもびっくりした。

気がつくとプリンを持ってレジに並んでいたのである。

いかん、いかん! プリンを買いに来たわけじゃないだろう!


慌てて列から外れて、プリンを棚に戻す。

何も買わずに怪しい行動だけしてコンビニを後にした。


……マジどうしよう。


100円SHOPなら必ず置いてあるが、近くに店舗が無い。

そういえば、駅の近くにたしかドラッグストアがあったはず。そこなら置いてあるだろう。

駅まで少し時間は掛かるが仕方が無い。手ぶらで帰ったらミドレンジに怒られるのは目に見えている。


……あぁ、マツ●ヨのポイントカード家に置いてきちゃった。


ツイてない時はとことんである。

肩を落として、駅に足を向ける。……が、突然頭の中に電気が走った。


あれ? ドラッグストアって……。


「なんだ! 近くにあるじゃん!」


気分は一気に盛り上がってくる。

鼻歌まじりにスキップして、今来た道を戻り始めた。





読んで下さってありがとうございます。

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